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対人関係は吹きあげパイプ

昨日家に帰ると娘が妻と息子に
何やら話をしていた。

途中から話に入ってみると
どうやら保育園で流行している
インフルエンザの話のようである。

昨日は同じクラスの〇〇ちゃんが
熱を出して途中で帰った、
〇〇君は頭が痛いと言って途中で帰った。

などの話を江戸時代のかわら版を伝える人のように
私たちに説明する娘。

内容的には他人事ではなく
シリアスな問題なのだが、
私はその娘の様子を見ているのが面白く
笑いを噛み殺しながら聞いていた。

そんな風に娘が今日途中で帰った子の話をしている時、
「〇〇君は帰るとき熱が9℃もあったんやで」
と言った。

39℃と言えばやはり高熱である。
インフルには熱が出るタイプとそうでないタイプがあるが
今回保育園で流行しているのは高熱が出るタイプなのか。

そんなことを思いながら聞いていると、
息子が「9℃なんて温度やったら死んでしまうやん」と
ツッコミを入れた。

私は思わず
「なんでやねん。年始に〇〇(息子の名前)もコロナで39℃出したやん」
と息子に言ったのだが、
息子的には39℃の熱のことを言いたかったわけではなく、
娘が”39℃”と言わずに”9℃”と言ったことが
気になっていたらしい。

もちろん息子とて意味が分からなかったわけではない。
頭の中でちゃんと39℃と変換しながら聞きつつ、
娘が9℃と略していったことにツッコミを入れるつもりで
この発言をしたらしいのだが、
何だか私にはかわら版のアナウンスにヤジを入れるような
野暮なことのように感じられた。

なので、娘をフォローする意味で
「〇〇(娘の名前)は39℃っていう意味で言ったんやな?」と
聞くと、キョトンとした顔になった。

不思議に思い聞いてみると、どうやら「9℃」という言い方は
先生が言っていた言い方をそのままマネしただけらしく、
娘本人はそれが39℃を指しているとは認識していなかったらしい。

娘は過去に何度も熱を測り、
連絡帳にその数字を書いてきたので
平熱が36℃前後であることは認識しているだろうが、
その振れ幅がどの程度かまでは
理解していなかったようである。

結局その話はそこで終わり、
娘のかわら版トークは終了したのだが、
このような話って実は沢山あるのではないだろうか。

相手にとって当たり前だろうと思うからこそ
省略したり、俗語の様に話すのだけれど
肝心の相手にはそれが当たり前ではないというケース。

そういえば、先日繊維関係でも違う業者の方と
染色関連の話をしていた際に
私は相手が知っているだろうと思って話していた単語を
面談終了間際になって「あれってどういう意味なのですか?」と
聞き返されたことがある。

心の中で「もっとはよ聞かんかい」と思いつつも
私は自分の当たり前を相手に無意識のうちに
押し付けていたことにショックを受けた。

だが、その反面同じようなケースで
自分が何も知らないだろうという前提で話を
進められて何だか面倒だなと思ったこともある。

要は相手がどこまで何を理解しているのかを知り
そこにちょうどいい塩梅のワードチョイスをすることが
実は肝心なのである。

こうして言葉にすると簡単そうだが、
実際にそれをしようとするならば
かなり難しいことであろう。

人とのコミュニケーションは難しいと
思わされることがしばしばあるが、
それはまさに適度な距離感を保つことへの
難しさなのである。

子供の頃に息でボールを浮かせるおもちゃで
遊んだ記憶があるが、


まさに対人関係とはこのボールの高さを
一定に保つようなものなのかもしれない。

人は社会を形成して生きることで
爆発的な力を得たが、
その代償としてこのような微妙なコントロールを
求められるようになったのだろう。

まさか娘が何気なく発した言葉から
ここまで考えが及ぶとは自分でも思わなかったが
何だかそう考えてみると
一日仕事で色んな人と話しコミュニケーションを
とってきた自分がとても頑張ってきた気がする。

たまには自分を褒めてやるのも悪くない。

今日は金曜日、いわゆるハナキンである。

1週間人との適度な距離感を保ちつつ色んなことを
頑張ってきた自分や家族に対して
労いの品を何か買って帰ってやろうと思う。

ちなみに子供の頃、
大工だった父は着工している家の
棟上げになると泥酔して帰ってきていた。

そんな時は泥酔しているせいか、心が大きくなって
いつも帰り道にあるホットドッグ屋で
私達にホットドッグを買って帰ってくれた。

だが、いかんせん夜中なのと、
そのホットドッグの中に入っていたカレー味の
キャベツがたまらなく嫌いで
私はいつもそれを食べるのが憂鬱であった。

手土産選びも相手を知り、
適度な距離感が必要なのかもしれない。

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