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単語は単語帳だけで学んではいけない

先日南アフリカに行った時のこと。

会議の参加者と現地の商品市場を
視察していると、
色々な疑問が出てきたので、
現地の方に直接聞いてみた。

南アフリカは公用語が11あり、
そのうち白人の方の間では英語が
公用語になっている。

過去に色んな国に訪問したことがあるが
実は英語が公用語のいわゆる”英語圏”には
アメリカとシンガポールしか行ったことがなく、
現地の人に直接何かを聞く機会があるのは
私にとってとても新鮮な機会であった。

だが、私の英語は完全なアジア英語であり
日本人英語である。

日ごろ会議で話す社内の人たちは
特に難なく聞き取ってくれるのだが、
会社に関係のない人にとっては
最初聞き取りにくかったようで
「え?もう一度言ってもらえますか?」と
言われてしまった。

そこで私がもう一度言おうとすると
すかさず現地の代表者が私の質問を
相手に伝えてくれた。

彼に感謝を述べつつ、私の質問を理解した相手は
質問の回答をしてくれたので、
その相手に対して私は”Thank you”と述べた。

すると、私に替わって質問してくれた
現地の代表が彼と別れ際に”Cheers.Thank you”
と言ったのである。

Cheersという単語が出てくるとは思っていなかったので
最初私は戸惑ったのだが、どう聞いてもそれは
Cheersと言っていた。

そう、Cheersとは英語で”乾杯”として使われる
言葉である。

海外の方と食事に行くと必ず耳にする単語なので
私の頭の中では「Cheers=乾杯」と登録されていたのだが
どうやら、こちらの人はCheersを
カジュアルな「ありがとう」や「じゃあね」のような感じで
使うらしい。

気になったので部屋に戻ってから
ネットで使い方を調べてみると、
これはイギリス英語やオーストラリア英語で
よく使われる表現らしい。

言われてみれば南アフリカもオーストラリアも
イギリスと同じように右ハンドルの文化圏なので
言語もイギリスの影響が強いのかもしれない。

そんなことを思っていたのだが、
それと同時に私は英単語を覚えることの
難しさを感じていた。

私達は中学生の頃から(今の子供は小学生から)
英語を勉強してきた。

そして、その過程で多くの単語も覚えてきたが
多くの場合、単語の学習は「〇〇=××」のような
覚え方をしてきた。

実際、私の頭の中では今回のCheersのように
単一の意味でしか登録されていない単語が
非常に多い気がする。

それはそれで別に問題ないのだが、
いざ自分の頭の辞書に登録されていない使い方に
出会ったときに、私は多いに戸惑ってしまうのである。

今回のCheersはシンプルな使い方だったので
何となく頭のなかで理解しながら聞けたが、
会話の中でしれっと違う意味で使われる単語が
出てきた時にはやはり戸惑ってしまう。

いい事例が他にパッと頭に思い浮かばなかったが
実際過去に私はこのような事例に何度も
遭遇してきた。

ではこのような事を避けるために
私はどのように学べばいいのであろうか。

それは、単語帳で学ぶだけでなく
文章や会話の中から学ぶことである。

もちろん単語帳で新たな単語を学ぶことは
絶対に英語を習得するためには必要なことであるが、
それだけでは私のように単一的な
意味でしかとらえることができなくなってしまう。

悪い意味で、英語を日本語に置き換えてしか
覚えることができなくなってしまうのだ。

だが、英語の文章や会話の中から
学んだ単語はそうではない。

確かにわからない単語に出会うと、一度辞書で調べるので
日本語には置き換わるが、
文章の中に組み込まれた単語として英語で理解するので
比較的ボヤっとした解釈で覚えることができるのだ。

言われてみれば私達は母国語である
日本語を辞書で調べることはほとんどない。

もちろんこれは母国語だからではあるが、
それだけでなく、単語を定義としてというよりも
概念的なものとして会話や文章のなかから
習得してきたからである。

よくわからない英単語に出会ったときは
英和辞典ではなく、英英辞典を調べろというが
それはまさに単語を日本語の決まった訳ではなく
英語の概念としてとらえるためのものなのだろう。

今回の経験で私はようやくこの英英辞典を調べる
意味が理解できた気がする。

「Cheers=乾杯」では意味が分からなかった
言い方も、「Cheer=感謝や労いを表す表現」のような
概念的な覚え方であれば戸惑うことは少なくなるだろう。

ちなみにこの記事を書きながら
NHKの長寿番組「鶴瓶の家族に乾杯」が
頭にずっと出てきていた。

この番組のタイトルもよく考えてみれば
乾杯と言いながらも、実際に乾杯はしておらず
”ありがとう”的なニュアンスで使われている。

実は日本語の”乾杯”にも同じような用法があったのだ。

中国の文化である相手に敬意を表すために
グラスを飲み干す”乾杯”から来た言葉であるが、
どの言葉においても単一的な意味だけではなく
概念的なボヤっとした意味があるものなのである。

言葉とは実に面白いものである。



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