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タロットで見るATEEZのストーリー(WORLD編)


THE WORLDシリーズが完結しました。

とても面白かったです。特に最後のWILL−Diaryは心掴まれるシーンも多く、リリースから数ヶ月経った今でも時折思い出しては反芻しています。
で、やっぱり最後は自分なりの解釈をアウトプットしたいと思いこのエントリを書きました。でも私の力だけじゃ到底無理なので、前回のTREASURE編同様タロットの力を借りてストーリーを追っていきたいと思います。
本当はWORLDシリーズのみにする予定だったのですが、やはり前作のFEVERシリーズから見ていかないと成り立たないのでFEVERシリーズの話もします。HALAZIAの話もします。ついでにライブの話もします。要は私が勝手に再構築したIFストーリーです。幾多の次元、あったかもしれない世界の一つとしてお読みいただければ幸いです。

前作


はじめます




プロローグ : 存在しない地図

ATEEZはこれまでにワールドツアーを4回興行しています。(デビュー直後の北米・ヨーロッパツアーを除く)
そのうち初のワールドツアーである『THE FELLOWSHIP:MAP THE TREASURE』はTREASUREシリーズの総括であり、2020年2月8日から日本を含む全世界16都市で行われる予定でした。
しかし序盤のソウル公演は開催されたものの、その後のツアーはすべてキャンセルとなってしまいます。
そう、新型コロナウイルスの流行による影響です。

Ⅻ.吊るされた男(THE HANGED MAN)
停滞と試練


Ⅻ.吊るされた男のカードの次はⅩⅢ.死神です。このまま進むことは文字通り「死」を意味します。進めなければ戻るしかありません。そうして生まれたのが前日譚であるTHE FEVERシリーズです。
実際、FEVERシリーズはコロナ禍で影響によりこれからの方向性を模索する中で決まったことが公式から明かされました。
カードに描かれている男の顔は、逆さに括られている過酷な状況ながらも光に満ち溢れています。よく見ると枝を失った樹にも緑が覆い茂っています。希望はまだ失われていないのです。未曾有のパンデミックにより手も足も出ず、これまでのセオリーが一切通じない中で、それでも今できることを必死で考える……成長と発展が当たり前だった世界で、人類に課せられた長い長い待ち時間だったのだと思います。
また、AnswerのMVの最後にWORLD EP.1 MOVEMENTのSector 1が挿入されているのも、次にWORLDシリーズを展開するつもりだったとすれば納得がいきます。もしかしたら当初はSector 1がタイトル曲の予定だったのかもしれません。

Ⅺ.正義(JUSTICE)
情を挟まない公平な裁き

吊るされた男のカードの前にあるのは正義です。タロットの大アルカナを一つの大きな物語として見ると「第二章」にあたるカードです。現世での旅を終えて次の次元に向かう前に、これまでの行いを審査される場です。死後の世界で裁きを下すヤマ(閻魔大王)のような存在とも言えますSector 1から始まるWORLDシリーズはもっと単純な勧善懲悪に寄った内容だったのかもしれない……などと想像が膨らみます。

しかしタイトル曲としてのSector 1は世に生まれず、コロナの終焉とともにようやく時は動き出します。

悲願のワールドツアー
Ⅹ.運命の輪(WHEEL OF FORTUNE)
終わりの始まり


そして今私たちがいるのはGuerrillaがタイトル曲の世界。ここでようやくWORLDシリーズの話に繋がっていきます。
前回のTREASURE編ではタイトル曲1つにつき1,2枚のカードを使って細かく見ていたのですが、このWORLD編ではEP毎の大まかな流れに沿ってカードを並べていきたいと思います。

THE WORLD EP.1 : MOVEMENT


Ⅳ.皇帝(THE EMPEROR)

皇帝のカードはタロットの中でも有名ではないでしょうか。カードの解釈も「リーダーシップ」「権威」「現実性」など幅広いのですが、私は「目標を立て、達成するために行動すること」と解釈しました。

