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Somewhere Far Beyond 2018-2021

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ハーミットインというスモールビジネス/ホビービジネスのオーナーとして。趣味人として。息子として。父親として。そして一人の人間として。創作のこと。今まで出会ったカッコいい大人たち。… もっと読む
「フルーツジュースでU.S.A.」「ゾンビに負けるな、クリエイター」「オールドスクールファンタジー… もっと詳しく
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「Somewhere Far Beyond 随想集2018-2021」総合もくじ

イントロダクションハーミットインというスモールビジネスのオーナーとして。趣味人として。息子として。父親として。そして一人の人間として。 俺が今見ている世界、今まで経験したこと、今考えていること、ホビーや創作について思うこと、あるいは素晴らしい思い出、恩義を授けてくれた人たちについて語るエッセイを、不定期に『ハーミット・カウンシル』でしたためてきた。 『ハーミット・カウンシル』は、『ミニチュアペイント大全』を含むオールドスクールファンタジーミニチュアにまつわる様々な情報が収

ゆきてかえりし物語:ハーミットイン創業にあたって

ようこそ。 俺は、小さなホビービジネスを日本で始めることにした。その経緯を書く。 ハーミットインを始める前の話知らない人も沢山いると思うから、ここから話そう。俺は以前、ゲームズワークショップの社員だった。考えてみれば、1997年に俺がイギリスに渡り、「ウォーハンマー入門/趣味人への道」を仕上げた時から、実に20年の歳月が流れたことになる。ガキの頃からウォーハンマーとシタデルミニチュアが大好きで、日本に紹介したいばっかりにイギリスへ移り住んだ20歳の俺は、ゲームズワークショ

ノストラダムスの天気予報

天気というものは面白いもので、これを学問として研究するエライ人たちの理論とか膨大なデータとか、フンジャカ・レーダーみたいなものを駆使して観測記録を出す公的機関とかが日本にもある。それらのデータを元に、世界中のお天気専門家が、自身の理論を加味して独自に予測を発表するのだ。世界各国で天気予報は大流行してきたが、ここ100年ほどこの傾向は変わっておらず、世界中のあらゆるメディアで、有象無象の気象情報が毎日何度も発信されている。その熱狂は衰えない。

初給料で買ったもの

俺がはじめて会社員として給料をもらったのは、1997年10月24日の金曜日、通貨はイギリスポンドだった。給料を払ってくれたのは、イギリスのゲームズワークショップという会社で、俺はその会社が作っているミニチュアとゲームが大好きだった。大好きすぎて日本に広めたいばかりにイギリスに渡ったわけだが、俺が初給料で買ったのは、実はミニチュアではない。

校長先生ありがとう

小学校で校長先生が勉強を教えてくれたことはなく、個人的に話したこともない。朝礼でためになる話をしてくれるお爺さん先生、ぐらいの認識でしかなかった。正直言って、顔も覚えていない。 ただ、他の子達はバカにしていたが、俺は、校長先生の話を聞くのが好きだったから、真面目に耳を傾けていた。大人になった今でも、毎晩必ず瞑想をするのは、校長先生がいつかの朝礼で話してくれたからだ。 俺が小学校を卒業するとき、校長先生が卒業生全員に手書きのメッセージを渡してくれた。その内容を、俺は一字一句

昭和でハードボイルドで

俺は探偵物語が大好きだ。 まず、主人公がカッコいい。エピソードが毎回面白い。お約束は守る。でも飽きさせない。この時代のドラマがほとんどそうであるように、シリーズ中盤すこしダルくなるあたりも、人間らしさを感じて最高にいい。 そして登場人物がカッコいい。食い物はうまそうで、誰も彼もがタバコを吸っており、バイクはノーヘル、車はシートベルト着用なし。男も女も服装がカッコいい。街もカッコいい。デザインとフォントと色がカッコいい。車がカッコいい。食器がカッコいい。 なにもかもがカッ

茶を一服

俺はよく茶を点てる。毎日という訳でもない。気が向いた時だ。 俺に茶道の心得はなく、茶器を視る目もなければ、千利休のような茶室もない。和室はあるけど、茶を点てる設備はない。戦国武将のように、戦乱の世において心の平安を求めているわけでもないし、茶道家のように、高度に様式美化された教養として嗜んでいるのでもない。 それでも俺は茶を点てる。なぜか? うまいからだ。そして心が落ち着き…パワーがみなぎる。

オールドスクールファンタジーは古いのか?

