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ぼくらの100日モラトリアム(35/100)


72日前(8月15日・火)

朝、とうもろこしピラフを作る。
そこそこ美味しく出来た気がしたので、普段はメシウマな夫には敢えて聞かないが、試しに「これ美味しくない?」と聞いたら反応が鈍かったので、好みではなかったのかも。
個人的には、前日の残り物や野菜と合わせて、かわいい和風ワンプレートブランチになったので満足。

引き続き天気がグズグズしているので、昼間は自宅待機。夜はずっと家にいるのにも耐えかねて、新大久保の韓国焼肉屋(わら火)に行く。
昨日も新大久保行った気がするとかは気にしない。ずっと新大久保の焼肉に行こう行こうと言っていて行けていなかったので。

人気店ということで入店時には予約なしで30分強は待ったのだが、夜8時半入店の我々の後、碌に人が入っていなくてやきもきする。ふつうに美味しいし、酒を飲んだってそこらの有名焼き肉店よりリーズナブルなのに。お盆だからなのか。景気が悪いのか。
それについて夫と話をしていたら、「若者は我々が思っている以上に金を持っていないのではないか」という結論に達してしまって世知辛い。
だから新大久保にはカフェが多いのではないかという……。だって夜ご飯時なのに、ご飯屋より駅前のスタバに人が多い。キムチより青唐辛子より何より世知が辛い。

酒が飲めない妻(もともと、といえばそうでもあるが)の前でワインを一本開けた夫が、帰宅するなり横になりたそうにしているので、なだめすかしてさっさと風呂場送りにする。これは横になったら即寝しちゃうやつだからダメ。
その間、私は近所のコンビニへ行き、あべ養鶏農場のプリンを買う。だって夫が「プリンを買ってきてくれるなら、シャワーをちゃんと浴びる」などと可愛いことを言うから、つい。
固めのプリンでは無かったけれど、柔らか系とはまた違う、密度のあるプリンで満足。


71日前(8月16日・水)

今日は夫が休み明け初日の仕事で、私は夏休み最終日。
「君たちはどう生きるか」を観たかったので街に出る。タイトル、「僕たちはどう生きるか」とどっちだっけ、といつもなってたけど、これ多分どっちでも問題ないな。というのがこの映画の素直な感想。もののけ姫に近いものがある。
とはいえ、この人にここまでやりたい放題されたら、僕たちは一体どうすれば……と、とても腹が立った。あなたにそれをされたら、世の中の自称クリエイター(悪い意味ではない)は、みんな出すとこ出して出るとこ出ないと、という焦りに襲われてしまうよ。

夜、寝る前に体の各所が痛くてヒーヒー言いながらストレッチをしていたら、夫がマッサージしてくれる。してくれたのだが痛すぎる。
でも、このくらいだよ? と、別部位に同じ力でやって貰ったら全然痛くなくて、特定の場所を押された時は激痛が走る。人間マインスイーパ、という造語が頭をよぎった。
こんな、体の一部を押されるだけでも痛いのに、私は出産の痛みに耐えられるのだろうか。


70日前(8月17日・木)

産休に入った日のことを考える。平日休みなんてわくわくするなあと思うけれども、わくわくするほど元気でいるだろうか。臨月の時の体調は、人によってかなり違うらしい。

とりあえず、元気でいる前提で、『いつかティファニーで朝食を』に出てくるご飯屋を調べてみる。平日にゆっくりモーニングを食べに行ってみたい。
うろ覚えの記憶では、毎回おしゃれなカフェに行っていたような気がしたが、和食・中華・エスニック・地方と結構モデルになった店もばらけていたようで、そもそもそんなに行ける場所も多くないことが判明し、勝手に残念な気持ちになる。


69日前(8月18日・金)

メルカリを開き、Paul Smithのワンピースを落とした。
買うかどうかずっと悩んでいた、23日に迫ったリモしるLIVE用の勝負服である(Youtuberが横アリ埋めるなんて凄い時代になったなあ)。
何故迷っていたかというと、単に予算の問題なんだけど、以前軽い気持ちで買ってしまったカーディガン(86日前(8月1日・火)参照)と合わせる用に考えていたので、やっぱりそのワンピしか考えられなかった。
新しい服を買わなくてもイベントにはいけるけど、何かそのために用意したとびきりのアイテムを身に着けていると、メンタルの充足度が段違いなのを知っている。

