おしんこ大統領

この記事は「体験型イベント Advent Calendar 2016」(http://www.adventar.org/calendars/1827)の
ひとつとして書かれたものです。

いつもお世話になっております。
たなかでございます。

そういえば、去年もたしか同じ日担当だったんです。
https://note.mu/heelaw/n/n0858b56b807d
12月23日。

 じつは、この3日後の12月26日に、「金田一4」こと
「死忌神村伝説殺人事件」の初日が迫っていたんです。

 今だから言いますが、これを書き上げた時点で、
そもそもの「大謎」、つまりイベントの評判を左右する
メインであり最後の謎が一切、まったく、一ミリも
出来てなかったんですよね。

 大謎ができていないということは、もちろん、
その大謎から遡って影響を受ける小謎や設定、ルール等も
確定していないという状況なわけです。

 もう一度言いますが、本番まではあと3日です。

 事前に「この時期ならできてるから書けるだろ」と
軽率に日程を設定した結果、案の定まったくできておらず、
本番まで僅か3日しかない、デザイナーも待たせ続けている、
最高にやばい状況であんなネタ文章を書く僕の気持ちがわかりますか?



いま、みなさんはこう思ったはずです。



「知らんがな」と。



 後に、事前に制作状況を把握していたM氏はこう思ったといいます。

たなかさんは本番まであと3日しか無いのになんでこんな意味のない文章を延々と書いているんだろう。どう考えても他にやるべきことがあるんじゃないか。そんなことより前説の台本を書いてくれないだろうか。本当に大丈夫なんだろうか。あのひとは馬鹿なんじゃないだろうか



本当に申し訳ございませんでした。



 このように、開催すら危ぶまれていた「死忌神村伝説殺人事件」でしたが、その後なんとか無事に謎は完成し、地方のところどころで適宜ジェノサイドが発生しながらも、評判も上々で終えることができました。



何も問題はない。


そう、何も問題はなかった。


 それどころか、このアドベントカレンダーを書いたおかげで、いい漢字に脳がミックスされて、ブレスト脳(アイデアがどんどん出てくるモード)になったので、かえって良かったのではないかとさえ思えます。


よかった。


逆によかったのです。



 さて、今年。僕は12月23日を予約しました。

 理由は、12月18日に「逆転のリドル」の初演が終わっているから。
 もう去年みたいな思いはしたくないのです。

 たなかも二度と同じ轍は踏みません。
 なので、今年はとてものびのびと書いています。

(逆転のリドルはARG脳&考察脳を持った人が面白く感じるつくりになっているので速読能力を限界まで上げてご来場ください)


 さて。今年のテーマは「おしんこ大統領」です。

 おしんこ国の大統領なのか、おしんこのスメルがするからそう呼ばれているのか、それとも名前が「オ・シンコ」なのか。そうだったら子供の頃は「やーいおしっこおしっこ」と言われていじめられていたはずです。そこから一念発起して勉学に励み一国の大統領にまで上り詰めたおしんこ大統領。しかし突如現れた悪い魔法使いに体臭がおしんこの匂いになってしまう呪いをかけられてしまいます。その呪いを解くためにはおしんこ国に伝わる伝説のファブリーズが必要。伝説のファブリーズを見つけ出すため、おしんこ大統領は国中におふれを出し、勇敢な者、すなわち勇者を募るわけです。

 ・・・というように、この「おしんこ大統領」という言葉だけで、インスピレーションが湧き上がり、大きな物語を紡ぐことができるわけです。

 で、世の中にはそういうインスピレーションが湧きやすい単語と、
湧きづらい単語があるということをみなさんご存知でしょうか。

そう。
「漢字+意味不明だけど意味がわかるカタカナ」の組み合わせです。

おっ、急にマジメな話になってきたぞ。

 体験型ゲーム、特に謎解きゲーム系は、
事前の告知において「内容」を100%伝えることができません。
その内容はほとんどがゲーム中に明かされるべきものだからです。
あらすじに「工藤新一こと江戸川コナンは」と書かれるようなものです。

 そのため、イベントの事前告知においては「タイトル」「あらすじ」「開示できるシステム」(※コラボ系は「コラボ内容」「出演者」も含む)のみで、「面白そう」と思って頂いて、わざわざ事前にチケットを買って頂いて、イープラスの手数料を払っていただきつつ、コンビニでさらに発券手数料を払って頂いて、当日会場に来ていただかなくてはならないのです。

 ちなみにイープラスはイベント主催側からも手数料を取っているので、僕らに「手数料が高い」って言われても何もできませんし「わかるなあ」と同調しかできません。あとプレリザーブとかで特別に手数料が高いやつは、基本的にこの主催側からとる手数料をお客さんが払うシステムです。ちなみに紙のチケットを発券すると主催側がチケットの紙代として1枚10円払うシステムになっているので、もし全員がスマチケで購入してくれるとその分の費用負担がなくなり、バイトのみんなのお昼ごはんをワンランク上げることができます。これほんと。 https://wos.eplus.jp/guide/plan/#hiyo

 凄まじく話がずれたのでもとに戻しますが、つまりお客さんのインスピレーションを掻き立てるタイトルを付けることができれば、それは「面白そう」なイベント、すなわちチケットが売れるイベントになり得るのではないかということです。実際に面白いイベントが作れるわけじゃないのでそこんとこ注意。

