9/13-16 北海道旅行記
涼を求めて北の大地へ渡った。これについては目論見通りの成果を得たといってもよい。日光の強さはさすがに9月だが、滲んだ汗もひとたび日陰に入ればたちまち乾いた。夜風は天然の空調のようですらあって、3泊のうち、冷房をつけて寝る日は一度もなかった。
そんな北海道旅行を、語り尽くさない程度に振り返るぽよ。撮りまくった写真や動画をどこかに吐き出したいし、旅行の余韻が静かに抜けていくのが、僕にはまだ怖い。リアルタイムの実況はTwitterに放流しているのでそちらを流し見ていただくとして、ここではハイライトや雑感を中心に書いていくことにする。
9/13(水)
旅行は0時から始まっている。当日券争奪戦(航空機の当日券を目当てに日付の更新を待っている輩はほとんどいないので、どちらかというと自分との戦いである)を勝ち抜き、4時半起きして空港に向かう権利を得た。むろん4時間睡眠になる。初日の睡眠不足は旅の醍醐味だ。
なんだかんだと楽しく気持ちよく飛び立ち、そして落ち着く暇もないままに新千歳空港で降ろされた(飛行機が落ち着いたら大事故だ)。
それにしても飛行機は速すぎる。自宅から田町経由でお台場に行くのと、自宅から羽田経由で新千歳へ飛ぶのとで、かかる時間にほとんど差がない。それだけに、遠くまで来たことを実感するのにも2,3日くらいかかる。
空港から湖へ。うっかり温泉に入ってしまい、心地の良い眠気が夜まで持続した。支笏湖温泉はやや黄色がかったとろみのある泉質で、見た目にも感触にも、いかにも温泉といった風情。露天風呂では鳥の声が聞こえたが、声のする方へ視線をやってみると、その主は塀に据え付けてあるスピーカーだった。
復路便も予約してあったので、1時間ほど湖畔をぶらついて千歳駅へ向かう。
千歳では特に何をするでもなく、駅舎の風除室や地元のJKに北海道を感じながらさっさと千歳線に乗り込んで、数駅先の北広島駅で降りる。今回の旅の目的の一つ、新球場での野球観戦の時間である。
エスコンフィールド北海道は最高の球場です!
エンタメとしてプロ野球をやるぞ、楽しませるぞ、という意気込みが他所とはまるで違った。音響も照明も動線もショップもほぼ言うことがない。
馴染みのない土地において、目当てのバスがやっと来たときとか、駅舎がやっと見えたときの安心といったらない。日のあるうちは「なんもねーな」と思った北広島駅の駅舎も、夜に沈む建物の隙間から覗いたときにはほっとしたものである。帰れる。
北海道随一の繁華街すすきの。ホテルがたくさんあるからここを選ばざるを得ないだけで、好きで泊まっているわけではない。ガー○ズバーの女の人たちが道の両サイドに「目と目があったらポケモンバトル」かよってぐらいの間隔で立っていて、めちゃくちゃ誘(いざな)ってくる。横浜とか沖縄の国際通りとかで声をかけてくるのは居酒屋の客引きばかりだから、ここまで堂々とエロエロしているのには土地柄を感じる。
好きで泊まっているわけではない。
初日のホテル。眠すぎるので寝るのみ。
9/14(木)
起きる。
の前に、この日も0時に飛行機を取っていた。
旅行初日はよく眠れないものだから、6時間半くらいで起きてしまったのも想定内。満タン時の7,8割のエネルギーを得る。
天気もあまりよくないし、飯と移動に専念する。
つもりだったのだが、ここで今旅行最大のアクシデント。なんと数日前からの雨続きで千歳線の線路が冠水し、空港行きの電車が終日運休となる。さすがにやべ〜となり、人波に流されて右往左往する間に空港行きのバスの停留所へと辿り着く。
余裕を持って駅に着いていなければ、札幌で野宿することになっていたかもしれない。当初は1,2時間余裕を見て空港に着くつもりだったのだが、蓋を開けてみれば保安検査締切の20分前とかであった。
札幌発函館行きの特急北斗も止まっていたので、この日この便を逃せば函館に着く手段がほぼ断たれることになる。同じ北海道なんだからタクシーでもなんでも……、と甘く見てはいけない。札幌-函館間の距離は、東京-浜松間とほとんど同じなのである。
前日に賑わう新球場を見ていたのもあって、バスの停留所「札幌ドーム」には皮肉な響きを感じた。むろん、1人の乗降もなかった。
やっとの思いで宿に着き、まずは腹を満たして、2日分の着替えをランドリーにぶち込み、温泉に浸かる。大浴場の景色が売りの宿なのだが、むろん浴場で写真が撮れるはずはないから、気になったら以下のリンクを参照してほしい。津軽海峡に面した露天風呂で、荒く低い波の音が時折ゴーと響いてくる。夜の海は怖い。
「あれはイカ釣りの明かりですか」とおっさんに話しかけられたが、なんも知らんかった。「金はないけど時間だけはある」とも言っていたけれど、どうしてか金のない人の言葉には聞こえなかった。こういう一期一会は嫌いじゃない。
眠る。
9/15(金)
起きる。
夕方まではだらだら観光。市電/市バス1日乗車券を買いましょう。
さて夜。駅前4番乗り場から函館山山頂行きのバスに乗り込む。
山頂への移動手段はロープウェイが鉄板だが、あえてバスに乗る。ロープウェイは仕掛け絵本をゆっくり開いていく感じで、視点が高くなるにつれて徐々に広がっていく夜景を眺めることになる(多分)。これに対してバスは、登山口に入って初めて山の木々が途切れ、視界が開けた頃にはすでにずいぶん高いところにいるので、「トンネルを抜けるとそこは夜景の大パノラマであった」という感じ。数秒で隠れてしまうのもまた味になる。溜めが長い分、乗客が漏らす「わぁ」みたいな言葉にならない感嘆も、ロープウェイより大きいんじゃないだろうか。
函館の夜景は美しい。僕はこれより綺麗な景色をほとんど知らない。普段「好き」と「おすすめ」を意識して使い分ける僕でも、この景色は強く「おすすめ」したい。愛する人間にはこれを見ずに死んでほしくない。これを見てからも死んでほしくない。
どれくらい綺麗か、ということを説明する言葉もない。見ればわかる。それぐらい、好きとか嫌いを超えてひたすらに美しい。「函館のなにがよかったか」と問われれば「夜景」と即答するし、夜景を見ずに函館を去るのは、ルー抜きのカレーを食ってるようなもんだとまで思う。当初2泊の予定を延ばしたのも、ひとえに晴れの日に夜景を見るためだった。
帰りはロープウェイ。前便の出発をスルーして次便の先頭に並んだ。
ギリギリまで山上で過ごし、22時を過ぎてラッキーピエロに入店。
完食して程近いホテルへ戻り、大浴場からの夜景を楽しむ。山上からの景色に比べれば大したこともないが、気流で遠くがゆらめくのは函館山と同じだし、函館駅着の終電まで見下ろせる。
JRイン函館はいいぞ。
脱衣所にて日付を跨ぎ、帰りの飛行機を押さえる。残席2。綱渡りが過ぎる。
左のベッドで眠る。
9/16(土)
起きる。
初日に撮った動画で「旅行は羽田空港に着いた瞬間終わったようなもん、あとはてめえで敷いたレールに乗って最終日まで運ばれていくだけ」と言っていたのだが、半分そうで、半分はそうじゃなかった。解決できさえすればアクシデントも面白いもんだ。
これでおしまいです。お付き合いいただきありがとうございました。撮りまくった動画はどうしようか……。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?