見出し画像

飛行機と読書

昨日から1泊二日で出張に来ている。

来ているのは九州宮崎。

関西に住む私からすれば福岡や佐賀なら
新幹線で移動してもいい距離であるが
さすがに宮崎となると飛行機以外の
選択肢はない。

大阪伊丹空港から飛行機に乗って
約1時間のフライトである。

私は海外に飛行機で出張に行くことはあれど
国内に飛行機で出張する機会はこれまで
あまりなかったので、
新鮮な気持ちで空港に向かった。

やること自体は国際線でも国内線でも
劇的な違いはないが、
国際線のようにフライトの2時間前に
空港に着いておく必要もなく、
預け入れの荷物もないので驚くほど
気軽な感じで飛行機に搭乗した。

乗り込んでみると驚いたことに
乗客は満席である。

行先が宮崎という時点で飛行機しか
選択肢がないと思った私と同じように
多くの方が飛行機を選択した結果であろう。

安いチケットを買った影響で
事前のチェックインができなかった私は
3人掛けの真ん中の席であった。

数時間乗らねばならない国際線なら辛いが
今回はたった1時間のフライトなので
何てことはない。

着席して早々に私はカバンから
文庫本を取り出した。

どういうわけか飛行機の中は
妙なぐらい読書に集中できるので
私は今回の出張に合わせて
これぞと思う本を忍ばせていた。

それがこちら。

ようこさんが記事で紹介されていて
とても面白そうだったので
早速購入した1冊。婚活にまつわる短編集。

日頃あまり短編集は自ら好んで読まないのだが
今回は偶然読みたいと思った本が短編集だったので
本書をチョイスすることになった。

この本の筆者である秋吉理香子氏の作品は
分類としてはミステリーが多く、
私がnoteでしばしば紹介している湊かなえ氏と
同じようにイヤミスと言われるカテゴリーに
分類されるらしい。

イヤミスとは読後に嫌な気分が残る
ミステリー作品のことを指す言葉だが、
実をいうと私は秋吉氏、湊氏の作品を読んで
嫌な気分になったことはない。

なので、何を基準にイヤミスというのかは
正直よくわからないのだが、
一般的にいうなら、イヤミスとは
ミステリーながら人間のドロドロした心理や
その背景にある感情などが交錯した作品のことを
指すらしい。

そんな秋吉氏が書かれた本書、「婚活中毒」は
合計4編の短編で構成されているが、
この4編がいずれも系統が少し違っていて
絶妙に面白いのである。

ミステリー作家らしいどんでん返しがあるような
作品もあれば(代理婚活) (婚活マニュアル)、
何事もデータをもとに分析してしまうリケジョの
主人公が婚活に向き合う話(リケジョの婚活)など、
とてもバラエティに富んでいる。

そんな短編集である本書であるが、
どの作品においても
登場する人が相手に好意を持ってほしいと
願い、行動する様子が描かれている。

よく考えてみると婚活ほど相手に自分のことを
理解してもらい、
自分自身をアピールする機会は
ないのではないだろうか。

もちろん就職が進学においても
相手に対して自分をアピールすることはあるが、
そこでアピールするのは自分の人間性というよりも
キャリアや学歴の部分である。

しかし、婚活では収入や肩書などの
キャリア的な部分は見られこそするものの、
主にアピールするのは人間性である。

どの話に出てくる登場人物も
いかに自分たちをよく見せて相手に
好かれるかを考える様子が
とても読んでいて面白いと感じた。

私はあまり人付き合いが得意なタイプではないが、
ビジネスの場だと割り切ると難なくできるので
一見人付き合いが得意そうに見られることが多い。

以前からそんな自分の特性が不思議だったのだが
もしかすると自分をよく見せようとする
感覚が少し弱いのかもしれないと
本書を読みながら感じた。

幸い私は婚活を意識する前に結婚することができたが、
自分がもしも婚活をしていたなら
本書に出てくる登場人物のようにうまく自分を
アピールすることができたかと考えると
答えは否である。

相手がどう思うかはあくまで相手のタスクだが
自分の魅力をアピールすることは自分のタスク。

これから会社の一員としてだけでなく
個人での活動がより大切になる時代だと
言われているが、
そんな時代だからこそ
本書の登場人物のように自分をしっかりと
アピールする方法を考える力が必要なのでは
ないかと思う。

結局目的地の空港に着くまでに4編ともに読み終えたが、
私の頭の中にはなんだか清々しい気持ちが
あふれていた。

冒頭に書いたように筆者の秋吉氏は
イヤミス作家と言われているが、
嫌な気分どころが清々しい気持ちになった。

ちなみに今日の便で岐路に着くが、
岐路に読もうと思ってもう一冊カバンに忍ばせている。

それがこちら👇

分類的にはホラーの短編集であるが、
本屋でパッと流し読みした限りでは
決して嫌な気分になるような内容ではなさそうであった。

岐路の読書を楽しみに今日も一日
頑張れる気がする。

ちなみに昨晩より止まっているホテルの近くには
山の景色が見えるのだが、
その山肌はどこも茶色く見えていた。

一体どうしたのかと思い、
今朝散歩してみてみると、
驚いたことにたわわに花粉をまき散らす
杉の木であった。

それに気づいた途端に私の目がかゆくなったのは
いうまでもない。

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?