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【第4回】ぼくのせいだから…

執筆:副島 賢和(昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当)

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 病気のある子どもたちと話をしていると、
「そこまで思わなくてもいいのに…」
と思うくらいに、周りで起こっていることを自分のせいにしていることがあります。

 幼い子どもたちは、世の中で起こっていることなどよく知らずに、自分勝手に生きていると思われがちですが、実は周りのことをとても敏感に感じて、いろいろと考えています。ただ、それが長続きしないので、何も考えていないように見えるのかもしれません。

 本来子どもたちは、自分が世の中の中心であるとして生きています。自分が中心で生きているということは、世の中で起こっていることは、すべてどこかで自分が関係しているという思考になっていることがあります。

 例えば、大切なおもちゃが壊れたり、大事な友達と離ればなれになったり、ペットがいなくなったり、家族が病気になったり、果ては災害でさえも…。それも、すべて自分が悪いのではないかと考えることがあります。

 そのため、「ぼくが頭を叩いたから、お兄ちゃんが頭の病気になった」や、「私が、“お母さんなんかいなくなればいい”と思ったから、お母さんが入院しちゃった」というようなことを考えてしまうこともあります。

「私が病気になったから…」

 子どもの大病や入院は、家庭の一大事です。家族皆の心が大きく揺さぶられます。

 そのため、夫婦の仲であったり、原家族(自分が育ってきた家族)との関係であったり、きょうだい関係であったり、経済的なことであったり…と、普段であればなんとなく直面せずに通ってきたはずの家庭の脆弱性が、表面化することがあるのです。

 もちろん、このできごとを乗り越えることで家族の関係がより深くなる家庭もあります。

 ただ、そうでなかったときに、それを
「ぼくのせいなんだよね」
「私が病気になったから」
と、考えて苦しんでいる子どもたちがいるのです。

 病気のある子どもたちだけではありません。きょうだいたちのなかにも、苦しんでいる子どもたちがいます。

 入院している子どもがいると、どうしても保護者は、その子どもに対してかかわる時間が長くなります。家族は、その子中心で動いていきます。それは当然のことです。

 でもそんなときに、きょうだいのなかには、
「ぼくが代わりに、病気になればよかったのに」
「私よりも、妹のほうが大事なんだ」
と考えてしまう子もいます。

「あなたのせいではありません」

 子どものなかに、自分を責めてしまうような気持ちが出てきたときは、その気持ちに蓋をせずに伝えてほしいと思います。

 そのときの苦しい感情をしっかりと受け止めながら、そのように考える必要はないと伝えていきます。

 「それは、あなたのせいではないです」と、しっかりと伝えてあげたいと思うのです。そして、病気のある子どもだけを見るのではなく、家族丸ごと支えていくことが必要であると考えます。

 苦しい感情をしっかりと受け止めることや、家族丸ごと支えていくことはとてもエネルギーのいることです。そこにかかわる私たち自身も支えあっていくことが大切であると思うのです。

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著者プロフィール:昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当。1966年、福岡県生まれ。 89年、都留文科大学卒業。 同年、東京都公立小学校教員として採用され、 以後25年間、都内公立小学校学級担任として勤務。99年、東京都の派遣研修で、在職のまま東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。2006〜13年、 品川区立清水台小学校さいかち学級(昭和大学病院内)担任。 14年4月より現職。
学校心理士スーパーバイザー。 ホスピタル・クラウン。北海道・横浜こどもホスピスプロジェクト応援アンバサダー。TSURUMIこどもホスピスアドバイザー。 東京こどもホスピスプロジェクトアドバイザー。日本育療学会理事。 NPO法人Your School理事。 NPO法人元気プログラム作成委員会理事。
09年、ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。
11年、『プロフェッショナル仕事の流儀』(NHK総合)に出演。
20年、NPO法人Your School によるYouTubeチャンネル「あかはなそえじ・風のたより」に出演。https://www.youtube.com/watch?v=ndP0lIrhg8k
近著:『あのね,ほんとうはね 言葉の向こうの子どもの気持ち』

近著:『あのね,ほんとうはね 言葉の向こうの子どもの気持ち

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※本記事は、へるす出版・月刊誌『小児看護』の連載記事を一部加筆・修正し、再掲したものです

★2022年5月号 総特集:動く重症心身障害児(者)への看護ケア
★2022年4月号 特集:発熱をもう一度考える
★2022年3月号 特集:食物アレルギーのある子どものケア;食事を通して成長・発達のプロセスを支援しよう
★2021年7月臨時増刊号 特集:重症心身障がい児(者)のリハビリテーションと看護

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