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ペイント大全ショウケース:ゴブリンのまじない師 パート4(赤紫の頭巾、目、口、顔の仕上げ、生命感と加齢の表現)

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イントロダクション

よくぞ来た。今回のペイント大全は『ショウケース』…つまり、俺がどうミニチュアを塗り込んで仕上げていくかを順序立てて紹介していく。前回に引き続き、「ゴブリンのまじない師」を進めていこう。

前回はオウガの皮をなめして作った革のローブコートがひと段落。

今回は、まじない師の被る頭巾フード、続いて顔をじっくり塗り込んでいく。それじゃあ、始めようか!


頭巾フードのペイント

このまじない師が被っている頭巾は、赤紫に仕上げる。現実世界においては、化学的な染色が広まるまで、洋の東西を問わず紫は染料が貴重だった。それゆえに、多くの地域や文化圏で高貴な色とされてきたんだ。そのイメージをファンタジー世界にスライドさせることにしよう。ハルクウーベン世界には魔法が存在するけれど、染色技術に関しては、中近世ヨーロッパと大した違いはない。そんなわけで紫は、部族でもとびきり高い地位にあるまじない師を表すのにぴったりな色だ。

一方、ペイントでの紫は、グラデーションをかけるのが難しい色の一つに数えられる。紫は赤と青を混ぜることで作れる色だけど、暗くしたり明るくするのにコツがいる色なんだ。白系で明るくしようとするとピンクになるし、暗い色を加えると紫みがどんどん消えて、青灰色や焦茶色になってしまうからね。

そこで今回は、紫にスムーズなグラデーションをかける上での色づかいの秘密も併せて紹介するよ。


色戻し(レイヤリング)

パート1でベースコートし、シェイディングを陰影を加えたので、まずは色戻しをして余計な陰影色を塗りつぶし、なおかつ今までのペイントではみ出たカラーもリタッチしよう。一番奥まった部分の陰影は残すので、色戻しはレイヤリングで進めるよ。

157【ウォーロックパープル】と509【ブリックレッド】を6:4の割合で混ぜてくれ。ベースコートの時より少し暗い赤紫色ができ上がる。シェイドとベースコートの中間に当たる色だ。こいつをパレットが半分透けるくらいに薄め、キッチンタオルに筆先を滑らせて余分を吸わせ、筆先を尖らせたら、フードの一番奥まった部分を除いてレイヤリングしてくれ。

レイヤリングでの色戻しを終えたところ。半分透けるくらいに薄めているので、シェイディングで暗くなったところはほのかに暗く、ベースコート色が残っている部分はその分明るく発色する。

ここでいう「一番奥まった部分」と言う表現に注意。布には深いシワや浅いシワ、あるいはなだらかな凹凸もある。今回残す「一番奥まった部分」とは、フードと顔ないしはローブとの境目部分と、特に深いシワの一番奥まった部分だけだ。赤紫に限らず、衣服をペイントする時は、陰影を一律にしないことと、暗すぎるシェイドを避けることが、布ならではの柔らかさを表現することにつながるんだぜ。


ハイライト1段目-4段目(レイヤリング)

157【ウォーロックパープル】をパレットが半分透けるまで水で薄める。ウォーロックパープルは元々透過性がかなり高い(=隠蔽力が低い)色なので、加える水の量はそれほど多くなくても大丈夫。ただし、隠蔽力が低いからといってボトルからそのままはNGだ。塗膜が分厚くなってしまうからね。

例のごとく、キッチンタオルに余分を吸わせて筆先を整える。上右写真の下側にあるにじみが、先ほど色戻しで使ったカラー。かなり明るくなっているのがわかるよね!

