如月 灰音

如月 灰音

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閃光

人には、やましくてつく嘘と相手を傷つけたくなくてつく嘘がある。 空気が乾き始め、のどを通る風が冷たさを感じるある日の早朝。 雑居ビルの5階、ベランダで煙草に火をつける。 気温の寒さより胸を通る風が冷たい。 隣にいた、30歳近くの同僚も煙草に火をつけた。 2つ線を成すようにけむりが空へ消えていく、歩いてきた道のような感覚だった。 同僚が私に伝わるかわからない低い声で呟く。 「体調、大丈夫?」 その一言で、瞼に熱いものがこみ上げる。 「いやいや、大丈夫ですよ。そんなに顔色悪いと思