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虹色の川蝉を追いかける - "Rainbow Kingfisher"リリースに寄せて

例年よりもだいぶ早く日本列島に訪れた梅雨前線。「記録的」という言葉を聞き慣れてしまうほど不安定な時代を我々は生きています。
いつ来るかわからない晴天を待ちわびて、雲の切れ間で息継ぎをする。そんな息苦しさが長く続くけれど、それでも、晴れ間の向こうに夏の気配を感じるだけでずいぶんときらきらした気持ちになったりします。

EP "Rainbow Kingfisher" リリースから2ヶ月が経ちました。
これからも多くの方に楽しんでいただけることを願っていますが、リリースから一段落したこのタイミングで制作当時の備忘録を兼ねてセルフライナーを記します。
解釈の固定や作法の強制が目的ではありません。バードウォッチングガイドのようなものと思ってご笑覧ください。

1. Rainbow Kingfisher

本EPの表題曲であるTr.1 "Rainbow Kingfisher"。
昨年の夏に大宮ヒソミネでお披露目して以降、ライブでは最後を飾ることが多い曲です。一年ほど演奏を重ねながらブラッシュアップを続け、ようやく音源化することができました。

この曲は非常に難産で、初演のさらに2年ほど前から何度もデモを作ってはボツを重ねたもの。
当初は "Kawasemi" という名前で呼ばれていて、初音ミクの歌が乗っているわりとポップなアレンジでした。その頃のデモがニコニコ動画に残っていますが、完成版とは全く違うトラックになっています。

先日、MVも公開しました。
カワセミの体色、飛翔のイメージを楽曲に合わせて抽象化した映像です。

日本でよく見かけるカワセミは茜の腹に瑠璃の背中というカラーリングですが、カワセミ科には他にも青紫に赤紫の差し色が美しいPhilippine Dwarf Kingfisher、上品な色合いのわりに頭髪がツッパっているTahiti Kingfisher、太ましい嘴がアンバランスで愛らしいカワセミ亜科のアカショウビンや、大柄で精悍なヤマセミなど、どれも非常に魅力的なビジュアルをしています。

2. Transparent Festival

不定期で行っているYouTube公開作曲から生まれたトラック。
この企画では毎回視聴者からお題を募り、その場の抽選でテーマを決めています。
この日のテーマは「夏の好きなところ」。
個人的にも夏はとても好きな季節です。遠く抜けるような空、音楽フェス、ぬるめのビール、凝ってるけど言うほど旨くはない豚丼・焼きそば。
ところが去年は件の騒動で軒並みフェスが中止され、会場には青空だけがぽっかりと残されてしまいました。
そういう寂しさをちょっと散りばめたつもりです。

3. Emma (CD版限定収録)

これからの季節に向けてEPの読後感を爽やかなものにしたく追加したトラック。狐雨、あるいはそれが通り過ぎた後。
前半のピアノはユカコが弾いています。

後ろで鳴っているノイズに立体音響のプラグインを使ってみました。
本トラックはステレオですが、それでも包み込まれるような音響効果を増幅できたと感じています。
イマーシブオーディオ(立体音響)の再生環境はまだあまり普及していませんが、先日Apple MusicがDolby Atmos対応を発表したことで、擬似的な形であれ多チャンネルのミックスを楽しむ時代が意外にも早く到来しそうです。
Hello1103としても関連の実験は続けており、先日から開始したVRライブ "Hello1103 Live:VR Experience" にも何らかの形で要素を取り入れられないか模索中です。

EP "Rainbow Kingfisher" 、これからの季節に最も馴染むEPだと思います。
Spotifyなど各種ストリーミングサービスでも一部楽曲を公開していますので、ぜひお楽しみください。


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