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【しりとり最終話】『ど』うして、僕らは喜びも悲しみも忘れていってしまうのだろう。

さて、何の気なしに始まった814さんとの企画、、、正確には814さんは『あの時思い描いていた“ド”を皆さんに当ててもらう企画、私は皆さんとしりとりをしながら『ド』を探す旅に出るという企画でした(←そうだったんですよーw)。それも、ついに最終回を迎えることとなりました。

814さんも仰っているように、最初は私が喫茶店で『ただのしりとりに夢中になって楽しんでいるカップル』に衝撃を受けて、ツイートしたことが発端でした。
○○しばりもなく、(例えば)「ド」の集中攻撃もない、本当にノーマルなしりとり。それを心から楽しんでいる二人を見て、なぜだか本当に衝撃を受けてしまったんですね。その気持ちを整理できないままツイートしたことがこの企画の始まりでした。

そういえば、と私は今になって思うのです。
子供のころ、遊んでいた遊びは何であんなに楽しかったのだろう、と。

追いかけっこも、ドッチボールも、ただただ楽しかった。ボールをうまくキャッチ出来ることだけで楽しかったし、しりとりだってただ友達とあれこれ言いあっている時間が何にも代えがたい楽しい時間でした。

いつから、私たちはその『遊び』に意味を求めるようになってきたのでしょうか。お絵かきはより具体的な目標に向かって上達を目指し、思い描いていた妄想は、それを文章に再構築する作業に移り変わり、喜びと共に大きな苦悩も同時に抱え込むこととなりました。

それは仕方の無いことなのかもしれない。

それが大人になることなのかもしれない。

それでも。と時々、思います。
バカみたいにはしゃぐだけの時間を過ごしてみたい。
何も考えないで、純粋に楽しむ時間があればいいのにって。

私たちはそれぞれに、たくさんの物事を抱えて生活しています。
喜びも悲しみも、厄介ごとも無為な時間も、それら全てが毎日怒涛のように押し寄せてきて、考えなければいけないことがたくさんで、答えを出せない日々が積み重なってきていたりして。

でも一番悲しいのは、それらの感情が日々擦り切れて麻痺してしまうことです。
夢中になって時間を忘れて楽しんだことも、その感動はちょっとづつ薄れ、同じ事を経験しても、前とは同じように楽しめなかったりします。それが悲しい。
もちろん、悲しいことも。
心に刻んだはずの思い出は、時間という波に削られ、風化していき、その傷はちょっとづつカタチを失っていくのです。ヨロコビもカナシミも。
それが何より悲しいことだったりするんです。

私にとって、あの時カップルの『ただのしりとり』を見て感じたことは、どうやらそういう事だったように思うのです。

いつまでも鮮やかに輝き続ける『瑞々しい気持ち』を目の当たりにしたような。それがとても眩しく感じられたんですね。

いいなー、男爵もそんな風にいつまでも無邪気に遊ぶ心を持っていたいなー。
そんなことを考えながら、思ったのです。

「私も、ただのしりとりをしてみたい!」


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そんなこんなを考えたり考えなかったりしながらw、今回このしりとりを皆さんと一緒にやらせて頂きました。

そこには深い目的も、狙いも、ありません。
ただ、純粋に皆さんと遊んでみたかっただけですw。

賞金も、参加することでのメリットもなく、参加するための技量や手段も問わない、ただの純粋な遊び。
多くの素敵な作品が流れるnoteの中で、たまにはこんなユルユルの遊びがあってもいいんじゃないかなーとも思うんですよねw。

そんな訳で、参加して頂いた皆さん、そして見て頂いた方々もありがとうございました。全81回のしりとりは皆さんのご協力のおかげで最後まで繋ぎきり、無事ゴールまでたどり着くことが出来ました。

最後にようやくたどり着いた『ド』はこれでした。

これをもって、814さんに送る言葉としたいと思います。


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『ど』うして、僕らは喜びも悲しみも忘れていってしまうのだろう。

[DODECAGON]の看板を背にして男は歩きだした。

「814さん」

男はその声に驚き、振り向くと、そこに彼女はいた。

「ど、どうして・・・?」

「一年前、ずっとしりとりをしていたこと、憶えてる?私はずっとあなたに思い出して欲しかった。あなたと一緒に過ごした時間。楽しかったこともケンカしたことも、全て私にとっては何よりも大切な時間だったの。

でも、あなたはいつの頃からか、自分のことしか見なくなった。仕事に追われ、夜遅く帰ってきて朝早く出て行って。そうして私の存在なんか、あなたにとって何にも意味がなくなってしまったの」

「ち、違う・・・」

「でもね。」彼女は言った。

「それは、私も同じだった。あなたが遠くに感じられて、寂しくて悲しくて何度も泣いたわ。でも、段々それが当たり前の生活になってしまって、あなたに対しての感情も薄れてしまった。

私はそれが何よりも悲しかった。あなたのことが本当に好きだったから。」

アイルランドの凍てつく風が二人に吹き付ける。まるで体温を根こそぎ持って行ってしまいそうな冷たい風。

「だけど、失うことで見えてきたこともあったわ。
『ングラ・ライ国際空港』。」

「?」男は一瞬、意味を失う。「国際空港?」

「そう、バリ島の『デンパサール国際空港』の正式名称なんだって。」

彼女は微笑みながら言った。

「『ン』から始まる言葉もあるのよ。」

男は、焦点の定まらぬ顔をしていたが、彼女を見ながら徐々に、その顔に生気を蘇らせていった。「ああ、そうか。」

「うん。」

彼女は力強く返事をする。その顔には力強い笑みがこぼれていた。


「しりとりは、まだ続くんだな。」

相変わらず、アイルランドの風は二人を強く吹き付けていた。
けれど、なぜだろう。さっきより冷たさは感じない。

二人の心にはバリ島の暖かい風が吹いていた。

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(エピローグ)
バリ島のジンバラン・ビーチに流れ着いて来た、『たらこキューピッド』を拾いながら男は思った。

キクラゲ校長(あれ?何か呼ばれたような・・・?)



《目次》

814さん企画『国(しり)盗り物語』
●マガジン→https://note.mu/aeg_toku/m/m4164c53bff7d

●始まり『新ドを探す旅』→https://note.mu/aeg_toku/n/ncd8b9f4fefd1
●最終話『真実の愛(ド)を求めて』(今回の物語の『前編』ですw)
→https://note.mu/aeg_toku/n/n6262974ae22f

クラゲ男爵企画『ただのしりとり』
●マガジン→https://note.mu/heso/m/mbb8bc3fc5be5

●企画概要→https://note.mu/heso/n/nd2e40809e832

#しりとり #ただのしりとり  


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