あの頃の、カリスマ美容師

B'zの「今夜月の見える丘に」が頭から離れない日がある。
かつて社会現象になった、キムタクのドラマ主題歌だ。

あのドラマをきっかけに、「カリスマ美容師」の時代がやってきた。
美容師はかっこいい、おしゃれ、モテる。
それは私の世代にも波及して、美容師をめざす人たちがたくさんいた。

みんな、表参道や代官山のおしゃれな店で働き、おしゃれな部屋で暮らすことを夢みていた。
(当時のドラマに出てくる部屋って、リアルでは住めないであろう立地と間取りばかりで、私たち若者はすっかり騙されていた)

私はドラマにハマっていたわりに現実的なタイプだったので、美容師は給料が安いらしい、と分かると憧れることはなかった。

実際に、美容院で働いていた友人はかなり苦労していた。
人気商売であるのをいいことに、カリスマ美容師とよばれていた世代の経営者たちは、若者を使い捨てにしている感じに見えた。

残業代が出ないのは当たり前。
それでも閉店後から終電がなくなる時間までは練習があるため、職場のちかくに住まなければならない。
おしゃれな場所で働くと、もちろん家賃が高くなる。
アシスタントの手取りは8万~10万ほど(保険には加入してない)で、家賃と携帯代を払えば残りはわずかだった。

それを気の毒に思ったのか、友人の職場ではいつも炊飯器でご飯が炊かれていて、休憩時間に自由に食べることができたらしい。
白飯だけ食べさせるのが善意なのか、疑問ではある。
そんな時代だったから、同世代で美容師を続けているひとは少ない。

最近の美容師について調べると、労働環境が改善されたとはいっても、ほかの職業と比べるとまだまだ給料が低いらしい。
せめて、あの頃のカリスマ美容師たちのようなやり方が無くなっているといい。

どんな職業であっても、憧れをもって仕事に就いた若者たちが報われる世の中になってほしいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?