 今回の記事では「面白そう」に見えるタイトルの法則のひとつである「漢字+意味不明だけど意味がわかるカタカナ」の事例について考えていきましょう。これを突き詰めると、面白そうなタイトルを簡単に作れるようになります。あなたも今日から売れるイベントの名付け親です。

 まず、過去の事例をざっと並べていきましょう。

 潜水艦ポセイドン号からの脱出
 魔法禁書エンラッドからの脱出
 海底監獄インペルダウンからの脱出
 心斎橋チョコレート殺人事件
 古代遺跡エルドラドからの脱出
 惑星オリオンからの脱出
 監獄アルバトロスからの脱出
 時空王女ラビリンスからの脱出
 大迷宮バハムートからの脱出
 潜水艦ゴライアスからの生還
 宇宙船ノアからの生還
 絶望観測デスゲエム
 死刑執行エレベーター
 絶望解体ワカバクダン
 絶対絶命絶望希望ロワイヤル

 ちょっとまだまだありそうなので以下略。
 で、これらですが、ある程度分類ができます。

<原作がそうだったよ系>
 ・海底監獄インペルダウンからの脱出
 ・大迷宮バハムートからの脱出
 ・時空王女ラビリンスからの脱出
    →これは「原作も一緒に作ったよ系」

<語感で付けたよ系>
 ・絶対絶命絶望希望ロワイヤル
   →企画書段階では「絶望希望ロワイヤル」だったけど
    物足りなくて伸ばした

<内容を示唆してるよ系>
 ・心斎橋チョコレート殺人事件
   →心斎橋で起こるチョコレートを発端とした殺人事件

 ・死刑執行エレベーター
   →死刑を執行するエレベーター

 ・絶望観測デスゲエム
   →絶望を観測する/されるデスゲーム

 ・絶望解体ワカバクダン
   →ワカバクダンを解体する&絶望

<名前を攻略対象の名前にしてるけど本当の意味は違うよ系>
 ・潜水艦ポセイドン号からの脱出
   →ギリシャ神話の神。海を司る。

 ・魔法禁書エンラッドからの脱出
   →不明。検索でゲド戦記がヒットしたけど違う雰囲気。

 ・古代遺跡エルドラドからの脱出
   →本来の意味は「黄金郷」を示す伝説上の土地。

 ・惑星オリオンからの脱出
   →ギリシャ神話の神。転じて星座。

 ・監獄アルバトロスからの脱出
   →意味は「アホウドリ」。
   →ゴルフで規程より3打少なく打つこと。
   →語感は監獄として使用されていた島「アルカトラズ島」

 ・潜水艦ゴライアスからの生還
   →聖書に登場する巨人兵士「ゴリアテ」に由来する。
   →転じて「大きいもの/兵器/乗り物」に使用される。

 ・宇宙船ノアからの生還
   →「ノアの方舟」が由来。

ここですぐ参考にできるのは、最後に挙げた<名前を攻略対象の名前にしてるけど本当の意味は違うよ系>です。なぜならば、攻略対象となるものの名前を自分で勝手につけることができるので、内容を一切考えなくても、それっぽいタイトルをいとも簡単に作ることができるからです。

簡単に言えば「形容詞+名称+ギリシャ神話の神」をつけるだけで
面白そうなタイトルが簡単に作れる
のです!!!!!!!!

さあギリシャ神話の神から適当にピックアップします。

そして頭に形容詞と名称をつけましょう。
こんなかんじです。
(下のタイトルは全部で8分でつけました)

灼熱火山アポロンからの脱出
魔術工房アルテミスからの脱出
天空要塞ウラノスからの脱出
極限神殿オケアノスからの脱出
全能研究所ゼウスからの脱出
冥王迷宮タルタロスからの脱出
海底洞窟トリトンからの脱出
防衛都市プロメテウスからの脱出
絶海孤島ヘルメスからの脱出
最終戦争ムネモシュネからの脱出

それっぽい!!!!

すごい、それっぽい!!!!!

もちろん、ギリシャ神話の神じゃなくても、
カタカナでなんかそれっぽい属性を持っているものなら
だいたい大丈夫なはず。星座とか。


そして、このロジック。
極論を言えば、意味のないカタカナでも大丈夫だったりします。


 濁点を2文字以上使い、ひとつの濁点の次に「ー」をかならず使うようにします。そして最後の文字を語感で「ン」か「ス」のどちらかにします。それだけで、面白そうなタイトルが簡単に作れるのです。
 他にもたくさんあると思いますが、まあ今回はこれだけで行きましょう。

では上記のルール通りに、適当にカタカナ5文字をピックアップします。

ダイグース
ダーギオン
ゾージウス
レギゴーン

今適当につけましたが、これらも「冥王要塞」とか
適当につければそれっぽく聞こえます。試してみましょう

冥王要塞ダイグースからの脱出
冥王要塞ダーギオンからの脱出
冥王要塞ゾージウスからの脱出
冥王要塞レギゴーンからの脱出

それっぽい!

実にそれっぽい!!!!!

というわけで、今年はとても実用的な内容となりました。
今後、「漢字+カタカナ」のタイトルを見つけたら、
この記事を思い出していただけると幸いです。

面白いイベント内容は各自頑張って作ってください。


そんじゃーね。

今後の執筆のモチベーションとなりますので、サポートを頂けるとありがたいです!頂いたサポートは謎解き関連の業界啓蒙やイベント参加などに役立たせていただきます。