前回のTREASURE編にてHALATEEZから力を継承したフィバティズは、Z世界で黒い海賊団の一員として活躍します。FEVER編で描かれた彼ら――A世界で鬱屈した思いを抱えながら身を寄せ合っていた頃とも、Z世界に飛ばされ必死で元の世界に帰る方法を模索していた頃とも違い、自らの意思で戦いに身を投じているのです。「HALATEEZの意思を継いで人々を救う」という使命と、「自分らしく生きるために歌って踊る」という願望の二つが合致し、一つの大きな目標となったからです。目標が無ければ、踏み出した一歩もただの戯れです。魂の旅は愚者のカードからスタートしますが、まだ自分が何者かも知らない愚者は虚空を見つめ、目の前に崖が迫っているというのに足元は疎かです。彼はどこへでも行けますが、どこかへ行くにはやはり前を見なければならないのです。

(前回のTREASURE編ではデビュー曲のPirate Kingに愚者のカードを使用しています)


THE WORLD EP.2 : OUTLAW


V.法王(THE HIEROPHANT)

皇帝の次は法王です。皇帝がその名の通り現実を統治する王だとしたら、法王は精神の拠り所となる王です。
MOVEMENTのエピソードではATEEZが数名に分かれてゲリラ的にパフォーマンスを行い、小規模な覚醒を促していました。しかしアンドロイドガーディアンに見つかったり、せっかく感情に目覚めた人々も元に戻ってしまったりと決して順風満帆ではありませんでした。
そこで彼らは世界最高峰の教育機関・プレステージアカデミーに潜入し、沢山の生徒を一度に目覚めさせようとします。これがOUTLAWのエピソードです。

OUTLAWという名前からは無秩序な無法者という印象を受けますが、ATEEZがやろうとしていることは「彼らの新しい法の布教」です。しかし無理やり言うことを聞かせるようではZ政府と同じになってしまいます。あくまでもATEEZは道を示すだけで、受け入れるかどうかは若き生徒たちに委ねています。
しかしそんなATEEZ達の前に立ちはだかる者がいました。学生団体・サンダーのリーダーとなったBe Freeの少女です。

Ⅱ.女教皇(THE HIGH PRIESTESS)

女教皇は法王の女性版とも言えるカードです。しかし法王は人のために神の言葉を伝えますが、女教皇は神のために人へ言葉を伝えます。要は神に純潔を誓った巫女です。

ここで少しZ世界のBe Freeの少女の話をしたいと思います。
OUTLAWのDiaryの時点では、彼女はプレステージアカデミー(≒Z政府)側の人間として描かれていました。しかし次のWILLのエピソードで実は感情に目覚めた人間であることが判明します。

Ⅲ.女帝(THE EMPRESS)

Be Freeの少女はプレステージアカデミーの優秀な生徒でした。ある日彼女は街中で歌うグライムス兄妹の歌声に感銘を受け、感情を獲得します。
女帝のカードは愛情と豊かさの象徴です。母という解釈もあります。
神の徒として生まれた若き女教皇はひとり経典を手に知性を磨きます。しかし知性だけでは機械と同じです。だからといって感情の赴くままに生きるのではただの獣です。清らかな知性の上に温かい感情を乗せることで、初めて生きた人間となるのです。(実際、目覚めた感情を飼い慣らすにはある程度の知性が必要であることが作中から伺えます)
そして女帝とはその名の通り女の王です。プレステージアカデミーの最優秀生徒の証でもある学生団体・サンダー。そのトップに上り詰めてまで彼女が叶えたかったこと。それは、

「美しさを心から享受できる世界で生きたい」

という願いでした。

THE WORLD EP.FIN : WILL


Ⅵ.恋人(LOVERS)

