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それぞれの進む道

私の新店舗移籍が決まった頃のお話です。

元彼のマサヤと結女ちゃんの関係を知り、傷ついた私はマサヤと距離を置き、A店のオープニングメンバーとして店を盛り上げていく事に徹すると決めました。

その頃、マサヤの働くサパー店も大宮に新店舗を出しており、マサヤも週単位で大宮にヘルプに行く機会が増えていました。

実は、その時に一度だけ大宮店に遊びに行く機会があったのですが、昼職のシフトに合わせて水曜日に行きたいと言った際、マサヤから"その日は別のお客さんが来る予定があって…"と別の日を勧められたのです。"別に被りとか私は気にしないからそれでもいいよ"と返したものの、マサヤはできれば日程を調整してほしいと頼み込んできたのです。

とりあえず、勤務先に相談してその週の休日変更の了承が取れたので木曜日に変更しました。別の客とは、マサヤに彼女がいる事を知っている人なのか、それとも仕事上よほど大切な人なのか…と薄々考えていました。

その後、結女ちゃんの個人ブログを覗くと"水曜日の大宮楽しかった♪"と書かれており、そういう事かと納得しました。彼女と私を鉢合わせさせたくなかったし、遠征先では彼女との関係を周りに隠さず普通に恋人同士の時間を過ごす為に…と彼なりに配慮したんですね。

ただ、マサヤは脇が甘いので私が行った木曜日に来ていた他の客から"マサ、昨日地元から彼女が来てくれてたんだって?"とよく通る声で言われていて、その会話は私の方にも筒抜けでした。馬鹿め。本当に隠すのが下手だな。

私はマサヤに嘘をつかれていた事が悔しかったのではありません。

嘘をつくなら最後まで上手く隠し通せって話。それが完璧にできないなら中途半端に嘘つくんじゃねーよ💢

今でも私は人に対してこう思っています。嘘も浮気も構わない。ただし、相手を傷つけないように100%隠し通せる場合に限る。

やがて、マサヤが大宮店へ完全移籍する事が決まりました。どうやら向こうでの客ウケが良く、本人も都心部に近い場所でもっと自分を成長させたいと望んだ為でした。彼からその報告を聞いた時に「俺がいなくなって寂しい?」と聞かれたので、

「別に!あんたなんてもう一生こっちに戻ってこなくていいよ!」

と言い返しました。ある意味それは本音です。マサヤが離れた所に行ってしまえば、彼がこの街で結女ちゃんと肩を並べて歩く姿を見なくて済むから。もう二人の関係を近くで目の当たりにして傷つかなくて済むのだから。それに、これが私の彼に対する未練を完全に断ち切るチャンスかもしれないから。

私の言葉に対してマサヤは「なんか最近すぐに酷い事言うじゃん」と嘆いていましたが…

私に見破られる程度の下手な嘘ついて中途半端に騙してきた事がどれだけ残酷な事なのか分かってんのかよ。

という言葉しか浮かびませんでした。さすがに場の空気が悪くなるので、喉元から出そうになっていたこの一言だけはぐっと抑えましたが。

その1ヶ月後に私はV店でのラスト勤務を終え、携帯に結女ちゃんのブログが更新された事を知らせる通知が入ってきたので見てみると…

もう終わりだ。マーが傍にいない時間に結女は耐えられなかった。別れよう。

という文面が目に入ってきました。営業用のブログにも詳しい事は書かれていなかったものの"もう全部おしまいだ、終わった。"という一言が残されていました。

なんでよ。せっかく私が踏ん切りをつけようと決心したのに。そんなに傍にいたいなら、一緒に大宮に行けば良かったじゃん。あなた夜一本でしょ?向こうで働く店とかも決めれば良かったのに。それができない理由でもあるの?

当時、自分の人生における恋愛の比重が半分以上を占めていたので私はこう思いました。今思うと彼女にも店の看板嬢として背負っているものだとか、家族の事情だとか、私には知り得ない理由があったのかもしれませんが。

かく言う私も私で正社員として日中働く傍らで新店舗の看板を背負うという重責を担っていたので、遠く離れたマサヤを想い続けて病むだの苦しいだのほざいている余裕はなく、ここで全部終わりにしようと決意を固めました。

***

この時期は、私も自分自身を取り巻く人達の環境もガラッと変わった約1ヶ月間でした。

もはやマサヤとも結女ちゃんとも張り合う必要性がなくなりましたが(笑)、看板嬢として心新たに前進してゆく約束をオーナーと交わしていたので後戻りはできない状況でした。

結局、この時自分が一番守りたいものって何だったんだろう?底辺嬢なりに持っていたプライドなのかな?

それぞれが新しい道に進んだ10年前の春。思い返して何だか涙が出そうになりました。きっと今までで一番恋愛にも夜の仕事にも必死になった時期だからですね。

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