今日のカテキョ予報

塾のチューターや個別指導、喫茶店やテレビ局バイトなど色々やってきたが何かが足りない。
そうだ、家庭教師をしよう。

「大手の犬になるな、お山の大将であれ」
をモットーに生きてきた僕が選んだのは、聞いたことのない小さな紹介会社。

名前や学歴、自分の長所なんかを適当に書いて登録。
長所の欄には、「昔から教えることが好きで、辛抱強い性格なので、基礎から丁寧にわかりやすく教えます!」なんて自分と正反対の架空の人物についてつらつらと書く。

これが功を奏したのか、次の日に担当者から生徒紹介の電話が。

依頼された生徒のプロフィールは、日○研に通う小学4年生の女の子で、4教科の平均偏差値は44。特に苦手な算数の指導をしてほしいということらしく、算数の偏差値を聞くと44という答えが。
「あ?」
と言いかけたが、なんとか我慢して細かい内容を聞き、依頼を受ける旨を伝えた。

電話を切った僕は、一度冷静になってみた。
小4って10歳だよな。俺は10歳の幼女と何を話せばいいんだ?イナズマイレブンか?
いや、女の子か。だったらあれか、菅田将暉をすんごい褒めすればいいのか。だったら。3年A組でも観はじめるか。
などと不毛な想像をしているうちに、ある一つの懸念が生まれた。

娘を攻略するより母親を攻略する方がはるかにむずかしい、ということだ。
小学生の算数なんて、ドリルを解いときゃ誰だってできる。偏差値44はお世辞にも頭がいいとは言えない。
頭が良くない小学生の母親は大体元ギャルだ。ギャルは大体20歳で子供を産むから今は30歳。30歳の元ギャルが一番むずいというのは説明するまでもない。

ギャルから母親へ、急激な変化に翻弄され、奴らは心身不安定な状態になる。自暴自棄になった元ギャルは八つ当たりという形で心の平静さを取り戻そうとする。
その矛先はおそらく能天気に鼻水を垂らしながら指導をしている俺に向くだろう。だが俺は、八つ当たりから逃げず、全身で受け止め、包み込むのだ。娘が勉学に励む環境を守るために。偏差値44という不名誉な現状から脱出させるために。それが家庭教師のあるべき姿だと思うから。

最後に、全国に沢山いるであろう30歳の元ギャル子持ち人妻にこんな言葉を送りたい。

「あなたは苦しんだ分だけ、愛の深い人に育っているのですよ」(瀬戸内寂聴)

おやすみなさい。

#エッセイ

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