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子どもの話に心底感心した話

子どもたちの話を聞いていると、思いがけず、ドキッとすることがある。
素手で心臓を掴まれたような。のど元に刃物を突き付けられたような。

子どもたちは世界の真理をもう見ている、という事が往々にしてあるのだ。

大人はきっと、処世術として身に着けた、常識、慣例に飲まれて、思考を停止してしまっているんだろう、と反省する。

イルカくんの話

たこの友人のイルカくんは、とても思考の深い子だ。たことは保育園来の友人だ。たことイルカくんは、極端にかけ離れている考え方をする所があり、どうして二人が仲良く一緒に居るのか、見ていて面白いが、気心知れた仲間だった。

たこは、口数が少なく、とてもマイペースだった。嫌なものは「やだ」と一言。相手に気を使って色々と弁解するような事は皆無だ。

イルカくんは周りをよく観察し分析する子だ。大人にも気を回してくれるし、たこのフォローもしてくれる。あまりにぶっきら棒なたこに、周りの人が眉を寄せると、「ほら、たこ、もっと説明して。」とイルカくんが慌てていた。

たこは、5年生の夏休み明け辺りから、行き渋り、不安定登校だ。
たこは、「イヤなものはイヤだ。」と多くを語らないので、今でも原因が分からず不登校だ。

感受性の強いイルカくんは、5年生の春に学校への抵抗が強くなった。イルカくんは、とてつもない葛藤を繰り返し、学校を欠席していた。イルカくんのお母さんは、自責の念が強いイルカくんをとてもとても心配していた。

イルカくんのお母さんは、イルカくんと沢山対話を重ね、ぶつかり合って今ここまで来た、と言っていた。

登校するメリットとデメリットを何度も話し合ったという。イルカくんは現在、自分の体調や、メンタルをしっかり観察しながら、出席か欠席か選択している。選択した答えにまた自責することもあるらしいのだが、

私にはイルカくんの背中が、とても頼もしく見える。

SC(スクールカウンセラー)との話

イルカくんの夢

これは、イルカくんのお母さんから聞いた話だ。

イルカくんがたまたま、SCと立ち話をする場面があった。
SCは、イルカくんの登校状況を把握しており、彼に話しかけてきたそうだ。

SCはイルカくんに、「学校に来ない時間、家でゲームやYouTubeを見ているのでは?」と問う。

その質問だけで、たこの母としては、異議申し立てたい気持ちだ。母の知る限り、イルカくんはとても規則正しい『僧侶』のような生活リズムで生活している。朝4時に起きているというのだから、たこに爪の垢を煎じて飲ませたい。

SCはイルカくんに将来の夢を聞く。
イルカくんには『YouTuber』という夢があった。

とても立派な夢だ。

たこと母は、お金やビジネスの勉強を始めていて感じている。時間を切り売りする労働はまっぴらごめんだ。できればフロー型の労働(資本を自分として、働いた分だけお金を貰える労働)ではなく、ストック型の労働(自分に権利があるものが、再生・利用される毎に収入が入るもの)で収益を得たいと考え始めていた。

イルカくんの『YouTuber』は、1本の動画を作れば、それが回るたびに収益が発生するという意味では、たこの目指す所の最適解だった。

しかし、SCは呆れたように笑ったという。
「不登校でYouTuberやプロゲーマーなんていう子は多いわねぇ。そんな甘い世界じゃないのよ?そんなんで食べていけないわよ?」と。

“子どもの夢”を否定するSCが居て良いものか。不登校であったら、自由に“夢”を語ることも許されないのか。

厳しい事は百も承知だ。

少年野球に勤しむ子が、「大谷翔平のような大リーガーになりたい!」と目を輝かせていたら、同じように否定して、夢を抑制するだろうか?「企業に就職してね、日曜に近所で草野球してた方が幸せよ。」って。

普通に小学校に通っているたかが12歳の少年に、人生の厳しさを懇々と諭すようなことをするだろうか?
“不登校”というレッテル越しに子どもを見てはいないだろうか?

