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ラウドネスノーマライゼーション対策の考え方

皆さん、自作の曲をネットに投稿したり音楽配信サービスに登録する場合、楽曲のラウドネスをどのくらいの値にするか悩むことってありますか?実際SNSなどを見ていると「ラウドネスノーマライゼーションの基準値は分かるけど結局どう対処するのがいいのか?」といった声を見かけることがあるので、気になる人も多いんじゃないかと思います。
そこで今回は僕なりの今現在の考えをまとめてみます。これが絶対の「正解」じゃありませんし、なんならこれを機に新しい知見を得たいとも思っていますが、悩んでいる方の何かの参考になれば嬉しいです。
なお、今回は技術的な対策というよりは、考え方の話が中心になります。

要点

まずいきなりですけど、要点を3つだけ書きます。

  1. その曲にとって最適だと思うサウンドになっていれば、ラウドネス基準値を超えても何ら問題はない。

  2. ラウドネス基準値ぴったりに調整しても音が良くなるわけじゃない。逆に基準値超えたら音が悪くなるわけでもない。(良し悪しはMix/マスタリング次第)

  3. トゥルーピークは0dbを超えないように。(余裕をもって-1dbがベター)

これで納得された方はこれ以上読む必要はないかもしれませんが、記事はもう少し続きます。

基準値を超えるのはアウトか?

まず、各サービス(動画投稿サイトや音楽配信サービス)で基準となるラウドネス値を下回る音源の場合、ほとんどのサービスで何の調整もされずそのまま再生されます。これは特別な意図がない場合、単に他の曲より小さい音で再生されるだけなので、特にメリットはないです。

逆に基準値を超える音源は、ラウドネスノーマライゼーション機能により、自動的に音量が下げて再生されます。では、基準値ぴったりに調整した音源にするのがいいのかというと、そんなことはありません。ごく端的に言ってしまうと、自分がその曲にとって最適と思うサウンドになっていれば、基準値ぴったりだろうが超えようがどっちでも大丈夫です。
プロのアーティストがYouTubeなどに上げている曲を確認すると、ラウドネスは基準値をがっつり超えているものもあれば、丁度のものあり、結局のところ上げる側の意向により様々だということが分かります。

基準値を超え、ラウドネスノーマライゼーション機能が発動することがアウトだと思ってる方が時々いるように感じますが、別にアウトではありません。基準値を超えても、音量を下げて再生されるだけで、音質が劣化するわけではないからです。ネットの記事やYouTubeの動画の中には、ラウドネスノーマライゼーション対策と銘打って、あたかも基準値ぴったりに調整することが良いことのように紹介されているものがありますが、これはちょっと誤解を生むかなと思っています。

重要なのは「その曲にとって最適なサウンドになっているかどうか」です。最適なサウンドは楽曲やジャンルによっても様々なので、基準値付近に仕上げることが最適な場合もあれば、そうでない場合もあるということです。

結局何を気にしないといけないか

ラウドネスノーマライゼーションにより、各楽曲の音量感を一定にしようという処理がされても、実際にはMix/マスタリング次第で曲によって聴覚上の音量感が異なったり、サウンドの良し悪しは出ます。これは技術的な要素であって、単純にラウドネス値だけの話ではないです。
ありがちですが、ここを置いてきぼりにして、単に楽曲のラウドネスをいくつに仕上げるのが最適なのか?という数字だけの話をするのはあまり意味がないと思ってます。

例えば、最適だと思う状態に仕上げた音源が、ラウドネス基準値を超えていたとします。あなたがもし基準値を超えることがアウトだと思っている場合、Mix/マスタリングをやり直し、基準値丁度に近付けることだけを狙って、コンプ、マキシマイザー、リミッターを外すなどした結果、極端に圧縮感が控えめの何か物足りないサウンドになってしまうかもしれません。
決して圧縮感を出した方がいいと言っているのではなく、最適だと思っていたサウンドを変えてまでラウドネス基準値を狙う必要もないということです。(逆に必要以上に音圧を上げるのも全く無意味です。)

他にもありがちなのは、適切とは言えない状態のMix/マスタリングについて対処しないまま、ラウドネスノーマライゼーション対策だけどうしようか考える、というのもあまり意味がありません。

つまり悩むべきは、ラウドネス値をいくつに仕上げるか?ではなくて、一定のラウドネス値で比較した場合、より良いサウンドに仕上げるにはどうMix/マスタリングしたらよいかを考えよう、ということです。今回いちばん言いたかったのはこれです。

では、より良いMix/マスタリングにするにはどうしたらいいかですが、各パートの音量バランス、帯域の棲み分け、ピークの管理、ヘッドルームの確保、トランジェントのコントロール、などなど、これはもう技術、センス、経験、色々求められる永遠のテーマです。ラウドネスをいくつにするか悩むのではなくここを磨きましょう。僕も一生修行するつもりです。

最後に

最後に僕自身の楽曲「振り返るには遠すぎる」のラウドネスを紹介しますが、こちら-7.8LUFSです。YouTubeやニコニコ動画の基準はかなり超えており、ラウドネスノーマライゼーションが発動する状態ですが、自分としては最適だと思うサウンドに仕上がったので、あえてこれより基準値に近付けようとはしていません。(今後CD化するときのことも考えてのラウドネス値にしています)
基準値を大きく超えているからといって、YouTubeやニコニコ動画上の他の楽曲と比較していただいても、過度の圧縮感だったり、ダイナミクスが損なわれている、といったようなことはあまり感じないかと思います。

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。

Header image: Freepik

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