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第53夜 街灯の下でベティがキスをした

街灯の下でベティがキスをした
垂れた耳した黒い老犬
眼球、関節、口蓋…ひとつひとつ体のパーツが機能を失い
かつての身のこなしを見せることも無くなったが
まだ毛艶が保たれている分、老いぼれては見えない

早朝の無駄吠えは増し
他はずっと寝ているけど
むしろ愛着は増し、意識することも増えた
13年間、5000回を超える朝夕の散歩を共にしたが
ベティの記憶には何が残っているのだろう
右隣の友として私は必要とされているのか

少し遅くなった夜の散歩
ベティはずっと我慢していたようで歩き出すと
すぐに家の前の側溝に小さいのを、
さらにしばらく歩き、
先の曲がり角の街灯の下で大きい方を排泄をした。

私は回収すべく古新聞を1枚取りしゃがむ
いつもはその間じっと待ってるが
今日は何か違う様子でウロウロし
そしてしゃがむ私の頬にキスをした
湿ったキス
でも間違いなく愛のキスだった。

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