オールドスクールファンタジー。「Old school」と言う、“古き良き”みたいなイメージの語が入っているため、「過ぎ去った過去を偲びながら、当時を知る人たちだけが楽しむ、懐古的ファンタジーコンテンツ」に思えるかもしれない。 けど、俺はそうは思わない。ハーミットイン開業宣言以来、俺は一貫して「オールドスクールファンタジーは懐古趣味や懐かしコンテンツじゃない」と言い、「現在進行形がキーワードだ」と言っている。 もちろん、オールドスクールと言うだけあって、その源流は古い。本当

歩きまわるといいアイデアが出る

俺が好きなものはたくさんあるけど、散歩はそのひとつだ。ランニングとかジョギングとかトレッキングとかウォーキングとか、そういうシリアスなものではない。ひらすら近所を歩く。歩き回る。そう、散歩なのだ。 とはいえ、ご近所の住宅街を巡るのではないし、おきまりのルートがあるわけでもない。お気に入りの散歩コースは確かに出てくるけど、毎度同じだと日課みたいな感じがしてきて飽きるので、今日はこっち、明日はあっちと、毎日バラバラなコースを歩く。足が向いたところへ行く。自由。

ナベさんのラーメン

町内に住んでいたナベさんは、横山剣をちょっと細くしたような顔で、庭のある一軒家に住んでいて、カッコいい車に乗っていた。ロックンロールが好きで、いつもタバコを吸っていた。ナベさんには子供が二人いて、犬が大好きな奥さんと暮らしていた。ナベさんは父と仲がよく、その絡みから、俺も随分かわいがってもらった。 ある夏の土曜日。俺が部活の朝練を終えて家路を急いでいると、道でばったりナベさんに出くわした。ナベさんは買い物帰りのようで、近所の食料品店「ファースト・モリタ」の袋を下げている。俺

ねあかり

子供の頃、部屋が真っ暗だと眠れなかった。それは、部屋のあかりを消すと、真っ暗なはずなのにだんだん周りの物が見えてくるのが、たまらなく怖かったからだ。これは目の構造がそうなっているせいなのだが、そんな事を当時は知るはずもなく、祖母に泣きながら「くらくなると見える」と訴えた事もあったようだ。 そんな俺に安眠を約束してくれたのが「寝灯(ねあかり)」である。ほら、部屋用の蛍光灯についてくる「豆球」。何度かスイッチ切り替えてるうちに、小さくて、オレンジ色に光るのがあるじゃない? あれ

音をたのしむ

俺はミニチュアが好きで、文章を書くのも好きだ。そんな訳で、目とか指とかを、だいぶ酷使していると思う。ミニチュアをペイントしたりマイコンで文字を打ったりする間、あまり使わない感覚器官がある。耳だ。 製作や創作に没頭する時、俺はいつも音楽を聴く(今は、マイケル・ロメオの新譜War of the Worlds Pt 1を聴きながらこれを書いている)。静かなところの方が集中できる人もたくさんいるだろうが、俺の場合は音楽が…ヘヴィメタルが必要だ。 音楽は素晴らしい。とはいえ、音楽だ

エリーゼのために

ブルボンのお菓子が最高にうまいことは、すでに周知の事実だ。 「懐古なだけ」「思い出補正だ」「今のスイーツについていけてないだけ」などど負け犬たちがいくら吠えても、俺たちはブルボンがうまいことを知っている。ヘヴィメタルが決して死なないように、ブルボンもまた不滅なのだ。 ブルボンの豪華絢爛たるラインナップは、ホワイトロリータに始まり、ルマンド、バームロール、チョコリエール、エブリバーガー、きのこの切り株、そしてチーズおかきなど、枚挙にいとまがない。甘いものばかりかと思えば、た

時間はある。時計はない。

俺の生活空間にないものがある。 時計だ。 学生時代は腕時計をいつもしていたし、部屋にも時計があった。でも現在の俺は、家に時計を置かない主義で、ビジネスシーンでの交渉など、必要な時以外は腕時計もしない。当然ながら、俺のマイコンやスマホには時計がついているから、必要な時は確認する。でも、なるべく時計は見ない。できたら見たくない。家に時計は必要ない。 どうしてこうなったのか?