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先取り学習のアドバンテージはあるのか?

中高一貫の私立中学に通う中2の妹が数学の勉強を教えろという。
見ると、整式の除法とか、対称式とか、二重根号の外し方とかをやっている。まだ、中2の一学期というのに、完全に高校数学の範囲だ。問題集も4ステップ問題集を使っている。focus goldとその演習ノートが配布されているところからすると、夏休みの宿題になるのだろう。

自分は小中高と公立だったが、中2のこのころは何をやっていただろうか? 因数分解の前提である乗法公式も知らなかったし、√ももちろん知らなかった。これらは中3で習ったはずだ。

この勢いだと、高校数学は高校1年で終わってしまいそうだ。先取りしているだけでなく、並行して、4ステップやfocus goldなどの演習ノートが宿題とされて、しっかり演習もさせられる。高校数学の範囲が終わった後は、教材は演習教材となり、復習をしつつ、みっちり演習を積んでいく。英語も悪名高きニュートレジャーを使っており、中学のうちに高校英文法の範囲は一通り終わるだろう。

自分の高校の時はどうだったか? 理系の数3の微分積分とか、日本史、地理とか、物理、化学の後半部分とか、高3になって新しく習い始めるものも多かった。日本史なんて共通一次試験の時点でまだ戦前の話をやっていた。これでは公立勢が太刀打ちできるはずもない。

しかし、実感としては、私立の超トップクラスの受験生には太刀打ちできないとしても、有名大学合格を目指している程度の受験生とならば、高3の一学期の段階で、公立勢でも遜色なく戦えたという印象だ(私学出身の友達も、公立をバカにしていたが、受験生になってみたら、こんなに強いとは思わなかったなどと言っていた)。

模試は公立高の進度に合わせて範囲が設定され、文系なら範囲は一応終わっているから、高3の一学期の段階でも、私立勢の先取り学習のアドバンテージはそれほど大きくないにしても、演習量という点では私学と公立では大きな差があったはずだ。それでも公立勢に遜色がないのは、先取り学習をして演習を積まされても、しっかり身についている学生はそれほど多くはないということだろう。
しかし、結果として身についていない私立高生もサボっていた訳ではあるまい。むしろ、息子のような生徒は少なく、ほとんどの生徒は学校の課題はこなしていたはずだ。
では、学校でみっちり勉強させられたにもかかわらず、あまり身についていないということをどう見るか?
個人の資質の問題と言ってしまえばそれまでたが、学習には学ぶのに適切な時期というものがあるように思える。
小学生のころは、恐ろしいほどの記憶力を以って何でも記憶することができた。そこでは、知識は呪文のようなもので、内容を分かっていなくても問題を解くことができた(こういう問題はこのように解けばいいと教われば、何も考えずにそれを実践することで事足りた。)。これが高校に進むと学習内容が増えていき、そのすべてを呪文のように使える知識として記憶することは困難になってくるし(中にはできてしまう人がいるが)、知識を呪文のように使うだけでは、対応できないこともでてくる(暗記だけで東大に合格する強者もいるにはいるが)。これを補うのが「理解」で、「知識」から「理解」にシフトしていくということだ。

(公立)中学の学習内容は暗記だけで足りるが、高校になると(普通は)理解が必要になってくる。しかし、理解のためにはある程度の精神的な成熟が必要だ。先取り学習をさせた場合、精神的成熟は十分だろうか?
妹の中学では、中2で、文字を含む絶対値記号をはずす問題をやっているが、絶対値記号内がプラスかマイナスかで場合分けすることを、小学生的に、解法のパターン・呪文(こういう場合は場合分けする)として暗記しようとする生徒と、どうして場合分けが必要になってくるのかを考える生徒とに分かれてくるように思える。


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