こんにちは世界

文章書くの好き。文章読むの好き。妄想するの好き。妄想されるの大好き。好きなことばっかりで困りますが、好きなことばっかりで困ってる自分を最近、やっと好きだなあと思えるようになりました。
固定されたノート

セルフライナーノーツ:愛を犯す人々

「私の物語には、病も死も事故も、暴力も、事件さえもない。ただ、出会いがあり、恋があり、愛があり、セックスがあるだけだ。私はそれを、けれども、とても誇りに思う。美しい人たちがするという、ただそれだけで見違えるような、ありきたりな仕草の全て。ここには、典型的に美しい構図と、よく知られた美しい出会いとがあり、そこから始まる特徴のない美しい恋があり、誰もが一度は求めるような満ち足りた、美しい愛の瞬間があり

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春を謳う鯨  ⑦

◆◇◇◇ ⑥ ◇◇◇◆

なに…?

ううん、なんでもない。私、せっかくだから、旗艦店で指輪、選びたいな…。

楢崎くんは鈴香を見た。鈴香が楢崎くんを見つめ返して、ねえ、私にもすごく、決心がいることなんだよ、大切に、してね、と、呟くと、楢崎くんはしかめ面になって、これ以上、どうやって大切にしろって言うの。わがままも大概にしなよ、と、ため息をつくように、苦笑した。

◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆

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春を謳う鯨  ⑥

◆◇◇◇ ⑤ ◇◇◇◆

楢崎くんは飲み終わった缶をかたり、とサイドテーブルに置いて、夜景を見つめたまま、膝のバスローブを抑えていた鈴香の右手に、そっと、自分の左手を重ねた。

鈴香に残る選択肢が俺以外にはないように、俺は精一杯のことをすることに決めた。明日起きたら、戸籍謄本を取り寄せる書類を書いて、指輪を買いに行こう。

鈴香はチューハイの缶を傾けた。もう一滴も残っていなかったけれど、鈴香は残り

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春を謳う鯨  ⑤

◆◇◇◇ ④ ◇◇◇◆

楢崎くんはスープのお代わりを出したあと、鈴香の肩をぐっと掴んで、アクティブレストだよ、飯も決めてあるし、大船に乗ったつもりでね、と、自分はもう座らずに、済んだ皿を下げ始めた。
(…)
雨が止むと、柔らかい日当たりだけが自慢の、鈴香の小さな1DKはまるで、鳥籠のように感じられた。

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春を謳う鯨  ④

◆◇◇◇ ③ ◇◇◇◆

(…)  迫り上がる絶頂感に耐えていた鈴香が、小さく頷くと、楢崎くんは鈴香の左脚を跨いで右脚を肩まで持ち上げて抱え、叩きつけるように、腰を使った。鈴香は声が上がりそうになるのをこらえて、口を掌で塞いだけれど、それを見た楢崎くんはいっそう激しくして、追い詰められた鈴香が声を漏らすと、満足げに微笑んだ。楢崎くんは、鈴香の手首を掴み、唇を奪って、そのまま鈴香を抱きしめて、体を震

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春を謳う鯨  ③

◆◇◇◇ ② ◇◇◇◆

あー…電気暗くてよかったわー。いま、すずの顔見たら絶対ヘコむ。や、思ってるだけで実行しないのが、クッション中山のセールスポイントなの。むしろごめん。いいんだよ。気にしないで、ほんと。

鈴香は、心の全面にせわしなく明滅する警告灯の赤色に圧倒された。激しい違和感と、うっすらした嫌悪感と、戦いながらも、奏太の薄い唇に自分の唇を押し当てた。

こういう理由で目を閉じるキスも、あ

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