【絵本原作】ねこたつしー


1
まよなかのまちで ひとりのじょせいが ねこのうんてんしゅに こえをかけました
「あのーいまからでも だいじょうぶでしょうか?」
「もちろん、どちらまで」
「ホコラのえきまで いってもらえれば」
「かしこまりました。ししゃも5ほんと かつおぶしをもらうよ」りっぱな せびろをきた 
ねこのうんてんしゅは ひくいこえでこたえます
「それでは、よういしますので、くつをぬいでおまちください」
 そういうと、ねこのうんてんしゅは ふかみどりのぬののこたつのなかに もぐりこみました。

2
すると、こたつからブオンとくるまのえんじんのようなおとがなりひびき、じょせいのほうにむかってきました。
「どうぞ」
こたつのふとんがめくれました。
「ありがとうございます」
 じょせいはこたつのなかにあしをいれます
「あったかーい、じっかをおもいだします」
「どうも。それではしゅっぱつします」
 よにもめずらしい、こたつのタクシー、こたつしーがみちをはしりだしました。

3
「かおはつめたいけど、あしはポカポカだわ」
「よかったら、おたべください」
 うんてんしゅは ちいさなみかんをじょせいにわたしました。
「まあありがとうございます」
 うけとり、じょうきげんに たべはじめました。
「つくえのうえのおおきな、みかんはぜったいにたべないでくださいね」
 うんてんしゅが、いつもよりひくいこえでちゅうこくしましたが、じょせいは
「だいじょうぶです、そんなにくいしんぼうじゃないですから」とのんきにいいました。

4
こたつしーは ほかのくるまとどうろをはしったり、じゅうたいがひどいときは、くるまがとおれない、
うすぐらい ほそみちをはしりました。
「つきましたよ」
「もうついたんですか。くるまよりもずいぶんとはやいんですね」
 
みかんをたべながら、じょせいはいいました。
じょせいはそとのさむさで、
こたつからでることをちゅうちょしましたが、
このままだと 
かえるのおそくなるのもめんどうなので
しはらいをすまして わかれをつげました。
「うんてんしゅさん、またおねがいします」
 ねこのうんてんしゅは、かるくおじぎをして、ねこたつしーをはしらせました。

5
 このひは、クリスマス。
まちにひとが いるときこそ、
ねこたつしーの かせぎどきです
こたつのつくえを ていねいにみがきながら、
おきゃくさんを まっていました。

「あ、あの・・・」
 こえをかけたのは せいねん。
まふゆなのに あせをかいていました。
「つれていってほしいところがありまして」
「どちらへ?」
「はばたきくうこう までおねがいできますか」
いまいるばしょから くるまでも2じかんはかかります。
「なにかわけがありそうですね」 

6
「かのじょがいて、プロポーズをかんがえていました。でも、かのじょは えのべんきょうがしたくてかいがいりゅうがくするっていいだしたから けんかしちゃったんです」

 ねこはだまって はなしをきいています
「あやまりたいんです そしてかのじょをおうえんしきこくした けっこんしたいといいたいんです」
 せいねんは めになみだをうかべています。
 ねこはだまったまま、こたつのなかにもぐりこみ
ガチャガチャとなにかを つくりはじめました。
 まもなく、ねこがこたつからでてきて、
「どうぞ」といいながら
「くうこうまではちょいととばさないといけないですからね」と、なにくわぬ かおでいいました。

「まにあうんですか」
「きょうはこんでますから くるまとして はしれば3じかんはかかりますね。しかし、これはくるまじゃない」
 ふたたび こたつのなかにもぐりこみました。
せいねんは ふしぎそうなかおをしていましたが、
ねこにつられて こたつにはいりました。
「あったかい」とつぶやきます。

7
「そらをとんでいきましょう。20ぷんでつきますよ」
「そら?このこたつはひこうきにもなるってこと」
「おしいです、これからジェットきになります」
 ねこがこたつのなかからそういうと、
こたつから ブォーンとつよいかぜが ふきはじめました。

