ARGゾンビ〜国産ARG10周年によせて〜(※2021年12月12日改定)

 10年前、あの土地にはRYOMAというお屋敷が建っておったのじゃ。それはそれは沢山の人が関わっておってのう・・・偉い学者先生が日々研究を重ねておったのじゃ。「あじのひらき」という者が様々な交通整理をしてそれはそれは良いお屋敷じゃったという。

 やがて、その研究に魅せられた者たちが、RYOMAと同じようにその土地に思い思いの建物を建てはじめたのじゃ。お屋敷を建てる人や、それを見学する人で一時期は多くの人々で賑わっておった。平日休日問わず訪れる好事家、すなわち「こあゆーざー」もかなりおったようじゃ。

 しかし世の中は栄枯盛衰。あまり作物がとれないその土地は、だんだんと人が離れていってしまい、いまでは殆ど更地になってしもうた。その土地に愛着がある者も、背に腹は代えられぬと「なぞとき村」「ぱずる村」や「まーだーみすてりー村」などの土地に散り散りに出稼ぎに出るようになった。

 そのうち、この土地に定住する者はまったくいなくなってしもうた。あんなに頻繁に姿を見る「こあゆーざー」たちの姿もいつの間にか消えておった。あの「あじのひらき」さんの行方もいまでは全くわからなくなってしまっておってのう。今は何をしているんじゃろうか・・・。

 そして10年経ったある日、ほとんど更地になったその場所に、どこからか、ある一人の若人がたどり着いた。その若人は、もとは別の集落の住民じゃったが、その場所に住んでいる者たちからこの土地の話を聞いてやってきたようじゃった。

 若人はあたりを見回してこう言った。「すごい!この土地は自由に好きなものが建てられるぞ!しかも他に建物を建てている人がいない!これはやりやすいぞ!」彼はえらく感動したようじゃった。そして早速、建物を立てるために一通りの材料を揃え、まずはクワで地面を掘ろうとした。その瞬間──。

「らびっとほーるはどこだああぁぁぁ!」

 大きな叫びとともに地面からおびただしい数の手が突き出してきて、若人の足を掴んだのじゃ。それは、10年前にこの土地を頻繁に訪れていた「こあゆーざー」たちの姿じゃった。彼らはこの土地に建物を建ててくれる人をずーっと、ずーっと待っておったのじゃ。

 彼らは消えたのではなく、長い年月を経てこの土地と同化しておった。そしてその中には──若人にこの場所を教えた、かつての住人の姿もあった。彼らは若人が準備していた素材を、常人では考えられないスピードで消費していった。そりゃあそうじゃろう。やつらは飢えておったのじゃ。

 若人はひどく動揺した。彼が想像していたのとはまったく異なる方向に事態は進んでしまっておった。このままでは事前に準備していた素材がすべて消費され尽くしてしまう。しかし、もう時間はあまりなさそうじゃ。若人はできる範囲で素材を固くし、奴らに簡単に食われないようにしたのじゃ。

 しかし奴らは「しゅうごうち」という特殊能力を持っておった。若人がどんなに素材を固くしても奴らは協力し、簡単に素材を食い尽くしていってしまう。若人と「こあゆーざー」たちの戦いが今始まったのじゃ。素材はもうとっくに普通の人が理解できるようなレベルを超えておった。

 若人もそれには気づいておった。なんとか別の方法で普通の人も「こあゆーざー」も平等に楽しめるものを作らねばならぬ。しかし事態は動き出してしまっている。若人に必要なのは、あと少しの時間じゃった。若人は僅かな時間で必死に考え、こう叫んだ。

 「つぎの手がかりは、富士山の山頂にあります!」

 その言葉を聞いた瞬間、なんと「こあゆーざー」たちの動きが止まった。若人はひとまずなんとか危機を切り抜けたのじゃ。疲れ切っていた若人は、力が抜け、その場に倒れ込んでしまった。しかしそれは若人と「こあゆーざー」の壮絶な戦いの始まりにしか過ぎなかった。

 若人は知らなかったのじゃ。たとえ富士山の山頂であっても奴らの手は緩むことはない。それどころか困難な目標があればあるほど燃え上がり、あらゆる手を使って困難を解決していくのが「こあゆーざー」だということを。

・・・しばしの静寂ののち、数体の「こあゆーざー」が富士山に向かって猛スピードで向かっていった。しかし、最悪にも、倒れ込んでいた若人はそれに気づくことができなかったのじゃった。


「おい!富士山に手がかりなんか無いじゃないか!」
──彼らが戻ってきたのは、1時間後のことじゃったという。





そして10年後。ある若者がこの土地に流れ着いてきた。
彼はあたりを見回し、感激して言った。

「すごい!この土地ならものすごく面白いコンテンツが作れる!」

そしてこう続けた。

「しかも…この場所はまだ誰にも開拓されていないじゃないか!」


おしまい。

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