これ聴いてました④ Phil Collins/Something Happened On The Way To Heaven(1989年)

Phil Collinsは、日本において80年代の洋楽シーンを振り返る際、功績の割にあまり再評価されないミュージシャンの筆頭格であるように思います。全盛期においてゲート・リバーブ等、今となっては時代性の強いサウンドを積極的に使っていたこと、本人が良くも悪くもメディア受けの良いタレントとしてのキャラで広く周知されていたこと、そして所属バンドGenesisの路線変更後のボーカリストであったことが、現在に至るまで本格派な音楽ファンから軽視される結果に繋がっているのでしょう。

しかし、海外、例えばイギリスでは、全盛期のアルバム『No Jacket Required』が、2010年に行われた、ブリットアワードによる過去30年の国内アルバムの人気投票で、あのOasisの『What's The Story Morning Glory?』と並んでノミネートされる程には根強い人気がある模様(参考:https://www.nme.com/news/music/brit-awards-2009-10-1303518)。
本人もここ数年は長い隠居生活から復帰し、ソロやGenesisでのライブツアー等、精力的な活動を再開しているようです(もっとも、Genesisの方は新型コロナの影響で未だにツアーは始まっていないのですが)。

そんな彼の4枚目のソロアルバム『…But Seriously』は、アメリカにおける音楽の潮流が徐々に移り変わる直前、1980年代と90年代の変わり目(1989年)に発表された作品ですが、今聴いても、決して古びていない、普遍的な魅力を持った名盤であると思います。
世間的には、これの収録曲の中だと、ビルボード全米1位のヒットシングル「Another Day In Paradise」がダントツに知られていると思いますが、今回は敢えて一番好きなこの曲を紹介。
力強いドラムから始まり、追いかけるように鳴り響く、The Phenix Horns(Earth, Wind & Fireのメインホーンセクション)による賑やかなブラスサウンド。情感たっぷりに歌い上げるPhilの朗々とした歌声には、何度聴いても不思議と胸を打たれるような感覚を覚えます。
曲調も歌詞も明るいのに、何故か妙に切なくなるんですよね……。

最近はもっぱらオルタナ系の音楽ばかり聴いているのですが、たまに聴くとやっぱり彼の音楽の良さを再確認させられます。
もっとこの魅力が広く伝わって欲しいなあと思うこの頃。

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