「しゅっぱつします」
 こたつしーは ゆっくりとちゅう にうきはじめました。
「すすみます」
 ねこのことばとともに、こたつ もうスピードで
とんでいきます。
 
8
しばらく、はしっていると、くうこうがみえてきました。
どうじに こたつが すこしずつゆっくりになります。
「ちゃくりくします」とねこはいいました。
ちゃくりくすると せいねんはガサッととびでました。そのあと ねこがでてくると、
あたまをさげました
「ありがとうございました。おだいは げんきんでしはらいます」
「いえ、おだいはけっこうです きこえますか?
このおと」
 そういった、ねこののどは ごろごろとなりひびいています。
「わたしのきげんをよくしていただいたので、おだいはけっこうです。」
「いや、しかし」
「いま あなたがすべきなのは、かのじょにきもちをつたえることでしょう。はやくいきなさい」
 せいねんは はしっていきました

9
ねこは あいかわらずゴロゴロと のどをならしました。
ふと ねこのはながひやりとしました。
そらをみると ゆきがふりはじめていたのです
 ねこは、せいねんのことを かんがえながら
こたつによやく。とプレートをつけて、
こたつのなかに もぐりこみました。

10
 このひはおおみそか。
しんねんように こたつにあたらしいみかんを
つけようかなと おもっているところに、
あたまにネクタイをつけたおじさんが
ちかづいてきました。
「こ、こたつだ・・・おじゃましまーす。ひぇひぇ」ほほをあからめて、ろれつがまわらないしゃべりをします。

「おきゃくさん、こたつにはいるなら、もくてきちをいってくださいよ。どちらにいきますか?」
「はーい、」
 おじさんと かいわにならずに 
ねこはこまりましたが、なんどがきいてるうちに
おじさんの すんでいるまちがわかったので、
ちかくまで のせていくことにしました。

11
すぐに おじさんはグーといびきを 
かきはじめました ねこはまちにはいったら
すぐにおろしてやろうとおもいながら
はしりつづけました。
 
それから10ぷんごに まちにつきました。
おじさんはまだ いびきをかけてねています。
「おきゃくさん、つきましたよ」
ねこがかたをたたいても おじさんはまったくおきません

12
「おきゃくさん、おきてください」
と、おこったこえでいいました。
なんどか、こえをかけたあとにやっとおじさんは
めをさました。
「んー、ここどこ?」
「おきゃくさんのいえのちかくですよ。はやくおかえりになってくださいよ」
「うーん。こたつあったかい。ここでねる!」
「おきゃくさん、こまりますよ」
 ねこはあきれながら、おじさんのかたをさわります。
「なんだよ、ちょっとくらいいいだろう お!
うまそうなみかんあるじゃん。ちょうど こばらがすいてきた。」
「そのみかんはたべないでください」
 ねこはさけぶようにいいましたが、おじさんは
ばぐりと みかんをほおばりました。
「あ!たべたなぁぁぁぁ」
 ねこはめずらしくおおきなこえをだして、ぶるぶるとふるえだしました。からだからゆげがでています。

13
つぎのしゅんかん ねこのからだが やまのように
おおきくなり、
おじさんのくびねっこをつかみました。
「せきにんとってもらうよ」
いかりに みちたねこは
おじさんをこたつのなかに ひきずりこみました

14
ねこと おじさんが はいったこたつは
ボコボコとおとをだして、おおきくゆれました。

やがて ゆれがおさまると 
ねこがいつものおおきさになってでてきました。
 みぎてには、みかんをもっています。
15
「ちょうど、あたらしいみかんがほしかったし.
まぁよしとしましょう」
そうつぶやいて みかんをつくえにおき
そのままこたつにもぐり まちからはなれました。
あたらしいみかんにはなぜか ネクタイがまいてありました。




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