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メールではダメな理由を140文字で述べよ

昨日オフィスの複合機に印刷した書類を
取りにいったときのこと、
ふとFAXが到着しているのが見えた。

私が働くオフィスには製造の管理をする部門と
原材料などを調達する購買部門があり、
FAXが来た時は90%以上が購買部門宛てなので
私はその書類をとって購買担当者のデスクに置いた。

その書類は発注書に対する納期回答を伝えるもの。

発注書の備考欄にこちらの購買担当から
”次回よりメールで発注書を送信したいので
メールアドレスをお教えください”
という一言が書かれていた。

だが、私が置いた書類にはその問いに対する
答えが書かれていたのだが、
それを見て私は驚いてしまった。

”申し訳ございませんが、弊社では郵送かFAX以外での
ご注文はお受けいたしかねます”

と書かれていたからである。

100歩譲って郵送だけしか受け付けないのならば
複写ではなく原本のみを受け付けるポリシーとして
理解はできなくはない。

だが、私にはFAXは良くてメールがダメな理由が
どうしてもわからなかった。

なぜならメールで発注書を送るときも
PDFファイルで捺印された書類を送付するし、
FAXも原本ではなくその複写が相手の
FAXを通じて吐き出されるだけなので
結果としては両者ともに”複写”であることは
変わらないからである。

もちろんセキュリティ上の問題という
観点もあるかもしれないが、
ファックスは出力されてしまえば
いくらでもそれをコピーすることができるし、
何ならその紙を写真に撮られてしまえば
漏洩してしまう可能性はある。

ちなみにこの記事を書くキッカケになったのも
私が偶然ファックスの紙を置いたからである。
その時点でセキュリティ的な理由など
完全に破綻しているだろう。

だが、ファックスでないとダメな理由など
正直どこにも見当たらないにも関わらず、
相変わらずビジネスの世界ではファックスが
多用されているのが現状なのだ。

3年ほど前に例の感染症で騒いでいたころ、
私の会社では営業事務の社員が多く
リモートワークを取り入れることになった。

営業事務の仕事はお客様からきた発注書を
受注入力することであるが、
その時にファックスをどう扱うかが
一つの議論になった。

お客様から頂く発注書の多くは依然として
殆どがファックス。

在宅勤務でそれを処理しようとすると
誰かがそのファックスをスキャンして
展開するという作業が必要になる。

そこでIT部門に相談してみると、
どうやら技術的にはファックスとして
送信されたデータを自動的にデジタルデータとして
抽出することは可能らしく、
一時そのための検討が行われていた。

だが、顧客によって発注に使うフォーマットは違うし、
いまだに手書きの発注書を出してくる会社もある。

そうなると手書きされた文字をデジタルデータとして
読み取るためにはコンピュータに多くの学習を
させなければならない。

それらの改善にかかるコストが莫大であったため
結局そのプロジェクトはペンディングしてしまい、
業務は一人ないしは二人が出社して
ファックスをPDFに取り込んで展開する作業を
行いながら在宅勤務を行うことになった。

しかし、この作業はよく考えてみるととても奇妙な
流れを取っていることになる。

そもそも手書きのデータの場合はどうしようもないが
パソコンで作成された発注書の場合、
顧客先でデジタルデータとして作成されたものが
一度紙というアナログに変換されて、
ファックスとしてスキャンされた時に再び
デジタルデータに変換され、
そして出力されるときに再びアナログ変換される。

さらに、それを営業事務が処理するために
スキャンされてデジタルデータに変換されて
社内処理が行われる。

データに意志があるとすれば、
「お前ら何回ワシを変換したら気が済むんじゃ」
と怒られてしまいそうなほどである。

本来ならばメールで発注書を送るというのは
このムダな変換を大幅に削減することができる
画期的な仕組みなのだ。

そもそも海外に何かを発注する時には
ファックス送信ができないので、
基本的に全てメールベースで行われていて
何の問題も起こらないことは実証済みである。

にもかかわらず、メールで注文を受け取れない
理由はどこにあるのだろうか。

その背景には既存のやり方を変えたくないという
保守的な思想が潜んでいる気がしてならない。

それぐらいどう考えてもメールでやり取りするほうが
メリットが大きいからである。

我が国でも数年前に政府にデジタル庁なるものが
設立されたが、
いまだにビジネスの世界ではこのような
マインドの変化が起こらないまま放置されている。

日本という国の働く世代の一人として
この状況には危機感を持たざるを得ない。

私たちにできる事はそんな中でも着実に
デジタルで業務を進めて、余計な変換を
可能な限り無くしていくことであろう。

極論の様に見えるかもしれないが、
個人的にはビジネスでは
ファックスの使用禁止ぐらいの
つよい処置をデジタル庁には期待している。

昔、深夜ラジオによくネタはがきをよく書いていたが、
ある時からファックスで送るようになった。
夜中にファックス送信すると
親に「うるさい」と小言を言われたのも
今となってはいい思い出である。
今の時代は深夜ラジオへの投稿は
やはりメールやSNSなのであろう。
親としては静かな夜を過ごせて嬉しいだろうが、
あの何だか夜中に音を出さずに活動する
ハラハラ感が薄れる気がして
寂しい気もするのは私だけだろうか。

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