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しょぼくなくしょぼい

えらいてんちょうさんの『とにかく死なないための「しょぼい投資」の話 お金がなくても生き抜こう』が書店で平積みになっていて、表紙のイラストが北村人さんだったのもあって、買ってしまいました。「投資」なのに「お金がない」のね。それはどういうこと? とついつい。河出書房新社さん、タイトル勝ちですね。



というより、著者の「えらてん」さんのことを、今日まで知らなかったので、全然表紙からは内容が想像できなかったのですが、読んでいくうちに、あーそういえば書店店頭で『しょぼい起業で生きていく』の表紙見た覚えあるなー、とぼんやり思い出したのでした。

「しょぼい投資」の方は、つまるところ、ひとを大事にしましょう、という結論だと読みましたが、合ってますかね? そこに話が至るまでが、やや懇切丁寧過ぎて、というか、ちょっと冗長な感じがいたしましたが。
ここのところ数年、そこはかとアーリーリタイア感があるひとたちがこぞって、「これからはお金より人間関係、信頼が資産になるからね」と口を揃えて言っていて、はーそれは結構なことであるな、と思っていたのですが、えらてんさんも、そういうことを言いたいようです。今は世界的に「金余り」だしね。COVID-19で輪をかけて金融緩和が続くようだしね。じゃぶじゃぶしているうちに、お金の価値は目減りするだろうしね。と言っても、「しょぼい投資」本で想定されている、「もう死ぬしかないかも」と今思っているひとの手元には、お金はじゃぶじゃぶしていないんだから、世の中やっぱり何か間違っているのではなかろうか。
とはいえ、「他者と信頼関係が結べてれば、今の日本で飢え死にすることはないから、安心して!」という主張は、もっと広く世の中に受け止められてもいいような気がします。COVID-19で仕事を失ったら、子どもを育てる身としてはどうしたらいいのか、と、わたしも今うっすら思っていますからね。

続けて勢いで読んだ『しょぼい起業で生きていく』から伝わってくるのは、かなり幅広いタイプのひとを懐深く受け止めて、居場所を提供する、という、おそらくえらてんさんの「才能」こそが、他者との信頼関係を切り結び、投資を呼び込んでいるようである、ということです。あと、数字が好き、って書いてたね。これができれば、しょぼくない起業もできそうだけどね。だいたいは、数字が読みきれなくて失敗するんだからね。

さらにもう一冊、せっかくだからと読んだ『しょぼい生活革命』の冒頭で、対談相手の内田樹さんもびっくりしていたけれど、えらてんさんのご両親は東大全共闘で、彼は共産制コミューンで育ったというから、そもそも「所有」ということについて、ちょっと違った角度の感覚をお持ちなんだろうなあ、と思った次第。

自分も、東大全共闘で大変有名な方の元で9年ほど働き、よーやるなーという感想しか持てないくらい、いろいろお金の使い方には驚かされたので、あまりえらてんさんの「しょぼい」については、真に受け過ぎず、でも共感しつつ、これから出るご著書も読ませていただきたいと思った次第です。

つまるところ、えらてんさんは、しょぼくなくしょぼい起業家なのでした。

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