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神経症パンケーキ

娘の朝ごはんに、毎日同じパンケーキを焼く。
小さな小さなパンケーキ。名付けて神経症パンケーキ。

目がある。スイミーのイメージ
面倒くさくなって大きめ
神経症の平常心
過去最高の小ささ。1円玉サイズ
いちごは頭にこない方がいい

時々写真に撮って並べるのも面白い。

パンケーキはお玉を使うと小さく焼けないので、ボウルからフライパンへ直接垂らしている。パンケーキ特有の喉につまる感じが苦手なので、色々試した結果、水分を多めにして、レモン汁を絞って加えるレシピに行き着いた。忙しい朝はホットケーキミックスを使うことが多い。余計な物が入っていない理研の粉が美味しい。塩味が足りないので、良い塩をパラパラっと加えるといい。

小さなパンケーキをフツフツ焼く私はピリピリしているし、これをチマチマ食べる娘も、やはり神経症的だなあと思う。神経症の症状は嗅覚とかたく結びついている。ある特定のにおいを嗅ぐと、記憶が呼び覚まされて、胸が苦しくなったり、悲しくなったり、頭が熱くなったりする。パンケーキのにおいは、娘との楽しい朝の始まりのにおい、と言いたいところだが、「遅刻しないかな」の焦りとしてのにおいが勝る。神経症の私の心には、良い思い出よりも不安が大半を占めている。「人生損している」と思われてしまうだろうか。

秋の終わり頃になると、10代のことを思い出す。何かが燃えているようなにおい、冬の訪れを肌で感じるひんやりとした空気、早まった夕暮れ時、すごく嫌な記憶を振り払おうと、私は頭をぶんぶん振る。毎年の儀式。でも、においとともに、若い身体を一瞬取り戻せたような気がして、嬉しくもあり懐かしくもあり、それほど翻弄されなくなった。

寝ぼけざまに天井のシミを数えるような気持ちで、小さな小さなパンケーキを焼く。

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