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とても暗くて憂鬱になる超短編小説②

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四畳半のぼろアパートの一室に
似つかわしくない高級机は
田宮にとって必要不可欠なものであった。

いつものようにその机に向かい
上半身を突っ伏すような姿勢で
必死に筆を走らせる

それは物語とは言えない
支離滅裂な文章だが
田宮は書かずにはいられなかった

書かなければ
なにもない自分になってしまう気がして
恐ろしくて
震えながら怯えながら
ただひたすら筆をはしらせた

そうしていつも
物語とは言えないような
言葉の羅列を作り上げていく

それはいつしか
田宮の叫びや愚痴を
表しているだけの凡庸な
まったくつまらないものに
変わっていった

死にたい
やりたい
つらい
苦しい
寂しい
変わりたい
許さない
消えたい
金が欲しい
女にもてたい
才能が欲しい
幸せになりたい
勝ちたい

うううううぅぅぅぅあああああああぁぁああ

書きながら泣きながら
嗚咽を吐きながら
平静を保とうするさまは
まったくもって
普通ではなく
いつか田宮が望んでいた
才気あふれる異常者のようだった。

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