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さくらももこ「コジコジ」という作品の難しさ

トップ画像は、ハウステンボスに行った際、絵付け体験で描くものが思い付かず、苦肉の策でやっつけで生み出した、ハウステンボスの永久非公認キャラクター「テンボスくん」なるもので、掲題とは無関係である。

自身の幼少期をモチーフに、皆が共有しやすい普遍的な感覚や感情が盛り込まれた「ちびまる子ちゃん」に対し、メルヘンの国を舞台とした特殊な設定である「コジコジ」は、さくらももこのセンスとナンセンスが遠慮なく詰め込まれたハイセンスな作品であり、それを理解出来ていない第三者が扱うとなれば当然、厳しい。

でも、見る側としてはむしろ、もっとも頭を使わずに臨める類いの作品だと思っており、例えば子供ならば、そのキャラクターの可愛さだけで楽しめたりもするだろうが、本当の面白さ、"醍醐味"はそこではない。
とは言え、もちろん、楽しみ方は各々の勝手ではある。
しかし、それを扱う、発信する側がその感覚、センスを理解出来ていないのは、嫌だ。

言い換えると、例えば、大滝詠一の「君は天然色」は聴く人を選ばない、ポップで取っ付きやすい楽曲だが、これを他の"大衆歌"と十把一絡げに並列に扱ってくれるな、みたいな感じだろう、か?
多分間違ってはいないと思う。

そして、この度コジコジは、某飲料水のキャラクターに採用され、WEB上でCMが公開されているが、その世界観がないがしろにされた、どこか突貫工事感の溢れるような作りで、それはまるで、芸人さんなどに、とりあえず流行りのフレーズを言わせただけのような、どこかの某大手の"それ"と似たようなものだった。
"あれ"はそういったノリを含めている節があり、つまらなくても良しなのだろうが、今わざわざ、あるいは満を持して「コジコジ」を扱うのであれば、それ相応のものでなければならないと思う。

何もそんなに面白いものを求めているわけではなく、クスッと、または軽く微笑んでしまう程度で全然良い。
2年ほど前に放映されていたココカラケアという商品のCMで扱われたコジコジなんかは、とても良い塩梅だった。
ココカラケアはサプリであるが、それと比べたら飲料水なんて、どうとでも面白く出来そうなイージーな品である。
好き過ぎて力んでしまったのか?
賞タイトルの決勝でどんズベッてしまった芸人さんのように、普段通りにやれば良かったのに、考え過ぎてネタ選びを失敗したみたいな。

ひとつフォローすると、必ず入れなくてはならない商品説明の文言により、それの扱いに手こずった結果の"お粗末"と言える部分はありそうだが、"にしても"ではある。

端的に、さくらももこの世界観には存在しないやり取りを、コジコジのキャラクターが無理矢理に演じさせられているような作りだった。
本人がこれを見たら「あ〜、こんなことになってしまったか…わたしゃもう疲れたよ…」と、げんなりすると思う。
もっとも、存命であったなら、許していないだろう。

コジコジを当時リアルタイムでは見ていない、"にわか側"であろう私でさえも、もう少しマシな設定は思い付く。
例えばこんな感じ。

3年インコ組(セキセイ)の教室内。
例の如くペロちゃんに興奮して沸騰し、お茶を生み出した、やかん君。
我先にと走り寄り、それを貰うカメ吉くん。
しかし、彼と同様にいつも来るはずのコジコジの姿が見当たらない。

カメ吉「おーい、コジコジー!やかん君のお茶が沸いたぞ〜!」
少し離れた場所で何かを飲むコジコジを見つける。
カメ吉「ん?コジコジ、何を飲んでるんだい?」
コジコジ「これ美味しいよ!」
ハイッと手渡されたそれを飲むカメ吉。
カメ吉「ほんとだ!」
コジコジ「これ◯◯(商品名を間違えて読む)って言うんだよ!」
次郎「違うよ!これは◯◯(正しい商品名)って言う商品だよ!」
コジコジ「へー、それは、ちんきだね。」
次郎「ダメだこりゃ。」
気がつくとクラス皆んながそれを飲んでいる。
ションボリとするやかん君にペロちゃんが歩み寄る。
ペロちゃん「やかん君もこれ飲んで元気出して!」
その飲料水を受け取ったやかん君は再び沸騰。
やかん君「うぅー!」

こんな感じ。
面白いかは別として、世界観は踏襲出来ているはず。
商品説明を加えるとなると、そう簡単にはいかないのかもしれないが、コジコジを好きな、その世界観を理解出来ている人ならば、間違えてもあのような"粗末"なCMにはならないと思う。

でも、ひょっとしたらやかん君の沸騰はコンプラ的にアウトだろうか。
皆まで言わないが、やかん君のソレはアレを表現した部分は少なからず、いや、確実にその要素は込められているように思う。
逆にそれを想起しない方が難しい。特に男子は。
要はそれだけ「コジコジ」は、容易に手を出してはいけない作品である。

ただ、これらは所詮、あくまで個人の見解に過ぎず、そして、このCMに対しては好意的な意見が多く寄せられている。
これに味をしめて、良しとするならば、今後はさくらももこではない、違うノリの新たな「コジコジ」になってしまうのだろう。
それこそがこの作品の醍醐味だと感じていた、主に4、50代にドンピシャな、シュールな間合いのサブカルのノリみたいなものは、現在のタイパな早回しの時代にはそぐわないのかもしれない。

しかし、それでも私はこの飲料水を抗議を込めて、買わないことと決めた。
でも、ラベルにキャラクターが描かれていたり、オマケが付くのなら、仕方なしに買う。

私はそういう"粗末"な人間だ。

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