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傘ひとつで

家に傘が5本ある。ビニール傘は2本。日傘2本。あとはキャスキッドソンのしっかりした雨傘。雨嫌いだから折りたたみ傘なんか持ってない。最近はお客さまにもらったブルーの綺麗な雨傘もあるけど、それは自分の店に置いている。銀座でビニール傘をさして歩くのってなんだかカッコ悪いと、雨のときはキッドソンの傘をさしていた。今回久しぶりにビニール傘をさしていったらなんだかやっぱり少し落ち着かなくて、お店で誰かに渡す用に置くことにする。

お金持ちのお客さまが、雨の日にビニール傘でやってきた。思わず、めずらしいですねと声をかける。ビニール傘なんて持たないような方だったし、その人が使っている高そうな傘を知っていたからだ。その人は間髪入れずに「失くしたんです、あの傘」とにっこり言った。確かどこかブランド物の傘だった気がする。小さなビニール傘を店の外の傘立てに出し、わたしは自分の傘を差し出した。「ビニール傘なんて似合わない!これ使ってください!」ブランド物じゃないけど、綺麗でしっかりしていて大きな傘である。「いらないよ〜」とにこにこしながらその人はビニール傘で帰って行った。

ビニール傘を持っているのが似合わない人だっている。服や時計にお金を使う人が、傘にお金を使わないわけがない。傘ひとつでこんなに印象が変わるなんてことがあるんだ。わたしも気をつけようっと。

身につけている物で相手の見方が違ったりする。ディオールのハンカチーフひとつで。フェラガモのネクタイひとつで。ポールスミスのネクタイピンひとつで。靴下ひとつで。サングラスひとつで。それはもしかしたらタバコとかでもそうかもしれない。銀座を歩いていたらどこかのブティックのショーウィンドウに8万円くらいの灰皿が飾ってあって、思わず近寄って見入ってしまった。わたしはタバコを吸わないけれど、灰皿だとかジッポだとかといった小物は、いいな、素敵だなカッコいいな、と思う。

タバコの銘柄でその人がどんな人かなんとなく分かる、みたいな話を聞く。最近は電子タバコも増えたけど、あれってなにがいいの?タバコってカッコいいから吸うんじゃないの?電子タバコがカッコよく見える映画なんてどこにある。どうせ吸うなら煙燻らせてさ、すぱすぱ吸いなよ。足とか組んでさ。わたしは骨盤が綺麗なので足を組まないで有名なんですよ、ふふ。

どうせ身体に悪いことするなら綺麗な姿勢でやったらいいのに…



嬉しい!楽しい!だいすき!