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フランスのビジネススクールで文化産業を学ぶ傍ら、展覧会を巡り記録しています。近現代の美…

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フランスのビジネススクールで文化産業を学ぶ傍ら、展覧会を巡り記録しています。近現代の美術と建築が好きです。

最近の記事

ニコラ・ド・スタール展 / パリ市立近代美術館@パリ(フランス)

変わり映えのない生活に退屈し、ファム・ファタルに導かれ南仏へ逃避行するも裏切られ、自分で巻き付けた爆弾によって美しいアンティーブの海の塵となる… 近現代の芸術へのオマージュで溢れた、ジャン=リュック・ゴダールの名作「気狂いピエロ」。主人公フェルディナンのモデルはニコラ・ド・スタールというフランス20世紀絵画の巨匠なのだという。そして彼の回顧展が大好きなパリ市立近代美術館でちょうど行われるらしい。そう聞けば足を運ばないわけにはいかない。 芸術、愛、成功、不安に象られた人生フェ

    • ロスコ展 / フォンダシオン・ルイ・ヴィトン@パリ(フランス)

      パリの端に現れる、純ロスコ空間この絵の作者を聞かれて、ロスコ、と答えられる人は少ないのではないだろうか。ロスコはずっとロスコであったわけではなかったのだ。絵のスタイルも、はたまたその名前も。 今回フォンダシオン・ルイ・ヴィトンで開催されたロスコ展は、彼の生い立ちから、独特なスタイルと名声を確立するまでを、ほぼ彼の作品のみを展示することで描ききったシンプルながら力強い展覧会であった。いくつか印象的だった作品をピックアップしながら、展覧会を振り返ってみる。 ロスコがロスコにな

      • ゴッホ展 / オルセー美術館@パリ(フランス)

        オーヴェル・シュル・オワーズとゴッホ何はともあれこれを見てほしい。 ゴッホの晩年の作品、オーヴェル・シュル・オワーズの教会。この作品を見て私が感動したのには訳がある。 3ヶ月前、パリ郊外のオーヴェルにあるゴッホが最期を迎えた部屋と、この教会、その裏にある彼のお墓を訪問しており、今回この絵に出会ったことで、彼の人生を遡り辿った気分になったからである。 私がオーヴェルを訪れたのは9月、晴れた日で、彼が愛した南仏のような明るい日差しが降り注ぎ、周囲には麦(?)畑が広がっていた

        • ヴェネツィアビエンナーレ国際建築展2023@ヴェネツィア(イタリア)

          水の街、ヴェネツィアとビエンナーレ誰もが知るロマンチックな水の街、ヴェネツィア。この街の素晴らしさはその美しい景観だけではない。街全体で世界的な芸術の祭典、ヴェネツィアビエンナーレが毎年開催されているのだ。 1年ごとに国際美術展と国際建築展が開催され、これに加えて映画、音楽、舞踊、演劇等の祭典も開催される。2023年に開催された国際建築展に足を運んだので、感動の冷めぬうちに感想を書き留めておく。 私が訪問した際にはすでに国際映画祭、国際舞踊祭、国際演劇祭は終了しており、国際

        ニコラ・ド・スタール展 / パリ市立近代美術館@パリ(フランス)

        • ロスコ展 / フォンダシオン・ルイ・ヴィトン@パリ(フランス)

        • ゴッホ展 / オルセー美術館@パリ(フランス)

        • ヴェネツィアビエンナーレ国際建築展2023@ヴェネツィア(イタリア)

          ポンピドゥー・センター・メッス@メッス(フランス)

          フランスが誇る近現代美術館、ポンピドゥー・センターが別館を作ったと聞いたらワクワクしないだろうか。しかも、その地はロレーヌ地方の水に溢れる美しい街、メッス。さらに、建築設計は坂茂(とJean de Gastines)と聞いたら、美術と建築を愛する日本人として足を運ばないわけには行かないというものである。 美しくカーブする木組み、これぞ坂茂最新のアート動向が見て取れる展覧会群まず驚くべきは、その展覧会の数。同時に5、6の異なるテーマの小さい規模の展覧会が開催されている。大きい

          ポンピドゥー・センター・メッス@メッス(フランス)

          ヴィトラキャンパス@ヴァイル・アム・ライン(ドイツ)

