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喫茶店に目覚める20代前半

今、当たり前のように、職場として、そして生活の場として
身を浸している「喫茶店」という場所。

だけど、
子供のころから慣れ親しんでいたわけではない。

記憶の中の喫茶店

幼いころ、
記憶に残る喫茶店は、二つだけ。

父がよく行っていたタイヨーとかいうパチンコ屋さんの
横にあった喫茶店。
そこで食べるピザトーストが美味くて大好きだったけど、
おばちゃんやおじちゃんだらけで居心地が悪かったこと。
(父が連れて行ってくれる店は、大抵、味はなかなかに美味しくて
雰囲気は子供にとって最悪、、、だった)


親戚のパン屋のおばちゃんに連れて行ってもらった
あんバタートーストがウリのトムという喫茶店。
分厚いトーストがさいの目に切られていて
あふれんばかりのバターとあんこがキラキラ輝いていて、
どっから食べようか迷った。
この素晴らしい食べ物をだれかに伝えたくてしょうがなかった。
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余談
(大人になって割と最近、この喫茶店に再訪した。
 正式な店名は、「珈琲舎とむ」だった。
 店は移転していたけれど、
 相変わらずあんバタートーストが名物で、
 兵庫から福井に、これを食べたくて来たといったら
 わざわざ作り方を教えてくれた。)

後日書きました。
「伝説のあんバタートースト」

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当時福井には、コメダ珈琲やら星野珈琲やら
ドトールコーヒーやらが一切なかった。
朝、外でご飯を食べるなんて、贅沢やな、家で食べないの?!と
いう県民性で育った。
(今はみんな利用している、時代も変わったな)

喫茶店といえば、
あくまで、大人が入る、煙草モクモク系喫茶。
新聞と珈琲とたばこの香り。
(たばこは嫌いだが、この3つが混じり合った匂いは大好き)
テレビで野球中継が流れているような、私からいえば、純喫茶。

22歳過ぎて、喫茶店にはまる

21歳で福井から大阪にでてきて、一人暮らしを始めた。

テレビで活躍するタレントさんになりたくて事務所に所属した。

細々と、コミュニティーエフエムや地域のケーブルテレビで
お仕事をしていたころのこと。

本業の収入は雀の涙、いや、雀の糞、くらい。

常にバイトを二つ掛け持ち、本業があればそちらにいき、
なければバイトに行く、という日々。

居酒屋、コンビニ、定食屋さん、ビストロ、日雇いの試食バイト、
ウェディングのサービススタッフ、友達の結婚式の司会・・・

決まった休みも先の保証もなく、
ただ漠然とテレビに出たいという想いで毎日を過ごしていた。

四畳半のアパート、福井から出てきたばかりのなんにも知らない田舎娘が

時間は少しある、お金はない、友達はいない、寂しい、

今思えば、
がんばっていた。

たまに入る、仕事の高揚感だけで、乗り切っていた。

生活リズムはぐちゃぐちゃだった。


一人暮らしで、自炊するわけもなく、

でも、コンビニで何か買ってぱくつくのはわびしい、
スーパーのお弁当を一人で食べるのは寂しい。

朝からカフェで優雅にブランチ出来るほどの身分でもない。


手軽に、安価で食べられるところないかなぁ。

そこで〇の屋の牛丼!となるのが普通だが、


その時の私は、
お腹が満たされること、癒されること、
自分の部屋以外のどこかで時間を過ごしたい!

そう欲していた。

その切なる思いが行動に。


喫茶店の扉を開ける

今まで、
大人のおじさんやサラリーマンの行く場所、

と勝手に決めていた「喫茶店」。

当時は喫煙がほぼどの店でも当たり前、
薄い紫がかった重そうな扉の向こうはどうなっているんだろう。

ある朝、勇気をだして、

カランコロ~ン。

「喫茶店」というオアシスと
朝からパンと珈琲で満たされ、
優雅に流れる時間との初めての出会いだった。

思った通り、座り心地の良いソファー、
重厚な木目調のテーブル、
レースのカーテン模様がテーブルに映し出され
朝日が優しく肩にあたる。

焼き立てのトーストと淹れたての珈琲。

おじさんやおばさんの会話。

全てが、落ち着いた。

子供のころ居心地が悪いと感じていた印象がガラッと変わった。

若いお客さんも珍しかったのか、
2、3回で顔を覚えてもらい、

「いつものでよろしいですか?」

なんて聞いてもらえたのもうれしかった。
ここに、来てもいいんだ、って居場所をもらった気がした。


ママ(らしき人)と少し会話して、
クロワッサンやトーストのセット頼んで、
ゆっくり本を読んで、
心もお腹も満たされて、30分過ごす。

これで350円?!
(当時のトースト、卵、珈琲モーニングの平均価格、今と違うよね。)


それからは、

朝、喫茶店でモーニングをする、というのが
モチベーションになった。

仕事の原稿もナレーション読みも小さな声で、店で練習した。
ここなら少しはかどる気がしたし、疲れたら珈琲のお替わりをたのむ
自分に少し酔っていた。

ちなみに休日も、モーニングに間に合わせたいから

11時に間に合うよう、10時半には起きるようになった。
(二十代はどんなに寝ても眠かった)

そして11時の喫茶店に滑り込みモーニングを堪能し
そのまま15時ころまで入り浸る。

その後家に帰ってまた寝る。
バイトがあればでかける。

そんな日々だった。


だが、
そんな日々が2年ほど、

いつごろからか、問題が起きてきた。

平日、バイトや仕事に向かおうと、まずは喫茶店に行っていたはずが、

次第に喫茶店から出たくなくなってきたのだ。

よし!と活を入れるはずが、もう一杯ねばろう、
と深紅の天鵞絨のソファに体をうずめる。

だって心地よすぎる~。

そして、気付く。喫茶店で過ごしたい!

今の仕事が本当にやりたいことか、刺激のためだけなんじゃないか、
本当の夢はまだわからないけれど、少なくとも、
喫茶店にいることのほうが、私は幸せでいられる。

喫茶店を経営する、というところに行きつくには
まだだいぶんあるが、

今の私を作っている、理念を作った大元は

このころの影響だろうなぁ。


喫茶店の本質的な良さを、
22歳で感じた時のまま、今も、同じように感じている。


寂しくないように、心もお腹も満たされ、
平和な時間が流れますように。


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