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短編小説 マッド桃太郎(サイコグロホラー)

昔々、あるところに
おじいさんとおばあさんが住んでいました

おじいさんは山へ芝刈りに
おばあさんは川へ洗濯へと
出かけていきました。

おばあさんが川に着くと、
川の様子がいつもと違っていました。
昨夜の大雨のせいで川の水かさは増し
川の流れがものすごく速くなっていたのです

「こりゃ洗濯どころじゃないなぁ」
おばあさんは洗濯をあきらめ帰ろうとすると
川岸のほうから大きな大きな
桃が流れてくるのがわかりました

その大きな桃を見ておばあさんは
持ち帰ったらきっとおじいさん喜ぶだろうと思い
勇気をだして川の中に入り
桃を取ろうとしましたが
あまりの川の流れの凄まじさに
おばあさんは流されそうに
なってしまいました

それでも何とか
おばあさんは踏ん張って
大きな桃を待っていました
しかし段々と近づいてくる大きな桃は
遠目ではよくわかりませんでしたが
物凄く規格外の大きな桃だということに
おばあさんはかなり近くに桃が
迫ってきてようやく気づき焦りました

が、時すでに遅し

おばあさんはその大きな桃に
思いきり「ドン!」と轢かれてしまい
「ドンブラコ!!!」
と意味不明な言葉を発して失神し
大きな桃と一緒に鬼ヶ島のほうへと
流されていってしまいました。

その後しばらくして日も暮れてきて
おじいさんが芝刈りから
家に戻ってくると
おばあさんの姿が見当たりませんでした

おじいさんは不安になり
川を見に行きましたが
洗濯物が放置されたまま
おばあさんの姿がありません

(きっと、鬼にさらわれたんだ・・)

おじいさんはそう思い込み覚悟を決めて
鬼ヶ島へと向かうことにしました

鬼ヶ島へと向かう道中
猿と犬とキジに遭遇しました

「おばあさんを見なかったかい?」
おじいさんが動物たちに尋ねるも
動物たちはキーキー、ワンワン、ケンケンと鳴き声をあげるだけでした

動物が喋れるわけがないのもわからなくなるぐらい
おじいさんは冷静さを失っていました
その頃、鬼ヶ島では鬼たちが宴会をしていて
酒を飲んで、ご機嫌に酔っぱらっていました

すると他の数匹の鬼が
大きな桃とおばあさんの死体を
川のほうで見つけたと言い宴会の場に持ってきました

それを見た鬼たちはこれはいいデザートになるなと
一斉に桃とおばあさんをムシャムシャ食い始めました
すると桃が腐っていたのか
おばあさんが腐っていたのか
鬼たちは腹を壊しうめき声をあげ
うずくまり苦しみだしました

その頃やっとの思いでおじいさんが鬼ヶ島へと着きました。すると
沢山の鬼たちが「うぅぅぅぅぅ」と悲鳴をあげ倒れていました

(なにがあったんだ・・)
そう思いながらおじいさんは鬼たちに恐る恐る近づいていき
見てはいけないものを見てしまいました・・・

おばあさんの着ていた服の欠片と
おばあさんの死体の残骸が
鬼たちの近くにあったのです
その瞬間 おじいさんは激怒し

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」と叫び声をあげながら
一心不乱に持ってきていたクワを何度も鬼に振り下ろしました

「ギャー!」
「助けて!殺される!」

と口々に情けない声をあげながら鬼たちは
どす黒い血を流して身体がグチャグチャになり
みるも無残な形に変わっていきました

それでもおじいさんは、
クワを振り下ろし続けました

「殺してやる!!」

「全員殺してやる!!」

「死ね!死ね!死ね!」

そう絶叫しながら我を忘れ
何度も何度もクワを振り下ろすと
最終的に鬼たちは
大量の血を吹いて動かなくなりました・・

「ハーハーハー・・・」

しばらくしておじいさんが息を整え
少し冷静になって周りを見渡すと
その光景に愕然としました

「これは私がやったのか・・・」

半信半疑でおじいさんは、
右手に持っているクワを見ると、
べっとり鬼の血がついていて
改めて自分がやったことだと認識しました。

(まさか自分の中にこんな狂気のような部分があったとは・・)

おじいさんは自分で自分のことが恐ろしくなりましたが
おばあさんを鬼たちに殺された復讐を遂げられ
少し達成感を感じてしまっていました

その後おじいさんは過ぎたことを後悔してもしかたないと立ち直り
おばあさんの墓を簡単に作り
おばあさんの残骸を埋葬しました

そして気分転換に鬼ヶ島を散策してみると、
鬼たちが人間から奪った宝を偶然見つけました

「すげー!すげーぞ!」

おじいさんは大喜びして宝を持てるだけ持って自分の家に戻り置くと
また鬼ヶ島に行って宝を運ぶのを繰り返して
全ての宝を手に入れました

そうしておじいさんは大金持ちになり大きな屋敷を建て若い女を囲い
一生遊んで暮らして幸せな余生を送ったとさ

おしまい

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