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ペイント大全マスターズ:上級モデリング伝説II(骨組にグリーンスタッフを盛り付けてのパーツ新造)

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よくぞ来た。今回は『マスターズ:上級モデリング伝説』の続編にあたる。前回の上級モデリング伝説では、武器のスゲ替えによる改造や、荒れの補修や革ベルトの追加工作を紹介した。今回は「骨組に盛り付けたグリーンスタッフによる杖の新造」を紹介する。

今回の内容は、グリーンスタッフによるパテ造形を前回の上級モデリング伝説より一歩進めた、いわば“次のステップ”になるよ。パテ造形にさらに親しむ上で、とても有用なヒントになるはずだ。

前回の上級モデリング伝説に限らず、今までパテ造形について扱う時、それは隙間埋めのような小さな部分への充填だったり、あるいは革ベルトの造形のような、他との設置部分の広いものだったりした。だが今回は違う。パーツ自体を切り飛ばし、骨組を入れて作り直すんだ

グリーンスタッフ造形においては、パテの習性をよく理解する…つまり、グリーンスタッフと仲の良い友達になることが、よりよい仕上がりにつながる。今回の内容は、杖だけじゃなく、長さのあるものを作る時、保持部分の狭い場所での追加造形をする時に役立つだろう。杖や槍などの細長い物はもちろん、針金で骨組を作った腕や手足、あるいは顔や装備品など、骨組以外に頼るものがない状態でパテによる造形をする場合、今回の内容は重要な素地だ。つまり「長いものを作る」方法に習熟することは、パテ造形に親しみ、モデリングスキルを上げる上で、重要なステップの一つなんだ。


グリーンスタッフとは?

グリーンスタッフ。このエポキシパテは、伝統的なパテ原型で長年用いられてきた緑色のパテ。黄色の主材と青色の硬化剤を混ぜ合わせることで硬化が始まり、24時間で完全に硬化する。弾力のあるパテで、乾燥前は水をつけることで平滑化する性質を持つ。細かな造形がしやすく、ヒケを起こさないため塑像の製作に向く一方、乾燥後は切削で形を変えづらいのが欠点だ。

俺は本物のグリーンスタッフを使いたいし、みんなにも本物のグリーンスタッフを使って欲しいので、製造元である英国シルマスタと契約し商店で販売している。


グリーンスタッフの混ぜ方、こね方、使い方の基礎

グリーンスタッフは、使用していない時はパッケージに入れてチャックを閉め、冷暗所で保管すると変質の進行を遅らせられる。高温環境にあると変質が早くなるぜ。俺の個人所有品と同じく、商店の在庫も、普段は専用の冷蔵庫(温度は8℃)で保管しているよ。

変質したグリーンスタッフは、黄色の主材がブツブツの粒状になって硬化剤と混ざらなくなり、硬化不良を起こす。保管状態に関わらずグリーンスタッフの変質は遅かれ早かれ進むので、ケチケチせずにジャンジャン使おう。

なお、使っている最中に黄色い粒を見つけたら、その部分をその都度取り除いて使えば大丈夫。ある程度“新鮮”なグリーンスタッフでも、たまに変質はしてるからね。あまり神経質になる必要はないよ。でも、混ぜた時に黄色い粒が残るのが増えてきたら、さすがに新調を考えよう。

グリーンスタッフはフィルムに挟まれているので、フィルムを剥がし、使う分だけハサミで切り出す使う想定量より少し多めに切り出すこと。足りないよりも余った方がいい。後でパテを継ぎ足すと、硬化までの時間が変わっちゃうからモデリングに支障が出るぜ。

次に、黄材と青材が接触している“継ぎ目”部分をハサミで切り離す。お互いがくっついている場所は中途半端な化学反応を起こしているため、硬化不良のもとだ。

冷えているグリーンスタッフはかなり硬いので、室温に戻してから混ぜ合わせる


グリーンスタッフの性質とそこに宿るもの

硬化前のグリーンスタッフは、粘土と似た性質を持つ。粘土がそうであるように、どこかを抑えるとどこかが膨らむんだ。押し込んだり、引っ張ったりすることで圧が加わり、パテが圧のかかった方向へ移動するためである。これは造形をする上で非常に役立つ便利だし、それゆえにグリーンスタッフはミニチュアのパテ原型における伝統のファースト・チョイスだが、慣れていないとナンギするところの代表格だ。

そのため、何の気なしにグリーンスタッフを触っていると、形がいつまでも定まらず、モグラ叩きをしているような気分になる。どこかを押したら他の部分の形が変わってしまうからだ。

硬化前のグリーンスタッフは幼子のように素直である。押した分だけ引っ込み、引っ張った分だけ伸びる。この素直さと対決せず、よく理解することが大切だ。

こう書くとまるで精神論だけど、実際のところ、パテ造形に限らず、ペイントでも絵でも彫刻でも何でもかんでも、創作ノウハウには感覚や精神論の側面がつきまとう。なぜか? 他ならぬ人が作り、造り、創るものであるからさ。作品から精神性を取り払ってしまったら、それは無味乾燥な、外見だけの虚像にしかならない。人が創るものには、中に宿るものがある。それは、今回扱うようなパテによる小改造でも変わらない。大げさかもしれないけど、俺はそう思ってパテ造形に取り組んでいるよ。

それじゃあ、実際に進めていこうか!


今回の題材ミニチュア「怒れる魔術師」

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