先ほど塗り残した大きく深いシワの奥や他部分との境目に加えて、深めのシワ部分の奥も残しながらレイヤリングだ。1回だけだと発色が弱いので、2回重ねよう。この時、ペイントする面積を少し減らすと、よりなめらかなグラデーションにつながるよ。俺がショウケースでよくやる二段レイヤリングってやつね。

ウォーロックパープルでの2段レイヤリングを終えたところ。色戻し直後の写真と見比べると、全体に鮮やかさが出て、各部のシワが少し目立ってきたね。

157【ウォーロックパープル】と210【インペリアルパープル】を5:5で混ぜ、パレットが3割透けるまで水で薄める。先ほどより少し濃いめなのがキモだ。

先ほどのレイヤリングを全て塗りつぶさないようにしつつ、凸部…すなわち凸部にレイヤリングする。頭巾の上側(つまり天面に当たる部分)は、シワの凹部も含めてペイントしてしまう。いくら凹んでいても、モロに光が入りこむので、凹部に陰影色を残さないでOKだ。

ここからさらに明るくするけど、白を混ぜては明るくしない。混ぜるのは赤みとくすみの強い肌色だ! 先ほどのハイライトカラー(157【ウォーロックパープル】と210【インペリアルパープル】を5:5)と214【サンタンドフレッシュ】を6:4の割合で混ぜ、パレットが3割透けるまで薄める(上写真左)。すると、少しくすみのある肉色ができるはずだ。キッチンタオルの上で筆先を尖らせたら…

凸部をさらにレイヤリングしていく。原則的には先ほどのレイヤリングより少し面積を狭めてカラーを載せるんだけど、フードのキワ部分は、エッジに線を引くように筆を動かすのではなく、上写真でやっているように点を打つようにカラーを載せて、布のけばだちを表現しよう。全体にやるとわざとらしくなるから、顔を囲む部分だけに絞る。抑えのテクニックだね!

レイヤリングを終えたところ。パレット上だと肉色なのに、ハイライトカラーで凸部にだけ載せることで、赤紫のトーンを壊すことなく、自然なハイライトが入れられるよ。これは、ベースコートからシェイド、色戻しから今までのレイヤリング、赤紫の明暗がしっかり作れているからできることさ!

214【サンタンドフレッシュ】と先ほどのハイライトカラー(157【ウォーロックパープル】と210【インペリアルパープル】を5:5)を6:4(つまりさっきと割合が逆転する)の割合で混ぜ、パレットが3割透けるまで薄める。先ほどよりも肌色に近い肉色だ。キッチンタオルに滑らせて筆先を尖らせ…

先ほどよりもさらに面積を狭めつつレイヤリング。頭巾の凸部に加え、また天面に当たる部分は凹部を避けてカラーを載せよう。サンタンドフレッシュの割合が増えているので隠蔽力がかなり上がっているため、今までよりもえぐみのあるハイライトが入る。少し悪目立ちするくらいでOK。しっかりハイライトを入れてくれ。ここで、頭巾の左こめかみ部分にある凸部や、フードの肩口のキワなどには軽く横線を入れてやった。


色味調整(ステイニング)

悪目立ちしているハイライトを落ち着かせ、明るくなったことで出ているくすみをカバーするために、薄めたカラーを被せて染めてやろう。グレイジングよりもキツめに染めるので、ステイニングでやる。

157【ウォーロックパープル】をパレットが6割透けるくらいに水で薄め、余分をキッチンタオルに吸わせて筆先を尖らせてくれ。

カラーを凹部に溜まらせないよう注意しながら、全体をステイニングする。重ねず1回で十分だ。

ステイニングをしたところ。ハイライトが落ち着いてグラデーションがなめらかになった一方、凹部との色味差が減って少しとぼけた印象だ。でもこれでいいの。KIYOKOの教えを思い出すんだ。


*KIYOKOの教え…三歩進んで二歩下がる*

これに言及するのは初めてではないけど、改めて。滑らかなグラデーションを手に入れる上で、明度差の少ない(=明暗の差をあまり感じない)カラーでじっくりレイヤリングしていく方法は定石だ。だが、ペイントする面積が極端に狭いと、ハイライトを入れられる場所が足りなくなってしまうことは多い。また、明るさを上げることで色味がくすむことも多い(色は、明るくしたり暗くすると絶対に彩度が下がり、鮮やかさが失われるからだ)。

幸せは歩いてこない だから歩いてゆくんだね
一日一歩 三日で三歩 三歩進んで二歩下がる

そんな時は、ハイライトをきつく入れた上で、グレイジングやステイニングで色味を落ち着けるのがいいよ。極端に狭い面積でもなめらかなグラデーションを手に入れられる。「三歩進んで二歩下がる」とKIYOKOは歌ったが、ペイントも同じさ。

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