独裁者 小学校編 4話
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ベンチに座って、正義と制覇は色々なことを話した。まず気になっていたことを正義が制覇に質問した。
「いつからオレの尾行に気づいてたんだ?」
「質問で返すようだけど、日向君は人を尾行した経験があった?」
「これが初めて!」
「すごいね!僕は何度か尾行されたことがあるから経験の差が出たのかもね。公園に入るまでは半信半疑だったんだ。入ったところで確認の為に一度ブラフを掛けてみたんだ!そしたら、君がつけていたって感じかな!そっか、あれで初めてだったんだ。へぇ~~すごいね」
何度か尾行されたことがあるってどういうことだよ。ただの小学生がそう何度も尾行されるもんか?どうなってるんだコイツ(笑)!後、オレの尾行には気づいてなかったんだな。初めてだけどうまく出来てたんだな。さすがオレ!国本に褒められると悪い気がしないなw!
「そっか、尾行はうまくいってたんだな。ただ、罠にはかかったってことだ!」
「そうだね!」
「結局、国本に一杯喰わされたってことだな!」
「そうだねw‼」
くそ!悔しい‼
「ま、日向君が今日一日中学校で僕のことを観察してたことには気が付いてたからね。もしかしてって考えたんだよ!」
「そっちは気づかれてたんだ!」
「あれはあからさま過ぎたねw!」
マジか!本当に面白い奴だなコイツ(笑)‼
尾行までの経緯を話終わると話の内容は制覇の自己紹介。そう、「将来の夢は世界征服」についての話になった。
「世界征服って本気で言ってるのか?」
「本気だよ!僕は嘘はつかないんだ‼」
嘘つき!さっきだまし打ちしてオレの尾行をあばいたくせに。どの口で言ってるんだ!
「必要な嘘以外はね」
「……はは」
心読まれてんのか?乾いた笑い声を出してしまう正義。
「具体的にはどうしてくんだ?」
「取り敢えず、自分のできる範囲でコツコツとやっていくしかないかなって考えてる」
「地味だな!」
「現実ってそんなもんだよ!けど、ぼくはやると言ったらやるよ‼」
その言葉を聞いて正義の手が自然とさっきまでカッターが突きつけられていた首に伸びていた。瘡蓋に手が触れた。その感触が今の制覇の発言の確かな証明になっていた。コイツはやると言ったらやる。そういう人間だと……。
「目標とかあるのか?」
「ヒトラーだね‼」
また、ベターな所をついてきたな。そう考えていると……。
「ベターでも何でもいいんだよ!目標はデカくないとね!」
「考えを読むなよ!」
「得意技なんだ。人が何を考えてるのか読み取るのが。」
的確過ぎて怖いわ!やめろ!
「ごめんねw。」
完璧に考えを読まれていた。
「ヒトラーのどこに憧れてるんだ?」
「あそこまで人の支配に秀でた人間は他にいないと思うんだよ!」
制覇の声のトーンが上がった。
「まずは、舞台を整えるんだ。そうだね簡単なところから説明すると。今こコンサートなんかで使われてる音響の機械の基なんかを作ったのも彼なんだ!より多くの人間い自分の声を届けるためにね。」
「へ~~知らなかったな」
「それだけじゃない。アウトバーン(高速道路)を作ることで国民たちが抱える問題、失業対策を行ったりね。国民たちからの支持は熱かったんだ。身内には甘い蜜を吸わせ続けたってことだね。あと、イベントごともしっかりこなした。オリンピックが開催された時、今は馴染みになってる聖火リレーを始めてやったのは彼だ。それによって国民たちのオリンピックに対する関心を高めてコントロールしてたんだ。とにかく場所や状況を自分の声、支配が届きやすいようにコントロールしてたんだ。場所や環境を整えて100%の状態で人を支配したんだよ」
そう語る制覇の声はどこか不思議ですんなりと耳に内容が入ってきた。今の説明にもあった場所の支配。その能力がコイツ。国本制覇にもあるのだなと正義は感じた。
学校では絶対に教わることのない制覇の話はどれも新鮮で正義の心を驚かせた。話はつきることなく続いていたがふと公園の真ん中に立つ時計に目を向けた正義が声を上げた。
「うわ!もうこんな時間か‼」
時計はいつの間にか午後6時を指していた。
「ヤバい!帰らないと!わるい!」
「いや、いいんだ!僕も柄にもなく話し過ぎた。またね、日向君!」
「正義‼」
「?」
頭をかしげる制覇。
「友達になったんだから名前で呼んでくれ!正義って‼」
「…………名前で呼び合うなんて初めてだよ。わかった。改めてよろしくね。正義‼」
「こっちこそよろしく!制覇‼」
こうして僕は国本制覇と友達になった。
そう、小さな独裁者と……。
読んでいただいてありがとうございます。面白い作品を作ってお返ししていきたいと考えています。それまで応援していただけると嬉しいです。