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セルフライナーノーツ:大人の領分①茅瀬

「『あなたは何も失わない。ただ、私を受け取るだけ。』。愛とは何かというのは人類史的見地からも長年答えの出ない質問で…それは今後もそうだろう、私なりにけれど、答えを出そうとはしていて、それは多分、幸せで満たされることなのだと思う。愛というものが基本的には与えるものではなく受け取るものだということの真相もこれで説明できる。愛する相手が幸せで満たされるよう努めることはできるかもしれないが、愛とは自由なものだ。その自由とは大きな、強い自由であって、愛する者には、相手を愛される者にすることさえできない。つまり、愛する振る舞いをすることはできるが、それだけで愛が存在するわけではないのだ。この動詞は、他動詞のようでいて働きかけず、とはいえ、自動詞のようでいて対象なしには使われえない、名詞から派生したまがい物の動詞で、そして愛という名詞は主体と主体との状態を示すものだ…そういうわけでつまり、私たちが愛し合っているという状態は、私たちが愛されていると感じあっている状態に他ならない。だからこそ、愛する喜びが存在しうるのだ。それは、私が愛するとあなたが愛される、という喜びであるのだが、受動態が動詞自体の能動性を握っているというこの動詞の独特の構造が理解されなければ、愛し愛されることは奇跡ではなく、単なる機械的な態変換に堕することになるだろう。愛する、と、愛される、とは、見た目とは裏腹に、なんの結びつきもないふたつの動詞なのだから、これが愛という名詞によって結ばれることは、起こりえないという意味で真実、奇跡であり恩寵なのである…私があなたを愛することで、あなたが私から愛される。一体これ以上幸福な状態など、どうやって想像できようか…?」


日記からの、引用です。

今日は明日、昨日になります。 パンではなく薔薇をたべます。 血ではなく、蜜をささげます。