学校という社会の荒波から逃げてしまった弱い子。いつも家でのんべんだらりと惰性的に過ごしている怠惰な子。現実社会を知りもしない夢想の中に生きる考えの甘い子。

ふざけるなよ。イルカくんのお母さんは言葉には表しきれない怒りを抱えていた。
不登校の子どもが何も考えていないなんて、大きな間違いだ。それは、たこの姿を見ていても、分かる。感じていた。

子ども自身、学校に行かないことで、毎日どれほどの重たい呪縛の中で生きているのか。その苦しみは、寄り添う親の心まで切り裂くほどの苦難だ。

SCともあろうものが、子どもに寄り添えない。そして、善意という武器で子どもを切り裂いていく。子どもの傷なんてお構いなしに、職務完了の自己満足に浸る。

興ざめしてしまう。どうしてこんな酷い事がまかり通るのか。
私たちは、誰を頼れば良いのか。もう、SCという立場の人間に否定されたら、誰に話をすればいいのか分からない。

「不登校を理解しています!」と公言している人間の対応がこれか。と思ったら、もう、当事者親子は膝から崩れ落ちてしまう。

イルカくんの対応

SCは興ざめするお母さんには気が付いていない。
「家で、何かやっている事はないの?」とイルカくんに話を続ける。
イルカくんは「料理ですかね。」と話す。

SCは「良いじゃない!」とテンションがあがる。「お料理で生きていくのが良いわ。」と。
イルカくんは、「そうですね、料理人を目指します」とSCに対応した。

イルカくんのお母さんは憤っていたが、イルカくんは紳士的にSCの機嫌を収めた。どっちがカウンセリングをしているのか。
SCなのに、子どもに気を遣わせて、満足して、滑稽だと思う。

イルカくんのお母さんは、心配していた。こんな心の無い一つの出来事で、イルカくんが“夢”を妥協してはいないだろうか、と。

しかし、イルカくんは言った。

食べていけるかいけないかなんて。本当に食べられない経験をしたこともない人に言われたって、説得力がないよ。」と。

あんな言葉は気にすることない。と。

イルカくんの大きさに、イルカくんの芯の通った志に。
たこの母は、心底。それはもう心底感心してしまった。

少し、たこの話

たこは、6年の3学期、ほとんど学校に行かなかった。
小学校生活最後の授業日。たこは「最後だし行くか。」と学校へ向かった。

お世話になった用務員の師匠と話し、クラスメイトと話し、お迎え要請も無く、友だちと下校してきた。

たこの帰宅を受けて、「がんばったね!お疲れ様。」と母が声をかけると、たこが言った。

小学生というものが分かったよ。」と。

「みんな、あんまり考えてないんだね。ふわふわしてて。すごく楽しかった。」と。

たこは、きっと不登校の日々の中で、色んなことを考えていたんだ。内省して、内観を深めていた。たこは、葛藤の中で藻掻いていたんだ、と感じた。

そして、そのことを戦友(不登校を一緒に戦って来たママ友)に話した。
戦友は言った。
「小学生なんてさ、本当なら無邪気で良いよね。ふわふわしてて良いんだよ。こんなに早く大人になっちゃって。寂しくもある。どうして無邪気で過ごせなかったかなって。」

同じ母親として、納得した。アホアホ男子で過ごせていたら、きっと楽しかっただろうな、って思う。

けれど、アホになれなかったんだから、しっかり自分と向き合った期間だったんだから!と前向きに捉えるしかないね、と戦友と笑った。

苦難の不登校という道を選んだ我が子たち。もしかしたら、中学校もその選択をするかもしれない。

けど、親は、子の選択を精一杯受け止めるしかないな、と思っている。


自分への教訓

  • 子どもは大人以上に状況を理解して、悟っていることがある。

  • 我が子はきっと大丈夫って、親は子を信じるのみ。



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