【寄稿】汚れ合って、洗い合って/大念寺・関本和弘さま
私の好きな絵本に「あらいぐま洗車センター」という本があります。
いろんな動物たちの乗ってる車をあらいぐま達が洗ってくれるんです。
どの動物の車も汚れすぎて誰が乗っているのかもわかりません。その状態でみんなあらいぐま洗車センターにやってきます。その車をあらいぐま達が楽しそうに歌いながら洗ってくれるのです。
そしてきれいになれば誰が乗ってたかがわかります。
興味深いのが、それぞれの種族によって汚れ方が違っているのです。
泥まみれのもぐらさんの車。草まみれのかるがもさんの車。などなど。
「♪車あらいは しあわせだ
だって みんなのくらしがわかる
海へ行ったの? 山へ行ったの?
魚つったの? お花つんだの?
よごれを見ればすぐわかる
よごれを見ればすぐわかる
あらって ぬぐって みがいて わらって
あらま こらまぁ あらいぐま 洗車センターさ」
そんなあらいぐま達も最後はみんな汚れて真っ黒になるんです。それをお互いに洗い洗われまたきれいになるというお話しです。
このお話しを読んでいると、私のやっていることのように思えてくるんです。私に会いたいという方はいろんな悩みを抱えてる方が多いです。中には一見元気そうに見えても本当は全然元気じゃ無い方もいらっしゃいます。必死で笑顔を作って本当はどんな人なのかが見えません。
いろんな生き方でいろんな汚れを付けてこられます。
けれど、ことばを聞けばすぐわかります。
声のトーン、言葉の選び方、笑い方、しぐさ、眼の動きなどなど。
ゆっくりでもお話しいただけるとちょっとずつ元気を取り戻して行かれます。帰る頃は来たときと表情が違います。
けれど重いお話を聴くと私も重い気持ちになることはあります。自己反省会の始まりです。何度も何度も自問自答します。「あの言葉を聴いて、こう言ってあげられたら良かったんじゃないか? 何故あのタイミングで受け止めの言葉を出せなかった?」などなど。実は後悔ばっかりでとても落ち込みます。
そんな私を救ってくれたのが、この本のあらいぐま達です。
「洗い洗われあらいぐま」 私もまた誰かに洗ってもらう必要があるのです。
それは仏様であったり、また仲間であったり。
「よごれは 元気に 生きてる しるし
よごれを みれば あなたが わかる」
「明日はだれの車をあらいぐま?」
なかなかあらいぐま達のように上手に洗えません。いつかもっと上手に洗えるようになってたくさんの人に安心できる場所を提供したいと思います。
〈汚れても洗われて、洗ってもまた汚れるけど/運営担当より〉
悩める人々を可愛い動物さんたちに例えると、私たち人間も、なんだか愛おしく思えてきますね。
私たちは普段、表情やふるまい、身に付けるものによって、自分を表現したり、また守っています。
時折それが過剰なものになっていたり、何か違和感があったりすると、「それって本当に必要かな?」「本当に必要なことは他にあるんじゃないかな?」と、吟味したり検討したりするタイミングがやってきます。
いろんな動物さんたちが「そろそろ洗車しなきゃマズいな〜こんなに汚れちゃ前も見えなくて事故になりそうだ」と自分で気付いて洗車センターにやってくる時です。
相談にやってくる人は、悩みに悩んで八方塞がりになりながらも、なんとなく「このままじゃ良くない、なんとかしたい」と気付いて自ら勇気を出して動き始めた人です。
よく、悩み相談を受ける仕事って、自分までしんどくなりそうじゃない?と言われることがあります。
本当にしんどくなるというよりは、悩んでいる人がどれほどしんどいか限界まで想像する、ということをします。その際、感情を大幅に揺るがされることがあります。洗っている側のあらいぐまさんが、その汚れを被るように。
そんなあらいぐまさんを目の当たりにすることで笑ってくれたり元気になってくれる動物さんや、その汚れを洗ってくれる別のあらいぐまさんがまたいてくれるわけで、汚れっぱなしということにはなりません。
心や身体がすっきりすると「浄化された〜」と口にすることがあります。それは、抑え込んでいた感情を適切な言葉でやりとりできた時と、身体の感覚に向き合いながら動いたりリラックスさせることができた時です。
ただ、抱えている感情をそのまま外に爆発させたり、よく考えずにあるいは偏った思い込みにより暴れたりすることは、さらに汚れを被ってしまうことになるので気をつけたいところです。
今回は、大念寺の関本さまにお寄せいただきました。お忙しい中、早速の寄稿を感謝申し上げます。
大人になってから読む絵本や、映像や音楽は、子どものころには感じられなかったものがそこにあったり、新しい解釈が加わりますね。そして何かしら支えとなってくれます。
今後もHey!Bouzにご登録いただいているいろんな僧侶さまにコラムをお寄せいただきます。お楽しみに☆
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