          ヨーロッパの真ん中に位置する、現代建築の聖地ザハ・ハディット、SANAA、フランク・ゲリー、安藤忠雄、ヘルツォーク&ド・ムーロン、ジャン・プルーヴェ、ニコラス・グリムショウ、ジャスパー・モリソン…  建築好きであれば必ず名前を知る著名な建築家たちが設計した建物が並ぶ、広大な敷地。いわば世界現代たてもの園のようなこの場所が、家具メーカー、ヴィトラの工場敷地というから驚きだ。しかも、所在地はフランス、ドイツ、スイスの国境がちょうど交わる点のドイツ領域。まさにヨーロッパの真ん中であ

          ヴィトラキャンパス@ヴァイル・アム・ライン(ドイツ)

          近現代美術館@ストラスブール(フランス)

          ストラスブールというアイデンティティストラスブールは普仏戦争から第二次世界大戦にかけて、フランスとドイツが取り合った地域。その歴史的経緯から、アルザス地方の独特の意識と特徴を強く保ちつつ、欧州の統合の象徴としてEU議会や欧州人権裁判所等が置かれ、自ら「欧州の首都」を自認している(※ブリュッセルもそう自認しているし、むしろそちらの方が実態に近いように思われる。)。 フランスの大都市では、必ずと言っていいほど見つけることができる近現代美術館。ストラスブールにあるとなれば、街のコ

          近現代美術館@ストラスブール(フランス)

          東京都現代美術館 / MOTコレクション「ただいま/はじめまして」@東京(日本)

          東京都現代美術館は、建築、地域との調和、コレクション、展示テーマ等どれをとっても理想的な公立美術館だと思う。今回は、リニューアル当時2019年夏に足を運んだ展覧会の備忘録。 本展示は、各作家の解説パネルと共に複数の作品展示が連続するスタイルで、それぞれの作品に込められた意図やアーティストの一貫した軸を一つずつ理解しながら進むことができた。 絵画、木彫り彫刻、モビール、、、アーティストによって作品の形態も伝えたいメッセージもそれぞれで、ここまで多様な概念が多様な手法で表現さ

          東京都現代美術館 / MOTコレクション「ただいま/はじめまして」@東京(日本)

          十和田市現代美術館@青森(日本)

          2022年冬に訪問した際の備忘録。 街に溶け込む地域のアートセンター穏やかで広々とした街に出現するいくつものホワイトキューブ。設計は西沢立衛。街と違和感なく調和しつつ、開放感を保ち、アートに没入できる空間設計は金沢21世紀美術館に通ずるものがある。 十和田市が中心となって現代美術館、アート作品、アートプログラムの3つの要素からなるまちづくりを行うプロジェクト「Arts Towada」の一環として作られた十和田市現代美術館。展覧会以外にも、地域のお祭りや地域団体の発表会、講演

          十和田市現代美術館@青森(日本)

          COMICO MUSEUM@大分(日本)

          日本芸術界の巨匠たちのコラボレーションの結晶は、ミニマムで洗練された空間だった。建築設計は隈研吾、サインデザインは原研哉、展示は杉本博司、村上隆、奈良美智。襟を正して向かいたくなる顔ぶれだ。 黒い焼杉による建物は、足を踏み入れた瞬間に気持ちを落ち着かせてくれ、アートと向き合う準備が整う。 1階:村上隆、杉本博司の対照性が際立つ静謐な空間1階の展示室はガラスで2つに区切られ、間には水が流れており、黒い壁に最小限のライティングがなされている。入ってすぐの展示室には村上隆のアー

          COMICO MUSEUM@大分(日本)

          世田谷美術館 / グランマ・モーゼス展@東京(日本)

          用賀駅から歩いて15分ほど、家族連れがたくさんの公園の中に、周りの自然と馴染んで佇む世田谷美術館。 温かいイメージのこの美術館にぴったりな展覧会、グランマ・モーゼス展に足を運んだ。残念ながら展示の写真撮影ができなかったので、個人的感想だけ書き残す。 Anna Mary Robertson Moses(グランマ・モーゼス。素敵な愛称!)はアメリカの国民的な画家だけれど、日本での知名度は高くない。彼女は農村で主婦の生活を続け、80歳でデビューした。いつからでも好きなことを始めて

          世田谷美術館 / グランマ・モーゼス展@東京(日本)