本当は、引っ越し・出産を控えているから、財布の紐は締めるに越したことはない。
もっと具体的に言えば、去年の冬の終わりに成婚・結婚相談所退会(ちなみに成婚料=退会料は20万円だった)、春に引っ越して同居開始、夏に結婚式実施。
今年の春に婚約指輪・返礼品の贈呈(!)(なぜなら形式にこだわる夫氏が、予算の関係で順番が前後するが婚約の儀も行いたいというので)。そして秋の予定、引っ越し・出産。と、ここ最近は出費の記憶と予定しかない。

無暗矢鱈にお金を使うのは間違っているけれども、ここぞというところではきっちりお金を使いたい。特に推しに関することであれば、猶更。
そう思うと、仕事が大嫌いで大嫌いで仕方ない私でも「働き続けるかぁ~」という気持ちに僅かながらなるので、昨今の女性の社会進出による少子高齢化は、推し文化が加速させている面もあるんじゃないか……。

まあもっと突き詰めて言えば、仕事が先か、推しが先かについて議論の余地がたくさんある。


68日前(8月19日・土)

Zoomで普通分娩の講義と和痛分娩の講義の二つを受ける。
本当は、前から少しずつ受ければ一日に二つも講座を受けなくていいのだけれど、体が動くうちに買い出しだ、遊びに行きたいなどとしている間に猶予はなくなっていたのだった。夏休みの宿題を溜める子供みたいだ。モラトリアムの宿題を溜めるいい大人。

夜は、麻布十番のあみ城へ行く。
夫が知り合いに連れて行ってもらったという店で、土鍋ご飯が凄く美味しいから、と、悪阻が終わったらおこめ大好きクラブの私を連れて行ってくれる約束をしていたのだ。
フルコースを予約してくれていたのだけれど、前菜~メインまで美味しくいただいた。そして私的メインののどぐろの炊き込みご飯は、とっても美味しかった。

その中で、話題はなぜか親の介護の話に。
祖父が老人ホームに入って何か月もしない内に亡くしてしまった夫は、ホームより実子に見てもらうほうが安心だし幸せではないか、と言うが、老人ホームに入るまで祖母を自宅で介助(あくまで介助レベル)していた両親を見ていた私としては、それで自分の生活も成立させられる気がしない。
親の面倒をなるべく自分たちで見ることは、自分を犠牲にすれば可能だと思う。だけど、今は親とうまく付き合っているけれど、私はそうではない時間も長かったし、親の面倒は正直この両手には余り過ぎる。

私だって知っている。祖母もはじめは短時間のデイサービスも行きたがらなく、ホームに入居してからも「帰りたい、帰りたい」と言っていたことを。
また、入居したばかりの頃は、その生来のプライドの高さや、自分はまだしっかりしているのに、という気持ちも手伝い、手足の運動がてら入居者が集まって行う簡単なレクリエーションにも参加せず、入居者にも馴染めなかった姿とか。でも、自分だってそうなりそうだと思ったこととか。生活エリアが狭まったせいか、どんどんボケが進んでいく様子も。

プロに預けて目を離して生きるのと、自分を犠牲にして目の届く範囲において置くのと、どっちが幸せだったかなんて、いつも結果論でしか判断できない。それすらも、残された者の憶測でしかない。

二次会に繰り出そうか悩むも、結構いい時間だったので、ロバーツコーヒーで軽くジェラートを食べて帰宅する。


67日前(8月20日・日)

読みたいマンガがなくなってしまったので、LINEマンガで『マスクガール』を読んでみることにする。主人公にどうにも嫌悪感があるが、別に見た目でも性格でもないがなんだろう…と考えると、仕事そっちのけで行動を起こしているからではないかと思いつく。
昔、ぐりこにロッキーと私は仕事が出来ない人にキツすぎる、と言われたことを思い出した。


66日前(8月21日・月)

「リアル推しの子」がTwitter(現X)のトレンドに入る。そもそも言葉の定義が違うなぁと思いつつ、意味もなくツイートを見ていると、1人のグラビア写真を時系列で追い、へその形が変わったらからこのグラビアアイドルは○年~‪✕‬年の間に子供を産んだはずだ、と分析するツイートが現れてoh......となる。
確かにへそは腹が大きくなれば広がりめくれて元の形に戻らないかもしれないけど、それを指摘して何がしたいんだ。
これは、女子アナの化粧ノリで生理周期を当てるのを趣味にしている人を見つけた時以来の脱力感。

応募期限が過ぎていたが、自治体に問い合わせたらぜひ今からでも応募してください、と言われた出産応援クーポンの再配達依頼が来てほっとする。
家計が助かることよりも、これで夫に怒られないということに安堵している。


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