限りなく「死にたい」に近い「生きたい」を抱えるあなたへ

防波堤に腰かけて、目を閉じて、波と風の音に耳をかたむけながら静かに泣いた。

なにもかもを落としてしまいそうになったので、荷物をできるだけ遠くによけたのだ。どうせあの世に持っていくなら、この身ひとつあればいい。
今ここに落ちてみたらどうなるかなと考えたところで、冷たい水の中でもがいて結局通りがかったおじいちゃんに救出される無様な自分の姿がすぐに思い浮かんだので、わたしは今日も自殺をやめた。

ここ一か月、考えていることといったらそれくらいだった。手首を思いきり切ってみたらどうだろう、首を吊ってみたらどうだろう、走るあのトラックに飛び込んでみたらどうだろう。そうやって、手足が凍ってしまいそうになるまで道端で何時間も道路を眺め続けたこともあった。

いつもそれをやめる理由は、死ぬのがこわいからでは決してない。失敗するのがこわいからだ。

26年も生きていれば、自分の器量くらいもうわかる。生き続ける限り、わたしのこの頭で考えて動いたことは、失敗しかしない。してこなかった。
死ぬ時の痛みや苦しさはもちろんこわい。けれど、それよりも、1秒先も生きているという事実の方がこわい。人に迷惑をかけ続けながら生きるのがこわい。でも死に損なってなんらかの形でまた誰かに迷惑をかけるのもこわい。此の後に及んで、それが失敗に終わって、生き残ってしまうのがこわいのだ。

生きてはいても半分死んでいるような状態を随分続けた結果、5月に一か月間暮らしていた石垣島に、再び戻ってくることにした。長距離バスでまず大阪へ。大の苦手な飛行機に乗り継いで、いざ。

離陸時の感覚にどうにも慣れず冷や汗がとまらなくなるので、今回はアイマスクをしてぎゅっと目を閉じて我慢する作戦に出た。
しばらくして目を開けて見ると、そこにはまるで氷の浮かんだ海のような空が広がっていた。

しまった、見ておけばよかった と思い直す。

苦手なことほど、見つめたほうがいい。苦しいことほど、味わったほうがきっといい。乗り越える過程を、覚えといたほうがいい。

ちゃんと雲を突き抜けてここに上がってこられたのに。その過程をわたしは見逃してしまった。

どんなにいろんな土地を転々としてまわっても、どんなにいろんな人と共に過ごしていても、自分が自分である限り息苦しさは拭えない。

わたしがいちばん、わたしと一緒にいるのがしんどいのだ。

誰の手も煩わせたくない。なのに、生きている限り、人は人と関わる。今のわたしは特に、誰かの手を借りなければ1秒先さえも未来が望めない。もうこれ以上、わたしはわたしと居たくないのに。

石垣島に着いて町を歩いていると、地元の人に声をかけられた。名前まで覚えていてくれた。
住み込みで働く店の、以前の顔なじみの人たちと、明け方までおしゃべりをした。

大正解だったな、と思った。

ただし、一人で眠れずに対峙する夜の孤独は、変わらない。だけど、襲ってくる「死にたい」から耐えて、耐えて、そうして迎えた朝に、歩いて海を見に行けるなら、やっぱり正解だな、と思った。

人生で唯一、未来に希望を感じられたあの瞬間目にした景色がもう一度見たかった。ただ、それだけの理由だった。

限りなく「死にたい」に近い「生きたい」を抱えるあなたへ

「生きててほしい」というのは、周りの人間のエゴでしかない。

誰にでも自身の人生があり、そうして経てきた各々の事情があり、その結果”死”を選ばざるを得なくなるのは、誰かにとっては自然な結末であることも、ある。

わたしはこれまでに、何度も死のうとしてきた。今これを書いている、この瞬間だって死にたい。死んでしまいたい。
ただの一度も、それについて後悔したことがない。

生きてきたからだ。

どんな瞬間も生きた。対峙した。だけど、ダメだった。
だからこれ以上、希望を持つことがこわい。どうせ失うのに。どうせ叶わないのに。

なのに、人間の身体は生きるよりも突如死んでしまうほうが難しいようにできてしまっている。死に至る行為をして、失敗するのがなによりもこわい。無様に生き残ってしまうのがこわい。なのに今も滑稽に生きてしまっているわたしの状態は、結局同じことだった。

だけど、だからこそ。人が笑っているほうがいいし、空気は穏やかなほうが安らぐし、陽射しはあたたかいほうがうれしい。そんな場所を、選んだっていい。

今できる唯一のことは、この毎秒に小さなマルをあげること。ちゃんと死ぬために、生は限りなく続くのだ。


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