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16. 日本人はどうして英語が苦手なの?(番外編)

この質問、今までに何度聞かれたでしょう。
逆に、英語が話せるからと、日本人以外に間違われたこともあります。

この「日本人は英語が苦手だ」というイメージを持たれてしまった理由は、いろいろあるような気がします。

まず、英語が出来る出来ないに関わらず、団体でどっと海外旅行へ出かけ始めた頃、どこの国でも、その日本人の行動は目立ったように思います。
日本人は、他のアジアの国々に比べ、結構早い時期から、海外への団体旅行を始めたので、より注目されたのではないかと思います。

それから、私たちは、どちらかというと、「英語が下手ね」と言われると、素直に認めてしまうところがあるような気がします。
「そんなこと無いわよ!」と言い返せる人は、少ないのではないでしょうか。
母国語では無い言葉を上手に使いこなせないこと、母国語では無い言葉を使うことに自信が持てないことを、素直に認めてしまうんですよね。

逆に、「英語が上手ね」と言われても、「いえ、そんなこと無いです…」と謙遜してしまう場合も多いと思います。
また、「どうせ、お世辞よ」と、素直に誉められたことを認められなかったり。皆さんも、そんな経験はありませんか?

これは、日本人だからなのでしょうか?

「日本人は…」と言われると、ついつい、自分にも当てはまることだと思いがちですが、実は、英語の上手下手は、国籍ではなく、人それぞれ、個人によるものだと思います。

勿論、ネイティブの様に話すことを目標にすれば、何歳から英語を使い始めたかとか、英語と同じ「音」が多く含まれている言語が母国語であるかどうかなど、国籍や年齢も影響してくるかもしれません。
でも、「使える英語」、「自分の言葉としての英語」を話すことに注目すれば、国籍や年齢ではなく、「私」という個人が重要になるのだと思います。

メールマガジンの第一号でも触れましたが、「英語を使えること」の定義を、まずは変える必要があると思います。

私たちが「苦手意識」を捨てれば、私たちに貼られた「英語が苦手」というレッテルも、いつの間にか消えてしまうのではないかと思います。
「日本人は英語が苦手」というイメージが消えてしまえば、「日本人は英語が得意」になるかも知れません。

騙されたと思って、これから、「日本人は英語が苦手よねぇ~」という人に出会ったら、「えっ、日本人て英語が苦手なの?得意なんだとばかり思ってた…」とか、「日本人にも英語が得意な人はたくさんいるのよ」などと言って、イメージを変えるようにしてみませんか?
「日本人は英語が上手だ」と、思い込んでしまいましょう。

「下手英」が得意とする、心理作戦です。

私は、日本人の多くが完璧主義者であることも、英語が苦手だと感じてしまう原因だと思います。
そして、英語が苦手だと感じてしまうことが、実際に、英語を苦手にしてしまっているのだと思います。

「英語が出来る」って、どういうことだと思いますか?
どこまで英語を理解できれば、どこまで英語を使うことが出来れば、充分だと思いますか?

英語が出来る=全ての発音が正しく出来る
英語が出来る=全ての単語を知っている
英語が出来る=常に正しい英語を使うことが出来る

と、思ったりしていませんか?

日本語の場合を考えてみて下さい。
音声学的に、日本語の発音が完璧に出来る人、日本語の単語や漢字を全て知っていて、全て読み書き出来る人、常に正しい日本語を使っている人って、存在するのでしょうか?

英語でも日本語でも、ネイティブ同士が、言葉の使い方を巡って揉めることはよくあります。
「英語が出来る」ということが意味する定義を変えれば、日本人は、決して英語が苦手では無いと思います。
どこかで、目標を誤ってしまっただけではないかという気がします。

英語についてだけではありません。日本では、多くの人が、親や先生は、子供や生徒に対して、いつも完璧でいなければならないと思っていませんか?
人は、間違えます。親や先生が、答えを知らないこともあります。

日本の教育では、「間違えることは駄目だ」と教えられ続けたような気がします。
こちらに来て、親や先生も間違えることがある、知らないことがある、という考え方が存在することを知りました。
間違えれば、同じ間違いを繰り返さないようにすればいいし、知らないことがあれば、調べればいい。

日本の英語教育にも、完璧主義は影響していると思います。
先生が全く間違いを犯さない為には、間違う可能性の少ない、限られた英語を教えるしかなくなります。
問題も、答えも決まっている英語、限られた英語だけを、限られた用法だけで使う。
翻訳する為の原文も、訳文の模範解答も、既に決まっている。
そんな中で学んだ英語は、現実の世界では、なかなか使い辛いものです。
人生、ハプニングの続出です。予想した通りに事が運ばないことも多いですし、実社会では、決まりきったことばかりは起きません
自分らしさや、創造性、臨機応変に変化させる言葉が必要になってきます。

