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王さまとたね 6/8

  王さまは、お城のまわりをぐるぐる、ぐるぐるまわって、たねをさがしていました。みんなが帰ってきたのをみて、王さまはひと安心。
「よかった。よかった、みつかったんだね。ぶじでよかった、ほんとうに……。」
「ぼくがいちばんにみつけたんだよ!」
  さかなはくるりと宙返り。
「おやつにしようよ! うごきまわったあとは、甘いものがおいしいよ。」
  みんなは、テーブルのうえにたねをそっとのせて、たねを囲んですわりました。たねの声が聞こえるように、みんな小声で、みんな、テーブルに顔をよせています。こんなおやつは、はじめてです。
  クッキーをかじりながら、おしゃべりしていると、たねがぴょこんと飛びはねたので、みんなはたねをみつめました。
「ぼくは決めたよ。」
と、たね。
「ぼくは、土に入って、育とうと思うんだ。」
  みんなはすこしのあいだ、きょとんとしましたが、すぐに、
「たいへんな決心をしたのだね。えらいぞ。」
と、ものしりランプ。
「すてきだね!」
と、王さま。さかなは、しばらく、だまってかんがえこみました。そう、たねが土にいるあいだは、出発はさきのばしです。
たねはちらりとさかなをみると、ほほえみました。
「だからね、ぼくがまた地上に出てくるまで、まっていてよ。」
  さかなは、
「一本とられたな! しかたない、まつさ。」
と、肩をすくめました。王さまとランプは、ふたりのひみつを知りません。ですから、このやりとりをきいて、ふしぎそうな顔をしました。さかなは、ぱちりとウィンクして、言いました。
「ぼくたちはね、ひみつのはなしをしたんだよ。つまり、すっかり友だちってことさ。」

今日は明日、昨日になります。 パンではなく薔薇をたべます。 血ではなく、蜜をささげます。