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第39夜 鎌倉大学是空学部

「地球が出来て何年と言われている?
「46億年です」
「では宇宙は?」
「138億年です」
「92億年の間に地球を含む膨大な星を生み出し、その後46億年でさらに膨張拡大してきたわけだ。さて、一億年は百年の何倍だ? 岩村くん」
「100万倍です」
「そうだ、大雑把に人間が100万世代入れ替わってやっと一億年だ。岩村くん、宇宙の尺度では君の今この時、いや人生がいかに瞬間であることがわかるかね」
「ええ…、実感は湧きませんが」
「実感? 君は何から出来ている?」
「細胞…」
「いやさらにその根元は?」
「素粒子です」
「そうだ。では素粒子はいかに存在する? 清野さん」
「粒子と反応して消滅させる反粒子は宇宙創生時には粒子と同数存在しましたが、その後cp非保存が働き、現在は圧倒的に粒子だけが存在するため、理論上は永遠に存在し続けます」
「正解。つまり人間を構成していた素粒子は死後物質構成から解かれ、漂い存在する。はずだ」
「あれ、なんだか自信なさげですね」
「当たり前だ。誰も見たことがない界だからな。私も岩村くんのように実感がわかない。粒子の存在については物理学界にお任せして、私たち是空学界はあらゆる想定をしていきたい。まずは次元に縛られない発想からだ。11次元からイメージしていこう」
「明薫教授、4次元すらイメージできません」
「過去未来をかなぐり捨てるんだ。自分がなんだってできるということから始めるんだ。手始めにユカタン半島のティラノサウルスを触ってみなさい」
「いきなりですか? ええ、イメージできました。映画で見たものの再現でしかないですが」
「それでいい。じゃあ、次は月の裏側でスキップしてきなさい」
「教授、そもそも無重力だから無理でしょう」
「そうじゃない、それをも超えたイメージが必要だ。粒子は量子だから確かに重力の影響は受けるが、そもそも量子は最小状態か? まだそのマトリョーシカにはより小さな構成単位が控えているはずだ。それも物理学界に任せよう、では清野さん、アルファケンタウリでエイリアンたちとの宇宙環境会議に出席してデブリ処理の採決をしてきて欲しい」
「教授、そもそもデブリなんて地球人だけの仕業ではないですか?」
「だからだ。謝って、許してくれるか確認するんだ」
「私たちが宇宙で動き回っているのなんて、海でいえば砂粒一つにも及ばないのではないですか?」
「自然生成された砂が散らかる分には問題ないが、勝手に作り上げたものは小さくてもゴミだ。散らかってしまったんだから謝ろう」
「誤ってしまったら非を認めることになってどう出てくるかわからないですよね?」
「岩村くん、それもいい方向に行くことをイメージするんだ。我々の技術水準では回収が追いつかないことを正直に言ってみる。相手が手を貸してくれる時には11次元レベルの処理が見られるはずだ」
「処理過程は確認出来ないのでは?」
「清野さんご明答。その理由を説明してみて」
「デブリそのものは我々地球人が網膜に投影されたものを脳で再現しているからです。物質を透過する素粒子は分子の結合した物質はなんの障壁にもならないんです。つまり、私たちが目を閉じてすべての感覚を解放した時の状態が宇宙なんだと思われます」
「素晴らしい! そろそろ時間だ。次回は意識素粒子ネットワークを体感しよう。では」

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