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サステナブルなビジネス

昨日仕事でとある業者さんが来社された。

北陸の繊維関係を事業にされており、
数年前に開発した商品に使う原材料を
納入頂いている会社である。

コロナ禍で時折オンラインでは打ち合わせをしていたものの
直にお会いするのは4年ぶりであった。

そんな久々の面談となったので
色々な話をしている中で、
先日の北陸地震の話題に及んだ。

その会社は幸い大きな被害はなかったのだが
ビジネスに少し影響が出ていると仰っていた。

何が影響しているかというと
高齢者の内職さんが一気に減ったというのである。

”高齢者の内職さん”というとイマイチピンと
来ない方も多いかもしれないが、
働き口の少ない地方都市に行くと
その地方にある大きな会社が内職仕事を
近隣の高齢者の方に委託する形式がしばしば取られる。

高齢者の方からすれば在宅で仕事ができて
小遣いも得られるし、
会社からすれば安い工賃で加工してもらえるので
このような形式がよく取られるのである。

この方式でよくあげられる例だと
釣り針などがまさにそうである。

あまり釣りをしない方からすれば
イメージしにくいかもしれないが、
釣り針には当然ながら釣り糸を結ぶ必要があり
この針に糸を結ぶ作業は内職の方がしているケースが
非常に多いと言われている。

本当に釣りが好きな人からすれば
自分で針に糸を結ぶことは厭わないだろうが、
家族で休日に釣りをしようという人にとって
針に糸を結ぶというのはかなりハードルが高い。

そこで、最初から針に糸が付いた状態で
釣り針は売られることが多く、
釣り針と一言で言っても多種多様なものがあるため
この仕事はなかなか機械化が難しいので
このようなビジネスの方式が採用されているのである。

これと同じように繊維関係の仕事でも
少量多品種の生産をしようとすれば
機械化が難しいような工程が多々でてくるので
そのような仕事は内職さんに委託をしているらしい。

だが、先日の北陸地震の影響で
多くの高齢者の方がもう内職はやめたいと
言っているそうである。

いつ自分に危険が降りかかってくるかわからない中で
安心して仕事をする気になれないのもあるだろうが、
多くの高齢者の方が辞め時を探しており、
地震がちょうどそのトリガーとなってしまったのだ。

そうなるとその仕事を次はどうするのかを
考えなくてはならないが、
自社内に移すのが一番シンプルそうに思える。

だが、実際その作業を自社内に移して
従業員を使ってさせると
全くコストが合わないというのである。

それは一体なぜか。

会社の設備と従業員を使って作業をすると
嫌でも固定費がかかってしまうため
原価が高くなってしまうからである。

内職の高齢者の方にももちろん加工費は
支払っていたが、
その方々はご自宅で作業をされるので
加工場所に対するコストは必要ないし、
内職で出来高に対して給与を支払うので
その方々への福利厚生費や保険費用などを
支払う必要もない。

そして、高齢者の方は基本的に年金で
生活をされているため
内職で得られる収益は小遣い程度であっても
問題なく、
かなり安い加工費でも特に不満が出ることなく
快く受けてくださっていたそうである。

ところが、それが自社の従業員となると
そうはいかない。

決まった賃金を支払う必要があるため
単位時間当たりのコストは決まってしまうし、
その費用の中には福利厚生費なども
否応なく含まれてしまうのである。

しかし、それで実現できなくなってしまっては
顧客に商品を提供できなくなってしまうので
その会社では何とか原価を下げるように
検討を進めていると仰っていた。

私はこの話を聞いて「なるほど」と思うとともに、
実はちょっとしたことで継続が難しくなる
ビジネスは世の中に沢山あるのではないかと感じた。

私が過去に開発に携わったとある商品があるが、
求められた性能を出すために少し特殊な加工を
する必要があった。

そこで、色々な業者にコンタクトし実現できないかを
検討したのだが、
一軒、とても安い加工費で請け負ってくれる業者が
見つかったのである。

その業者はメインの事業を他に持っており、
もともと廃業した別の業者からその事業を
譲渡される形で始めたので、
その事業に対して大きな利益を求めておらず
結果として安い加工費で受けることが
可能だということが話の中で分かったが、
私達は喜んでその業者に加工を委託することにした。

当然安い業者で加工ができれば
コストは下がるし、市場での競争力も高まる。

しかしである。

いざその業者がこの事業を廃業するとなった場合、
私達には他の選択肢が全くなくなってしまうのである。

そうなるとそのビジネス自体が成り立たなくなってしまう。

それは避けなければならないので
一旦この業者で加工を委託しながら
同時並行で、他の解決方法を模索することになり
結果、新しい加工方法を内製化することで
ビジネスの継続性を得ることができた。

この事例は偶然継続性の課題点に気づき
事前に対処ができた例であるが、
実際にはビジネスの継続性があいまいなまま
進んでしまっているモノは少なくないであろう。

一時フリーランスとして仕事を受ける流れや
クラウドワークスで仕事を受けて
副業とする流れが盛んであったが、
それらのフィールドで展開されているビジネスは
市場の変化、環境の変化により
無くなってしまう可能性が高い仕事が多かった。

なので、一時的に副業に手を出したものの
ビジネスとしての継続性がないために
副業をやめたという方を私は身近に沢山みてきた。

ビジネスを継続させていくということは
それだけ難しいことなのである。

私達はついついビジネスの波に乗ることに
フォーカスしがちであるが、
それと同じぐらい波に乗っている時に
次に乗る波を探しておくことが大切なのだ。

サステナブル(持続可能性)という言葉は
何も環境的な意味合いだけではない。

ビジネスとしても持続可能かどうかという観点は
いつも私達は持っておかなくてはならない。

そんなことを改めて感じさせられる面談の機会であった。

ちなみに北陸の方と話しをしていると
時折アクセントに違和感があって
それが個人的にとても好きである。

こうしてテキストにしてしまうと
私が話す関西訛りの言葉も
アクセントがわからなくなるが、
いつも拝読しているnoteのお仲間が
どのようなアクセントを頭に置きながら
テキストを書かれているのか
とても気にある今日この頃である。

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