過去に読んだ本

男は近所でも評判の倹約者であった
朝は早くから雑貨店開け、夜は街で最後に明かりが消えるまで仕事に熱心だ
仕事終わりの楽しみといえば近くの屋台でおでんを肴に日本酒を一合飲むことだった

妻と二人暮らし、店には事務員一人を雇いお客の相手をさせている
ある日一人の女性客が店に入ってきた
最初は気にも留めなかった
女性は一週間ほどしてまた店にやってきた
何を買うでもなく着流しの服を着ていていつも、なにか気だるそうにしていた

ある日、口紅を一本手にして男に値段尋ねる
手持ちがないのでまた次にするといい帰ろうとした
男は妻と事務員の目を盗み女にその口紅と香水を紙袋に入れて押し付けるように渡した
お金はまたでいい
ある時に払いにくればいいからと小声で言うと女は少し気の毒そうな顔をして店を出て行った

男は女のことが気になった
今度はいつくだろうか気になり店の戸口ばかりに気がとられている
しばらくして女が店に訪れ金を払いに来たといったが男は受け取らなかった
あれは俺からのプレゼントだから気にしないで取っておきなさい

ある日、街で女を見かけ、後をつけていった
古びたアパートの一室に入っていった、ここが住まいなのだと思った


次の日、店の高級な香水を紙袋に入れ、アパート訪れた
女は暫くして昼間なのに眠たそうな顔でドアを開けて男の顔を見てビックリしていたが、すぐに落ち着いた表情になった
女はキャバレーで働いているのだという

男がアパートに通うようになる日がだんだん増えていった
やがて
女がテレビが欲しいといえばすぐに買い与え
弟が病気していて治療費に三十万円必要だというというと俺が出してやると言って銀行から下して渡した
もっと、いいところに住みたいといえば不動産を駆け回り都合のいい場所のアパートを貸し与えた
生活費が足らないといえば数万円単位で渡していた


女が働いてる間は気がきでなかった
夜になると店でお客に体を触られたり、飲みに誘われたりしているのではないかと気になって眠れなかった
そして、気になりだしたらたまらず自分が店に出掛け女を見張るようになった
もう毎晩のように店に通うようになっていた

妻も男の金の使い方に気づき始めていた

これは、松本清張さんの(黒い画集)の一遍なのですが、乱文をご了承下さい!

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