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ペイント大全マスターズ:まとめ塗り(前編)

よくぞ来た。ペイント大全マスターズでは、特定の題材を掘り下げて解説する。カウンシル記事『単体塗りとまとめ塗り』でも言及したように、今回のマスターズでは『まとめ塗り』のペイントアプローチとその実際を紹介する。

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題材にするのは、ジェームス・シェリフのデザインした『スケルトンの戦士』(v1とv2の両方)だ(上写真は俺の手がけたものじゃなく、メーカーであるクルックド・ダイスが用意した作例だよ)。

それじゃあ、始めようか!


ミニチュアを眺める

まずはミニチュアたちをじっくり眺め、造形を愛でつつ、パーティングラインの位置を確認する。スケルトンは、おぞましき魔力で動くアンデッドであり、生前の意思や記憶は大抵失われ、主人の命令のまま動く骨人形だ。作品によっては、多少の意識や記憶を保つ者もいる。君のスケルトンがどちらにせよ、共通しているのは、スケルトンが死体の成れの果てであり、筋肉や腱、軟骨や神経が失われているにも関わらず、まるで生きているかのように動き、戦うことだ。

人間は腱や神経でつながる300以上の“パーツ”で骨格をなし、筋肉と脂肪によって守られているものだけど、スケルトンは魔力で骨がつなぎ合わされ、筋肉や腱もないのに、生前と同じく歩いたり、走ったり、戦ったりするし、脳や感覚器官はないが、周囲を見聞きしたり、あるいは考えたりできる。死霊術とはかくも恐ろしいものなのだ! 30mm前後のミニチュアでは、当然ながら正確な骨格を表現することはできないから、造形解釈でのデフォルメは必須。それゆえに、手がけたデザイナーによって、その表情や骨の造形には大きな違いがある。

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スケルトン造形の白眉といえば、やはりポール・マラーだ。人間の骨格が持つ特徴をことごとく抑えて絶妙なシルエットと精密な造形をなし、ぎこちなく動いている雰囲気をミニチュアに落とし込んでいる。その出来栄えは素晴らしい。

だが、今回ペイントするジェームス・シェリフのスケルトンはどうだろう? 最高峰が商店にいて、どうして俺はこいつらを君に紹介するのか? 

ジェームスのスケルトンには、ポール・マラーのスケルトンとはまた別の魅力があるからだ。一発抜きで造形されたこれらのミニチュアたちのポーズは大胆で、骨の造形解釈も、ポールのとはまた別の個性と良さがある。

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ジェームスのスケルトンは、パーツ分割なしの一発抜きだ。“兵”たちは、装身具や衣服は身にまとっていないが、揃えの剣と盾を持っている。生前持っていた武器や盾にしてはだいぶ状態がいい。アンデッドとして復活させられた後、新たな主人に持たされたものかもしれないね。一方“隊長”たちはそれぞれ別の武器を持っており、防具や衣服はそれなりに傷んでいる。烏帽子の隊長が持つ剣と盾は、意匠が兵たちのものと同様だ。色々と想像が広がるね!

このスケルトンたちが一番“輝く”のは、単体でポツリといる状況ではないと俺は考えた。隊列をなし、冷たい地面を踏み締め進む不死者の群れ。彼らはどこかを攻めようとしているのか。それともどこかを守っているのか。声なき声をあげる骸骨戦士たちは、恐ろしい敵となる。すでに死して久しい彼らは、もはや痛みも恐怖も感じない。自分の名前すら、おそらく覚えていないだろう...ジェームスのスケルトンを俺が『まとめ塗り』したいと思った瞬間だ。

モデリング、ベースデコレート、アンダーコート

まとめ塗りをする以上、ミニチュアのモデリングも複数同時に進める。手順と方法は「ミニチュア組み立て伝説」にある通りだ。違うのは、各ステージごとに、8体をその都度全部進めることである。ここで大切なのは、“各ステージごと”と言う部分。つまり、モデリングを1体ずつ済ませてミニチュアの数だけ繰り返す、のではなく、モデリングの各段階ごとに、ミニチュア8体をまとめて進めると言うことだ。

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まず、パーティングライン・バリ・エアピンを残らず退治だ。スケルトンは表面が骨ゆえにツルっとした造形だから、パーティングラインの取り残しがあると後でめちゃめちゃ目立つ。あばら骨の奥まった部分や関節などは、針ヤスリを活用してキレイにならしてやろう。

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