法王の次は恋人です。そのまま恋愛や交際といった意味もありますが、このカードの本質は他者とのコミュニケーション、そして正しい選択です。一本道だった人生に選択肢が現れるとき、それは自分以外の存在が自分の知らないことを教えてくれたときです。旧約聖書のイヴがヘビに唆されて知識の実を食べ、アダムにも食べるように勧めたように。
私はWORLDシリーズを「選択の物語」だと思っています。このシリーズでは一貫して、感情に目覚めた人間がその後ATEEZに賛同するか否かを本人の意志に委ねています。その結末がBe Freeの少女の活躍であり、プレステージアカデミーの兄弟の最期です。
正直に言うと、ATEEZを騙してアンドロイドガーディアンに助けを求めた弟と、ATEEZに協力し弟を説得した兄がどちらも等しく命を落としたことに、私は救いを感じました。これがもし「悪役」の弟だけが死んでいたとしたら……結局このストーリーは個人の意志に委ねると言っておきながら、間違った選択をした者だけに死という罰を与えるのか?と興醒めしていたと思うからです。
もう一つ救いだと感じたのが、Be Freeの少女側の心情がはっきりと描かれていたことです。彼女も超人ではなく、どこにでもいる普通の若者だった。たった一人で始めたZ政府への密かな反逆、その不安と恐怖は、サンダーという組織が大きくなっても決して薄れることはなかったのでしょう。そんな彼女がソンファと出会い、彼と黒い海賊団の存在によって「自分は正しい選択をした」と確信が持てたことに私は非常に感動しました。彼女は物語を動かす舞台装置ではなかった。生きている人間だった。私は兄弟の墓を立てたあとのソンファとBe Freeの少女の会話のシーンがとても好きで、今でもその情景が映画のように脳内に浮かぶのです。


こうしてWORLDシリーズは幕を閉じました。

TOWARDS THE LIGHT : WILL TO POWER

THE WORLD EP.FIN : WILLのリリースに伴い1月から始まったワールドツアー『TOWARDS THE
LIGHT:WILL TO POWER』。私は2月4日の日本公演を見に行きました。ライブ自体の素晴らしさや感動とは別で、WORLDシリーズの総括として見たときに気になったことが二つありました。
一つはトップバッターののCrazy Formからメドレーのような形でSay My Nameが始まったことです。バンドサウンドにアレンジされていて、こんな激しいセマネ聴いたことない!!!と驚いたのですが、同時に「もしかしたらライブでSay My Nameをやるのはこのツアーが最後かもしれない」とも思いました。
Crazy FormがATEEZのストーリーの新しいオープニングを飾る曲だとしたら、その勢いのまま続く情熱的なSay My Nameは「前回までのあらすじ」のように、どこかの誰かが語る遠い昔の話のように感じたのです。ツアータイトルが今までの「THE FELLOWSHIP」ではなくなったのも、8人だけのアジトに籠ってダンスをしていた頃にはもう戻れないという暗示のようです。でもきっと大丈夫。彼らは長い航海の末にATINYという光を見つけ、手を差し伸べることができたのですから。

Ⅶ.戦車(THE CHARIOT)
立ちはだかる壁を壊し、前へ進む力
Ⅷ.力(STRENGTH)
真の力とは、暴力ではなく心に灯す光である



もう一つは、セットリストにHALAZIAが無かったことです。これで本当にHALAZIAはWORLDシリーズと無関係であることが分かりました。
ではなぜEP.1のMOVEMENTの後にわざわざスピンオフとしてリリースしたのでしょうか。

ここからは完全にエビデンス無しの私の妄想です。
今回のWILL−Diaryで、FEVERシリーズに出てきたグライムズ兄妹が命を落としていたことが明らかになりました。表舞台に出てこないだけで普通に救出されたのだと思っていたのですが……。どうやらアンドロイドガーディアンに捕らえられて生体エネルギーを奪われる=死、だったようです。
なので、アンドロイドバンカーの美術館に収容されていた他のレジスタンスも、おそらく同様の末路を辿ったのでしょう。そしてそれはHALATEEZも例外ではないと思うのです。ホンジュンの夢の中に出てきたHALATEEZのホンジュンが「時間がない」と言っていたのも、残された自分の寿命がわずかであることを悟っていたのではないかと。