日本で英語を教えている外国人の先生方によるディスカッションの内容を読んだことがあります。

日本の学校の先生は、英語が出来ないとか、日本人の生徒は、英語を学ぶ際の目的意識が欠けているという意見を見かけました。
他のアジアの学生さん達は、将来の生活の為など、目的がはっきりとしていて、真剣だそうです。
勿論、日本人の学生さん達も、真面目に勉強しているし、英語を使えるようになりたいという漠然とした目的意識は持っているそうなのですが、真剣さや、英語を必要としている度合いが、他の国の学生さん達とは違うそうです。
各個人の、英語を学ぶ為の目的が不透明なのだとか。

確かに、日本の学校教育での英語は、実際に使うことより、学校を卒業する為だったり、入試の為だったりしますよね。
その延長で、社会人になってから英語を学び始めた時も、英語学校で上のクラスへ上がることが目標になったり、人から評価を受けることが目標になったりと、「実際に使う為」という本来の目標を、忘れてしまいがちになるのかも知れません。

精神科医でもあり、教育心理学者でもあるWilliam Glasser氏によると、効果的な学習法とは

読む 10%
聴く 20%
見る 30%
見る&聴く 50%
他の人たちと議論する 70%
体験する 80%
他の人に教える 95%

だそうです。

独学の場合は、読むことが最も効果的だと私は思いますが、他のオプションがある場合には、他の人たちとそれについて話をしたり、実際に体験したり、人に教えてあげたりすることが、より効果を発揮することは間違い無いようです。
日本の今までの学校での英語教育は、グループで学べるせっかくのチャンスを利用せず、独学的なものが多かったような気がします。
このことも、文法や読み書きは充分優れているのに、英語を母国語としない他の国の人達が、気後れすることなく、文法なんか無視した英語のおしゃべりをしている輪の中に入ると、私達が苦手意識を感じてしまうことに影響しているのではないかと思います。

最近、実は、ちょっとだけ気になっていることがあります。
日本は、これから、幼年期に英語教育を積極的に取り入れて、全ての人が英語を使えるようにするつもりだという記事を読みました。
国際社会の中で生きていく為には、とても良いことなのですが、英語が出来る世代と、そうでない世代が共存しなければならない期間があることに、誰も注意を払っていないような気がします。

例えば、日本人の英語の先生より、子供の頃から英語を学んだ生徒の方が上手に英語を使えるとか、子供はネイティブの様に英語が使えるけれど、親は全く英語が分からないとか。
子供の「英語教育だけ」に注目している親御さんにも数多く出会いました。国際社会で充分通用する英語が出来るようになっても、それを悪用したりするようになってはおしまいです。英語が出来ない親御さんを、尊敬しなくなっても困ります。
それに、子供が英語で何をしているのか、何を話しているのか、大人は全く理解出来ないという状態も困ります。

しかも、日本では、あることが出来る人は、それが出来ない人より人間的に優れているとか、逆に、あることが出来ない人は、それが出来る人より人間的に劣っていると思う風潮があるような気がします。
常識化してしまった錯覚とでも言うのでしょうか。

妙な思い込みは、きっぱりと捨ててしまうべきだと思います。

英語が出来る、出来ないや、あることが出来る、出来ない、あることが得意である、苦手であるということは、人間的な価値とは、全く別のものです。

ネガティブな思い込みは、「英語が使えるようになる」為の天敵です。

「日本人は英語が苦手」なのではなくて、「自分は英語が苦手という意識を持ってしまっている(苦手だと錯覚してしまっている)」ということに注目して、その「苦手意識」を無くす為には、どうしたらいいかを、考えてみて下さい。
いや、一緒に考えていきましょう!

英語の学習法は、1つだけではないと思います。
全ての人にとって「正しい」という方法なんて、存在しないと思います。
人それぞれ、その人に合ったやり方があって、それは、その人自身が見つけていくしか無いと思います。

多くの人が「正しい」と思っている方法だから、その他人が与えてくれた方法にさえ従っていれば、必ず自分の目的が達成出来ると思われがちです。
でも、100人中、99人の人に効果があっても、残りの1人には効果が無い場合もあります。
だからと言って、「自分は英語が苦手だ」と決め付けてしまう必要は無いと思います。

私は、皆さん一人一人が、それぞれに合った英語学習法を見つけることが出来たらいいなと思っています。そして、微力ながら、そのお手伝いをすることが出来たらいいなと思っています。

今回の技は:

「国籍や、年齢なんて関係無し、”私”って、どうして英語が苦手なの?と、自分に合った対策を考えましょう!」



※この記事は、2003年に発行していた「下手英メールマガジン」で紹介していた「下手な英語を使うための技」に加筆修正を加えて、現在無料再掲載中のものです。令和版は、近日有料公開予定!

下手英メールマガジン発行から20年後、「2023年の後書き」:
今回は、追記で付け加えることは何もない気がします。
今号に書いた日本人が英語が苦手な理由とは別に、もう一つ、英語を学び始める前に知っておけば、苦手意識を少なくすることが出来るかも知れないという情報を見つけたので、それについては、別記事に書こうと思います。


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