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「リアルVRライブ」のすすめ - Hello1103 Live:VR Experienceとは何か

先日よりHello1103が始めた新企画「Hello1103 Live:VR Experience」は「リアルVRライブ」であると説明しているのですが、この聞き慣れない言葉について少し言及したいと思います。

このイベント自体が初耳の方へ(イベント概要)

「Hello1103 Live:VR Experience」は、オンライン配信ではなくライヴハウスで直接体験するイベントです。
チケットを予約すると会場にVRゴーグルが用意され、来場者はそのゴーグルをつけた状態でライブを楽しみます。
ちょっと絵面が想像しづらいと思うので、4月28日開催時のトレーラーをご覧ください。

VRのリアルイベント自体はテーマパークなどでいくつか稼働していますが、音楽ライブに応用したものはあまり例がないと思います。
反響は非常に大きく、「ライブの臨場感や迫力をVRVJがブーストする新次元のエンターテインメント」として各所で紹介されました。

この「リアル×VR×ライブ」という組み合わせ、単に目新しいだけではない可能性と面白さを秘めているのですが、それを説明する前にVRを取り巻く基礎知識をお話しします。VRとMRの違いをご存じの方は読み飛ばしても大丈夫です。

VR, AR, MR

バーチャルリアリティ(VR)という言葉は古くからあり、ご存じの方も多いと思いますが、最近はVRの他にAR, MRなど派生語が生まれ、その総称としてXRという言葉が用いられるようになりました。どれも仮想現実を指す用語ですが、現実世界への干渉方法によって分類されます。

AR, MRとVRの主な違いは「実物と仮想を(どう)混ぜるか」にあります。
カメラや加速度センサー等の発達によって、仮想物体だけで構成されていたVRの世界に実際の映像を混ぜ込めるようになったわけです。
ARの代表例はポケモンGO。MRはYouTube Liveなどでもよく見られるようになってきました。

「Hello1103 Live:VR Experience」の場合、VRゴーグルの中に現実の物体はほとんど登場しません。上記の分類で言えばVRにあたります。

リアル×VR×ライブの可能性

MRが台頭する2021年の企画として敢えてVRを採用したのには前向きな理由がふたつあります。

ひとつめの理由は映像の自由度。「VRは現実世界の制約を受けない」からです。
MRのライブはステージに超現実的な物体を登場させることができ、演奏を鮮やかに彩ることができます。見た目にも実際のライブの延長にあるためわかりやすく、視覚的な面白さを維持しつつ配信に乗せることが可能です。
これは裏返すと現場の視覚的制約を受けるということです。実際の舞台に仮想物体が浮かぶのが面白いわけで、舞台の形状を生かしつつ演出を行うのが基本となります。
一方、VRにはこの制約がありません。無限遠の宇宙をホールにすることも、深海に沈みゆくコンテナをステージにすることもできるわけです。
この特徴はHello1103の身体性・現実性が薄い音楽と好相性でした。

もうひとつの理由は「現実と仮想の交点」にあります。
「Hello1103 Live:VR Experience」では、ライブハウスの迫力ある音響を活用して音楽を演奏します。このとき生まれる音楽の強靱さ・リアルさを言葉で表すのは難しいですが、脛まで揺らす大音量での聴取体験は、ヘッドフォンでのそれとは表現力が全く異なります。
音量のダイナミクスを大きく使えることで作りだせる快感、地鳴りのような低音でしか表すことのできない畏怖などはその代表例であり、SpotifyやYouTubeで音楽を届けるときに最も伝達に苦戦する部分でもあります。
ライブハウスでVRライブを演奏するとき、この音響そのものが「リアル」として現れてきます。
圧倒的存在感を持って現れてくる音響に制約のない仮想現実をぶつける。
「聴覚と視覚のクロスリアリティ」をHello1103は実現してみたいのです。

次回はVRライブシステムの技術解説を書きます。

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