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独裁者 小学校編 1話


「黒い太陽が日本を照らす」

「退屈だ……」

「は~い!今からこの前のテストを返却するから名前を呼ばれたら取りに来てくださ~い!」

「何か面白いことないのかな?」

「次~!日向正義く~ん!」

「…………」

「日向く~ん!」

「何か……」

「日向君!日向正義くん‼」

「あ!はい‼」

慌ててテストを取りに行く正義。

「も~またぼ~としてたな?」

「ごめん、京子ちゃん!」

「コラ!先生をちゃん付けで呼ぶなって言ってるでしょ!」

「はいはい!」

「は~先生のいうこと何も聞かないのに何でなの?今回も満点よ‼」

その瞬間教室がどよめく。

「すげ~~~~‼」

「またかよ~~~~!」

「カッコイイ~!正義くん♥♥♥」

「京子ちゃんの授業のおかげだよ!」とまた担任教師の内田京子をからかいながテストを受け取る正義。

「は~もういいは次も頑張って!」

「は~い!」

テストを受け取って自分の席へと帰る。

すると前の席で一番仲のいい、元木栄太がさっそく食いついてきた。

「また満点てどうなってるんだよ正義~~!頭良すぎて頭の中ヤバいことになってるんじゃないか(笑)?」

「何だよヤバいことって(笑)!」

「オレも頭が良く生まれたかったな」

「勉強すればいい点取れるって!」

「正義はそんなに勉強してないじゃんか‼」

「ま・あ・ね‼」

「こっのムカつくな~~!」

元木が正義の頭をつかんで髪をくしゃくしゃにする!

「こうしてやる~!おりゃ~~~‼」

「やめろって(笑)!」

「コラ~!何騒いでるの~~!次、元木君だよ~~‼」

「ヤバ!今行きます!待って待って‼」

髪の毛を元に戻して窓の外を見る正義。

「は~最強に災厄で!最高に退屈だ!」

「クソ‼」

心の中で呟く。

正義は子供のころからなんでも出来た。むしろ出来ないことを探す方が難しいぐらいだった。頭も良くて、運動神経もいい、そして見た目、顔も良かった。

まさに完璧。

しかし、それが問題だったのだ。

つまり、完璧すぎることが欠陥だった。

小学校3年生まではまだそれなりに面白おかしくやっていたと思う。

友達とも心の底から楽しいと思って笑っていた。

けど、いつからかどこか物足りなさを感じだした。

次第にその気持ちが大きくなり今では友達と遊んでいても本気で笑えなくなっていた。

京子ちゃんもそうだ!

前までは、教師という大きなくくりで見ていたから偉く思っていた。

けど、6年生になった今では教師も1人の人間なんだなって考える様になって、どうしても軽く見えてしまう。

大人である教師ですらつまらなく思えてしまう。

「中学に行けば何か変わるのかな?」

日向正義は完璧過ぎるが故に、誰よりも大きな欠陥を抱えていた。

「みんなテスト受け取ったよね?じゃあ、今から間違えてる場所の復習をしましょう!」

「え~~~~!」

「え~~~~!じゃありません!しっかり復習します‼」

コン!コン!誰かが教室の扉をノックした。

「はい!」

「京子先生!ちょっとよろしいですか?」

「はい!皆ちょっと先生離れるけどしっかり復習するように!友達に聞いてもいいからね!」

ガラガラ!トン‼

「…………」

1分と持たずに崩壊。

「あ~~この点数は不味い!間違いなく親におこられるよ~~!」

「昼休み!ドッチボールしようぜ!」

「おっけ~~‼」

「咲ちゃん、髪の毛切った?」

「分かる?昨日毛先だけなんだけどちょっとだけね」

クラス中でみんな好き勝手に話し出した。机から離れないだけまだましか。

「京子ちゃんどうしたんだろ?何かあったのかな?ま、そんなに慌ててる様子じゃなかったし大したことじゃないか。それにしてもうるさいな!」

クラスの様子を確認してからまた窓の外に目線をやる。

すると校庭を1人で歩いている生徒がいた。カバンを背負っているのところからして今登校してきんだろう。

「何だ?遅刻かな?見た事ないヤツだったな?下の学年か?」と少し考えを巡らせたが考えるのをやめる。

机に突っ伏して寝始めた。

15~20分ぐらい寝てたのかな。教室が静かになったのを感じとって顔を上げる。

ガラ!ガラ!トン‼

「みんなちゃんと復讐してた~?廊下の方まで声聞こえてたけど?」

「ま、今回は見逃してあげる!クラスのみんなに報告がありま~~す!」

「京子先生ついに結婚するの‼」

「はい!元木君!今日の宿題2倍にしま~~す!」

「え~~~~!」

笑いが起きた。

「ハハハハハ!」

「静かにして~~!大事な話だから!今から転校生を紹介します!」

一気に騒ぎ出すクラスの面々!

「え~~~~~~!」「マジか!」「男子?女子?」「こんな時期に?」

「はいは~~い!騒がないで!本当は今日の朝、紹介する予定だったんだけど少し遅刻するということでこの時間になっちゃいました。今から自己紹介してもらうからみんな静かに聞いてあげて下さい!」

「じゃ、入ってきて国本君!」

ガラ!ガラ!トン!

身長は低くはないが体が細い。髪はボサボサ。どこか冴えない感じのヤツが入ってきた。

「男子だ!」「ひょろひょろしたヤツだな!」「体ほっそ~~!」

皆の声が漏れる。

「さっきのヤツだ!」

校庭を1人で歩いてたヤツだった。

「国本君、黒板に名前書いてくれるかな?」

返事はしなかった。頷いてチョークを持ち黒板に向かう。

「何か変な奴だな!」「変人か?」「もしかしたら日本人じゃないのかも(笑)」

皆の声が少し強まった。

その時‼

ギーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼‼‼‼

黒板から放たれるノイズが教室中を切り裂いた!

「いや~~!」「何だ~~~!」「ん~~~!」

悶絶する生徒たち。

音が止み、静まり返る教室でチョークを戻す音だけが聞こえた。

コトン。

振り返る転校生。

「国本制覇」

「将来の夢は世界征服」

「よろしく」

不思議な声だった。見た目からは想像もできないような大きな声でそれでいてとてもクリアな声!耳元で話しかけられているかの様に耳に直接入ってきた。

より静けさを増す教室………………。

一人を除いて。

「何だコイツ!何なんだコイツ‼」

正義だけは笑いをこらえるのに必死だった。


読んでいただいてありがとうございます。面白い作品を作ってお返ししていきたいと考えています。それまで応援していただけると嬉しいです。