では、HALATEEZの魂はどこへ行ったのでしょうか?
……私は、「HALAZIAに出てくる8人の少年はHALATEEZの魂である」と解釈しています。GuerrillaでATEEZがビラを配り人々を扇動しているとき、同時にHALAZIAではHALATEEZが最後の仕事をしているのだと。だからWORLDシリーズの話ではないのにMOVEMENTの後にスピンオフとしてリリースされたのではないかと思うのです。

ATEEZに力を託したHALATEEZは、アンドロイドガーディアンやZ政府の粛清によって生体エネルギーを奪われた人々のために鎮魂の儀を行います。あるいは、自分たちが無秩序に目覚めさせてしまったが故に命を落としてしまったことへの贖罪かもしれません。
そしてHALATEEZはかつて自分たちが身につけていた海賊団の黒衣を燃やします。

手を広げた案山子が燃える姿は、さながら不死鳥のようです。不死鳥は寿命が近づくと自ら炎の中に飛び込んで生まれ変わるという伝説上の生き物です。
新しい命の誕生という視点で見ると、空に浮かぶ鉄球は卵子であり、それを取り囲む人たちは精子のようにも見えます。死者が生まれ変わるまでの生命のループ。HALATEEZもいつかまた、どこかで次の生を受ける日が来るのでしょうか?

Ⅸ.隠者(THE HERMIT)
俗世からの隔絶
愚者の老いた姿と言われている



エピローグ : 夢のあとさき

タロットに少しでも詳しい方ならお気づきかと思いますが、私はこのエントリを書くにあたり、本来のタロットの使い方をしていません。
タロット(占い)はシャッフルしたカードを引き、作為のないランダム性から潜在意識を読み解く「卜占」という占いの一種です。(最近では「知りたいことを入力して結果を表示させる検索エンジンやChatGPTの潜在意識版」と言われることもあります)しかし、私はあくまでも曲やエピソードから連想したカードを宛てがっていただけです。
ただ、最初からすべてのシリーズを大アルカナで説明するつもりではありませんでした。前回のTREASUREシリーズがいい感じにまとまったのでそれで終わりにしようと思っていたのですが、気がついたらWORLDシリーズに手を付け、FEVERシリーズとHALAZIAも盛り込み、22枚の大アルカナのカードをすべて使い切りました。
そうして残ったのが、56枚の小アルカナのカードです。
小アルカナとは、魂の成長の旅である大アルカナよりもミクロな世界……日々の生活や身近な人達との関係に焦点を当てたカードです。

小アルカナ:カップの6
追憶、あるいはトラウマ


次の新シリーズではふたたびA世界が舞台になるそうです。Z世界での壮大な戦いを終えたATEEZは自分たちが生まれたA世界に戻り、今まで置き去りにしていた個人の問題に向き合っていく……WILLのアルバムに収録されているDreamy Dayや各ユニット曲、その後に発売された日本リリース曲のNOT OKAYなどにもその片鱗が伺えます。私は作為的にタロットのカードを選んではいましたが、その結果何のカードが残るかまでは考えていませんでした。しかし今こうして小アルカナのカードだけが残ったことが「卜占」としての結果であり、もしかしたらこの先の展開を示唆していたのかもしれないと感じました。

また再契約や兵役が近づくにつれ、彼らの活動もこれまで通りというわけにはいかなくなるでしょう。ストーリー上の話だけでなく、ATEEZ本人たちもグループ活動に加えて個人の活動にも少しずつ意識を向けていくのかもしれません。少し寂しい気もしますが、個々の新たな一面が見られるのは楽しみでもあります。


……これで私の話は終わりです。書きたいこと、全部書きました。本当に楽しかった。おそらくアイドルのことに占いを使うのはこれで最後だと思います。最初はどうも距離があったタロットも、ATEEZのお陰でだいぶ身近に感じられるようになりました。ここまで読んでくださってありがとうございました。どんな時でもATEEZのみんなが納得できる人生を歩めますように!




おわり

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