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たなかの日記 4/17 背中が痒いがどこが痒いかいまいち分からない

日記というか思いついた小咄を書くnoteになっているけどまあいいか。

謎解きを作るにあたっての切り口の話。謎解きを作る人は大体の人が分かってるけど文章にしていないので、ここで定義してしまう。「帰納謎」と「演繹謎」だ。

「帰納謎」は「世の中の事象を切り取って図示し、単語になるように文字を拾わせる」ものをベースとしている。別名「ナゾトレ謎」「ひらめき謎」。個人的には「セカイ系謎」と呼んでいる。この形式はぱっと見の印象が良いため、今や一枚謎のスタンダードになっている。例えばこういうの。

左の図は「たまご」を表しており、右には「きみ」と「しろみ」がある。小さい丸は文字数を示しているので答えは「したみ」となる。

このタイプは言い換えると「この図は世界のどこを切り取ったでしょうかクイズ」である。答えの文字列はぶっちゃけなんでも良い。もちろん関連したモチーフに近い単語であればあるほど良い問題として扱われるが、「これが何を表しているかクイズ」の部分で面白みが担保されているため、関連のない単語でも特に何も言われない。

メリットとしては、その問題が「世界のどこを表しているのか」がわかればやることは文字を拾うだけなので、誰でも解けるという点。また切り取り方によっては「全く新しい問題」に見えるため、数々の経験を積んできた謎解き猛者たちも解けない問題を作りやすい。デメリットとしては、思いつかない限り永遠に解けないので、出題側としては時間の計算がしにくいほか、世界の切り取り方に一定のスキルというか慣れが必要な点があげられる。

対して「演繹謎」は「既に決まった答えの文字列を規定の謎の形式に当てはめるもの」であり個人的には「ワイルド(カード)謎」と呼んでいる。例えばこういうの。

みんな大好き五十音表。「わをん」の位置が人によって認識が違うので解きづらい時がある。

これは五十音表の文字を拾う問題。答えはもちろん「タイ古式」だ。
数字の場所を変えれば別の答えに変更することも簡単にできる。

公演型のイベントなどでは複数の問題に伏線が仕込まれており、答えや問題形式を再利用して後半の謎を解くことが多い。そのため基本的には作問に入る前に構成の段階で個々の謎の答えが決まっているケースが多く、どんな答えであってもすこしカスタマイズするだけで問題を作れるのでこの形式が重宝される。

メリットとしてはテンプレートさえあれば誰でもひとまずは謎を作れるということ。制作歴が長い制作者ほど問題形式のライブラリを大量に持っているので、とりあえずなんか出す、というときの制作スピードは早い傾向にある。
デメリットは解く側の謎解きの経験値によって解くスピードが変わるということ。経験者にとっては「どこかで見たことがある謎」なので秒で解かれてしまうし、未経験者にとっては「未知の盤面」なので永遠に解けない可能性がある。
あと制作側としては「この形式めっちゃ見るから飽きたわあんま使いたくないな」という気分と戦わなくてはならない。いま僕が締切をぶっちぎっている理由はだいたいそこにあるので、ある程度そのプライドを捨てなくてはならないのが直近の課題だ。

「謎解きイベント」としては全体構成に従って決まっている「答えの単語」を帰納謎で作れるのが最も美しいと思う。しかしそう都合よく答えの単語を拾えるようにセカイを切り取ることはできないので、全体の構成に影響を与えない、ピンポイントな部分でアクセント的に使用するのがベターである。例えば最初のステップで出てくる「答えの3文字目が『ん』である/後半ステップでの問題盤面の使い回しがない」程度の問題であれば帰納謎を入れるのはあまり難しくない。

もちろん帰納謎だろうが演繹謎だろうが、それぞれのデメリットをカバーするような制作テクニックはいくらでもあったりするのだが、それはまたいつか書ければいいなあという感じで。


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