見出し画像

生き残りをかけて#2

1.ビザワーカーが切られやすい理由


アメリカビザのイメージ

前回の最後にコロナ渦でクビになったのは、カナダの球団で働いてたからまず優先されたのはカナダ人で、次に労働ビザの必要がないアメリカ人が優先され、労働ビザが必要だった外国人は一番優先順位が低かったからクビになったんじゃないかと推測していると書きました。そこの補足からしておきたいと思います。

アメリカ市民権やアメリカ永住権を持ってない外国人がMLBの球団で働くにはP1ビザというカテゴリーのビザを取得しなければいけません。MLBの球団から仕事のオファーをもらって諸々のチェックを経て、契約書にサインして初めてビザ取得のための手続きが球団を通じて始まります。移民局からビザ取得の許可証が発行されるので、それを受け取ったらアメリカ領事館でのビザの面接予約をしてビザ面接へ。面接が終わるとだいたい1週間前後でP1ビザがもらえます。

P1ビザの取得自体は面接や書類あわせて650ドルほどですが、プロセスを早めるためにメジャーリーグの多くの球団は移民局に追加で2500ドルほど払ってプレミアムプロセスというのをやってます。ビザ取得後のアメリカへの移動、シーズン後に日本に帰る旅費なども球団持ちになるのでP1ビザが必要な日本人を雇った場合P1ビザの3100ドル+日米の往復の航空券最低1回分、最低でも5000〜6000ドルは余分に必要になります。

アメリカ人を雇ってもキャンプ地への移動やシーズン後の移動は球団が払ってますが、日本人を始めとする外国人を雇うよりは経験や能力がいっしょぐらいであればアメリカ人を雇う方が安いです。そんなん当たり前やんとツッコミがきそうですが、ビザワーカーが切られやすい理由はその辺は絶対にあるなと身をもって経験しました。

2.日本人ATCがアメリカで出世するために、、、


現在、MLBのトップ、メジャーリーグ、通称ビッグリーグには何人もの日本人がいます。日本人選手も増えてますが、日本人のATCも増えてますし、ATC以外にもSC、鍼灸、マッサージなどで活躍してる日本人はいっぱいいます。マイナーリーグにも日本人のPT、ATC、SC、栄養士と活躍してる方がいっぱいいます。

PT、鍼灸、マッサージなど知識と技術の高い日本人はマイナーではなくてメジャーリーグ、ビッグリーグで重宝される傾向にあると思いますし、ATCが主な資格の場合は優秀なアメリカ人でもビッグリーグに昇格するのに最低でも10から15年はかかってるんじゃないでしょうか。

3.PT、鍼灸、マッサージなんもあらへん私がドミニカに戻ったワケ


ATCが主な資格の私がどうしてるかって?細かな説明は今回は省きますが、修了するとCEU(ATCの継続教育の単位がもらえる)コース、セミナーを何個もとっています。医学が日々進歩する中でスポーツ医学も進歩し、SNSの発展もあって情報がいっぱいありすぎてどのコースを取るべきがわからなくなるときもあります。だいたい私の選び方は現場で働いてきた中で必要やなと思うコースをとったり、職場の仲間に話を聞いたりして面白そうなもの、職場で考え方を揃えるためにこれを取りましょうって勧められたものをとってきました。ざっくり並べるとPRI、DNS、FMS、SFMA、BFR、PES、CESなどを履修してきましたがこれだけやとあんまり周りと違いが出ません。

MLBの球団で働いてて、メディカルやSC、PTのトレーナーに限らず出世してる人を見ると一概には言えないですが、スペイン語が堪能な人は球団に重宝されてるイメージがあります。フロントオフィスのスタッフ、スカウト、コーチ、トレーナー、用具のスタッフ、、、スペイン語が話せて、中南米の事情をわかってて選手たちがどういうところから来てて、どんな競争を勝ち抜いてきたかとか、どんな競争を生き残っていかないといけないのかわかってるスタッフはいろいろ強いと思います。

メディカルスタッフとして知識や経験が豊富で怪我の評価がしっかりできてとか、治療の技術があってとか、周りとのコミュニケーションやコラボレーション、いっしょに働くということに長けているのは言うまでもなく大事なことです。ただ実際に現場にいると選手たちと年がら年中いっしょにいるわけであって、怪我はもちろん起こりますが風邪や皮膚の疾患や歯が痛いとか腹が痛いとかいろいろ出てきます。ドミニカで働いてると衛生状態、環境がアメリカほど良くないのでちょっとした感染症や風邪、皮膚の疾患はしょっちゅう起こります。もちろん怪我も起こります。その対応をスペイン語でやってるわけですが、この経験とか能力は上のレベル、アフィリエイトに行ってもスペイン語圏出身の選手たちからしたら心強いでしょう。何年もアメリカでやってる選手たちはアメリカにも英語にも慣れてる選手もいますが、ぜんぜん英語しゃべれん選手もいるのでわかってるに越したことはないです。

以前にもドミニカ共和国内のMLBのアカデミーで働いていましたが、自分のスペイン語能力はまだまだ冗談みたいなものですし、そこを伸ばせば今後MLBで長生きできるかと思ったわけです。スペイン語に触れる機会が多ければいいんやったらフロリダかアリゾナのベースキャンプ地のルーキーリーグ、コンプレックスリーグ担当のATCでもいいんじゃないか?という意見、ツッコミも来そうですがそこはまた違うんじゃないかという気がします。ベースキャンプ、ベースコンプレックスにはメディカルディレクター、コーディネーターやアスレティックトレーニングコーディネーター、S&Cのディレクターやらコーディネーターもいるので対応がよく分からんときはすぐにいろいろ聞けますし、こっちが間違ってたらすぐにいろいろ指摘してくれると思います。だけど、ドミニカはアメリカ国外の孤島なのである意味ではアフィリエイト同様自分の判断力が問われるわけです。しかもドミニカ共和国が第三世界?というか後進国なのでいろいろリソースも限られています。その中で選手たちの健康管理のために最前を尽くさないといけないので、それはいろいろ経験できますし力になると思ってます。そういうわけで、ディレクターやコーディネーターたちに守られてるとこで働くぐらいならまたドミニカからやり直ししようと思ったわけです。

4. アメリカに戻って感じたこと


5月終わりから6月始めにフロリダ州ジュピターのマーリンズのキャンプ地の施設に行く機会がありました。リハビリの手伝い、選手の病院帯同が主な仕事でした。久しぶりのアメリカは快適過ぎたのはもちろんですが、(*決して過信してるわけじゃないですが)NCAA D1ベースボール、ドミニカのアカデミー、1AからNPBのリハビリ担当を経てもう別にどのレベルを任されても普通にやっていける力はついてるなと実感しました。なんやようわからんほど時間(歳月)かかってますが、自分でもこの先が楽しみです。

だいぶ長くなってしまってるので今回はここで一回区切ります。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?