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ドミニカンサマーリーグで働くことが大変な理由

ATCになる以前からもATCになってからもいろいろなレベル、カテゴリーの野球に関わってきました。NCAAディビジョンI、NCAAディビジョンII、NJCAA(2年制大学、短大)、そういうった選手たちが夏場に修行に出るサマーボール(カナダ、アメリカ)、アメリカの独立リーグ(2Aぐらいのレベル)、MLB傘下のマイナーリーグ(ドミニカンサマーリーグ、フルシーズンA)、そしてNPB。もちろん各レベル、各リーグ、各カテゴリーでそれぞれ求められるものが違います。リハビリとか怪我からの復帰プロセスに関しては勝負がかかってるNPBやNCAAは少しでも早く選手を復帰させてくれという感じで、育成の場であるマイナーリーグは下に行けば下に行くほど無理させやんでいいよという感じです。

1Aは中南米の若い選手であればMLBの球団の所属して3年目以降ぐらい、アメリカの高卒の選手であれば2−3年目以降、アメリカの大卒であればドラフト直後の選手や2年目の選手などが主な選手構成となります。バスでの長時間移動、ナイトゲーム、デーゲーム、雪の中での試合、連戦、そしてそれぞれここまで辿ってきた道筋は違うとはいえ、多くの選手が初めて130試合以上のシーズンを経験するわけです。ただ、中南米出身の選手たちはプロ野球一年生ではないですしアメリカの大卒の選手たちは大学野球で似たような経験をしてきていてプロ野球が何かをルーキー達よりは分かっているのでその点はこちらも楽です。

それに対してドミニカ共和国内にあるメジャーリーグのアカデミーで働くというのはなかなかレベルの違う経験ができます。書き出すとこんな感じでしょうか。

  • 言語の違い

  • 文化の違い

  • 一般教養や一般常識のない若手選手たち

  • 球団によってはずっとアカデミーに居住

  • 気候

  • 食事

当たり前ですがスペイン語です。って言うてもどうやらドミニカのスペイン語はかなり訛りが強いみたいです。ドミニカ以外にもベネズエラ、メキシコ、プエルトリコ、コロンビア、ニカラグアなどいろいろな地域出身の選手たちがアカデミーにいるので、よくスペイン語圏同士揉めています。互いの文化の違いもあるんでしょう。同じ国の出身者同士を中止でいるんなグループが出来上がっています。そして選手たちに英語はほぼ通じません。なので怪我とか健康状態のチェックもすべてスペイン語で行なっています。

とにかく自分たちが当たり前だと思ってることは通用しません。時間には平気で遅れてきます。どこか怪我をしていて練習ができないとか試合に出れないからと練習や試合を見ず自分の部屋にこもってしまうやつもいます。食事や水分補給をしていないがために体調不良になったり、ちょっとした体調不良や前日からの筋肉痛などで、あーもう今日はぜんぜんあかんから休ませてくれとかしょっちゅうです。こういう選手たちを部屋から引っ張り出して練習や試合を見させたりとか、多少身体の調子が悪くても出来る範囲で練習や試合に参加させるために健康状態のチェックを行なってるのも自分たちの仕事です。体調悪いと言っている選手の中には、翌日のスケジュールも考えず夜になかなか寝ず寝不足状態で病気のフリをしてる子たちもけっこういるのでそういったこともプロ野球選手としてシーズンを送るために睡眠時間を確保しましょうという教育が大事になってきます。アメリカ国内もマイナーでも上記のようなことは起こりますが、ドミニカ共和国にあるMLBのアカデミーでは選手たちの年齢層も若いしこういうことが毎日です。同僚とはよく自虐的な冗談ですが、アスレティックトレーナーじゃなくて幼稚園とか小学校低学年の先生みたいなもんやなと話しています。

住居に関してですが、球団によってはスタッフはアカデミー外のホテルやリゾートに長期滞在させてもらえますが、コストや予算上それが認められず基本的にずっとアカデミーに滞在させられる球団もあります。仕事がとっくに終わってる時間帯でも夜に頭痛いから頭痛薬くれとか体調悪いから風邪薬くれとかみたいな連絡はしょっちゅう来ます。さらに球団によってはスタッフ共用の車とかもなかったりするので、アカデミー外に出るのも一苦労、アカデミー外に出るのがアウェーでのゲームのときのみみたいなことも起こっているアスレティックトレーナーの方もいるみたいです。

食事もアカデミー外のホテルやリゾート滞在であれば自炊したりとか好きなものを食べるという選択肢も出てきますが、アカデミーに滞在してると3食選手たちと同じものを食べるということになります。中南米以外の出身のスタッフにはなかなかきついです。

余談。日本での経験は経験としてカウントされていない!?

今年3年ぶりにマイナーリーグに戻った私ですが、マイナーリーグに戻るための面接のときから違和感がありました。日本のプロ野球(NPB)で働いていながら、なんでBaseball(野球)に戻ってきたいのか?という聞かれ方です。実際にこっちに戻ってきてからも、以前の職場の同僚や知り合いからはWelcome back to the businessとかWelcome back to the baseballと言われます。ようは野球界にお帰りということを言われます。いやいや、日本のプロ野球で働いてたでって言うても、やっぱり会話の最後にはI'm really glad you are back to the baseballと言われます。もちろん笑顔で話はしてますが、心の中ではめっちゃ苦笑い。日本でやってたということ、NPBで働いてたということ、ぜんぜん評価されてないやん(多分。。。)。

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