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無職のパパが異世界転移してお家に帰るまで【第2話】

NFTart『Daddy-like kind』シリーズ
https://opensea.io/collection/daddy-like-kind-001

前のお話
第1話『捨てられた先は異世界だった』

チートで無双で瞬殺で

「どいたどいたー!」

 パッパカパッパカ馬の足音っぽいものと、車輪が回るような雑音が聴こえてきて、とか考える間もなく吹っ飛ばされた。

「ぐはぁ!」

 俺はねられたんじゃないか?

 いや、撮影じゃないっぽいことは分かったけど、そんなに痛くもなかった。

 ふかふかした何かの上に落ちたようで、吹っ飛ばされた拍子に閉じた目をそっと開いた。

 仰向けでひっくり返っていた。
 霞む目を開くと、上から何かが覗き込むようにして見ている。

「猫!? でかっ」

 灰色のでっかい猫っぽい顔だった。

「尻尾踏んどるんじゃが」

 何かちょっとダミ声で猫っぽいのが喋った。

「ん?」
「ん? じゃないわ。早ようどけ。重いんじゃ」
「ぎゃー! 猫が喋った!」

 俺は飛び起きた。 何か身が軽い気もした。

「うるさいのぅ……。わしゃ猫じゃなくてワシじゃ」「ワシ?」

 灰色のでっかい猫が喋ってる……。猫が喋ってる! 何言ってるか意味わからんけど、これファンタジーじゃね?!

 異世界じゃね?!

 何か興奮が収まらない!

「まぁいいや! ワシが喋ってるってことは、もう俺チート確定ってことかっ!」
 よくある転生ものや異世界転移なんかじゃ、転生や転移したあと、主人公は超絶チートになっていて、現世での記憶や知識経験を使って勝ち組人生を謳歌するのがお決まりなはず!

 そんな妄想を膨らませながら、気付いたら俺は走っていた。

 思いのほか周りの風景が早く移動している気がした。
 めちゃくちゃ足も早くなってる気がした。

 舗装されていない土の道をいくらか走ったところで、いつの間にか建物は減り、代わりに木々が立ち並ぶ林の入り口っぽい場所に辿りついた。

 木々の隙間を覆う草むらが揺れ、何か出てきた。

 プニプニした、定番のモンスター! スライム!

 黄緑か。
 ドラ○エだとスライムナ○トが跨ってるやつか。
 水色だったらよかったのになぁ。

「よし! うでだめ……ぐぼぅ!!」

 全部言い切る前に目の前が真っ白になった。
 星が見えた気がする。 あっさり意識も無くなった。

次のお話
第3話 『チートは夢想で瞬殺で』

目次

誰かの心にほんの少しでも風を送れるものが発信出来るよう自己研鑽していきます。 当面はきっと生活費の一部となりますが、いつか芽が出て膨らんで、きっと花を咲かせます。